![]()
4
まばたく一瞬が、永遠に思える経験。
己の肉体を遥かに凌駕する巨大な拳が迫るのを、久慈仁紀はどこか遠い国の映像を、ブラ
ウン管で覗くような意識で捉えていた。
岩のような拳が、人間のものだったと悟ったのは、我が身の中央に突き刺さった瞬間。
粉砕される胸の骨。研ぎ澄まされた筋肉の鎧が、無力を示してひしゃげる音。詰まった内臓
が、貫かれる衝撃に潰れる感覚。
幼少より洗練された機能的な肉体があげる悲鳴を、久慈は確かに胸の内で聞いた。
18年間、積み上げてきた過信と自尊心の崩壊。
金も女も、地位も名誉も名声も、羨望も嫉妬も服従も、あらゆるものを掻き集めてきた、完全
なる勝者の人生。その全てを無に帰す一撃は、人類の支配者たることを夢見る少年を根底か ら覆した。
左上腕骨、肋骨8本、胸骨・・・計12箇所の骨折から生還した野望の暗黒主を待っていたの
は、初めて知る、敗北の味。
「ウオオオオッッッ?!!」
「どうしました、久慈くん?」
前触れもなくあげた絶叫に、作業に没頭していたハゲ頭の中年男が、飛びあがって振り返
る。
えびす顔とも取れる男の視界に飛び込んできたのは、汗でびっしょりと整った顔立ちを濡らし
た、野犬のごとき瞳をぎらつかせた少年だった。
「・・・なんでもない」
「まだ、あの男のことが忘れられないのですか?」
脂ぎった中年男・田所は、同じ学校であるだけに“あの男”のことを知っていた。コレクション
の対象になる美少女にしか興味のない変態教師にしても、高校生、いや人間離れした戦闘体 型と、伝説じみた逸話を多く持つ”あの男”のことは、いやでも目と耳につく。
「なにがあったか知りませんが、たとえ君をそこまで傷つけたのが彼だとしても・・・」
「黙れ」
抑揚のない低い声は、年齢も社会的立場もずっと上のはずの中年教師を瞬時に青くさせ
た。開いた口をそっと閉じた田所は、咽喉の奥でゴクリと唾を飲む。
「おのれ・・・工藤・・・吼介め・・・・・・」
牙のような、歯だった。
甘いマスクを台無しにして、剥き出した歯をギシギシと噛み鳴らす。
だが、田所はその音を聞き分けてしまっていた。
ガチガチ・・・ガチガチガチ・・・・・・・
震える歯が、奏でるその音を。
恐怖。
久慈仁紀が感じているのは、恐らく生涯初めて味わっているであろう感情。
野犬のような視線は、憤怒からくる獰猛さとともに、底知れぬ畏怖からくる脅えが、させている
のだ。
敗北が久慈にもたらしたものは、壮大な復讐の炎と、深く刻まれた恐怖の爪跡。
そして久慈自身は、己が恐怖していることを自覚しないまま、受け入れられないまま、心の迷
宮の果てにこの場所に立っている。
「・・・久慈くん、いまはこの哀れな生贄を貪る悦びを、堪能しようじゃありませんか」
血走った眼で感情のラビリンスをさまよう同盟者を、強引に現実世界に引き連れ戻すべく、
俗欲の権化は吊るされた少女の乳房を、背後からムンズと鷲掴む。
「ひゃああアアッッ?!!!・・・くああ・アア・・・・」
糸を引く叫びを洩らしたのは、天井より鎖で吊るされた、水着姿のままの西条ユリであった。
「この惨めな玩具を再度地獄に送れば、いま君を襲っている不愉快な気分は霧散することで
しょう。魔人メフェレスの復活は、この愛らしきファントムガール・ユリアを悪魔に捧げてこそ成 るのです」
言いながら、田所の掌は、まだ膨らみかけのユリの丘陵をこね回す。
久慈家が管理運営する、伊豆のホテルの一角。
最上階である七階のフロア全てを経営者の権限で借り切った久慈ら3人が、双子の姉妹を
連れ込んだのは、いまから約30分ほど前のことであった。
VIPルームとして普段は使うその部屋は、洋間がふたつに和室がひとつ、さらに大人3人は
眠れそうな広いベッドが配置されたベッドルームまである豪華な一室だった。タイル張りのシャ ワールーム以外に海が見えるジャグジーまである。庶民が一泊するのに、料金の桁数をひと つ間違えそうな部屋であった。
高価そうな調度品が並ぶなかで、異様な輝きを放つ幾多の物質。
鎖、ロウソク、鞭、鋼鉄の玉・・・SMクラブを想起させる様々な道具がすでに準備されている
のを見た武道姉妹は、己に迫った残虐な牙に自然身震いした。
「フフフ・・・お互いの悲鳴がよく聞こえるよう、扉は開けておきましょう」
セミロングを乱暴に鷲掴まれ、復讐に燃える兵頭英悟に引き連れられる姉・エリの背中が隣
室の洋間に消える。姉の名を叫ぶユリの肢体を、脂ぎった中年は手際よく生贄に相応しい姿 にしていく。
キの字型の木製の板に、鉄製の枷で両手足首を固定された白い妖精は、大の字の格好で
拘束される。磔の少女はそのまま木板ごと、鎖で引き上げられ宙吊り状態にされた。
それからの30分、ファントムガール・ユリアの正体である少女は、変態教師により、地獄の
宴への準備を、着々とその身に施されてきたのであった。
首筋と乳房に打たれた注射が一本づつ。
足元の床に置かれた5つの香炉からは、妖しげな紫煙が常にスラリと伸びた肢体を包み、未
経験の匂いがすっと通った鼻腔をくすぐり続ける。
「見なさい、胸を揉まれるだけで、ここまで感じてしまってますよ。片倉先生が調合した媚薬は
大したものですね。このお香も、ひとつ二万円もするものを用意しましたからね。ウブなユリくん は、もうトロトロのようですよ」
言いながら、田所の指先は、揉み回す柔肉の先端に移動する。小さな膨らみ全体に張り巡ら
された、桃色の神経。その全てが集中した美肉の小豆は、白い水着を尖らせて屹立し、百戦 錬磨の色魔によってクリクリとこねられる。
「ふひゃあうぅぅッッ?!! ひゃばあッッ!!! ひゃあアアッッ・・・」
美少女のくるみの瞳がさらに大きく見開かれ、透明な涎が溢れる。
壮絶な苦痛に耐えるかのような歪んだ表情は、15の少女らしからぬ、淫乱な仕草にも映っ
た。
無言で痩身の悪鬼が、悶える磔少女にと歩み寄る。
手にしているのは、鞘に収まったままの愛刀。正義の聖少女たちを、幾度も血に染めてきた
魔剣が、闘えぬ幼き少女に突きつけられる。
「・・・西条ユリ・・・ファントムガール・・・ユリア、か・・・・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・メ、メフェレ・・・ス・・・・・・・」
青い炎をたたえた暗黒王の眼光が、しばし囚われの闘少女を射抜く。
身体の芯からの火照り。渦巻く官能が、ユリの視線を蕩けさせる。これまでにも、散々悪の陵
辱を受けた武道少女は、年齢から考えれば驚くほど開発されてしまっていた。欲情の波が少 女を飲み込んでいるのは確実だったが、正義の使者としてのプライドが、久慈への敵意を瞳に 乗せて睨ませる。
ドスウウウウッッッ!!!
鞘に収まったままの日本刀が、白いビキニに包まれた右胸を抉り突く。
刺し貫かれたかのような激痛に、一気に歪む愛らしい童顔。仰け反った頭が、白い咽喉元を
見せつける。
「生意気な・・・貴様のごときカスまでが、このオレにそんな眼を向けるか!」
ドスウウッッッ!!! ドスウウッッッ!!! ドスウウッッッ!!!
柳生新陰流の血を引く魔剣が、次々とスレンダーな美少女の肉体を突き貫く。
吐血の破片が宙を舞う。無茶苦茶に剣を振るっているようで、久慈の刺突は正確無比に急
所を抉った。執拗に狙われたのは、ふたつの胸の先端と、臍。成長途中のBカップが文字通り 破壊され、内臓を直接貫かれるような激痛に、魂が泣き叫ぶ。一撃で数時間は悶絶し続ける であろう惨戟を、10発以上華奢な体躯に注がれて、ユリのモデル並の肢体がいとも容易く破 壊されていく。
「このッ・・・カスがッ!! 死ねッ! 死ね、ユリアッ!! 貴様を再び切り刻んで、メフェレス
復活の添え花としてくれるわ!」
「ぐうううッッッ!! あぐううウウッッッ!! はあッックッッ!!・・・・・・うッ・・・ウウウ・・・・・・」
「そうです、そうこなくては、久慈くんらしくない! さあ、この弱いお嬢さんを、徹底的に嬲り殺
してやりましょう。闇の王・メフェレスの恐ろしさを、憎き銀色の女神たちに知らせるのです」
えびす顔をくしゃくしゃにして破顔したハゲ頭が、取り出した茶色の小瓶に入った液体を、柔
術少女の口元に押しつける。
「ごッ・・・ぶぶ・・・や、やめてッッ・・・・・」
「フフフ・・・飲むんです、ユリくん。さもないと、こうですよ」
磔少女の背後からなだらかな胸の左の丘を包んでいた丸い指が、コリコリに硬くなった頂点
の蕾を90度折り曲げる。触れられるだけでゾクゾクする敏感な小豆を、急激に刺激する仕打 ちにユリは呻いた。
「ぎいいィィッッ?!! いいッッッ・・・ギギ・ギ・・・」
歯を食い縛って、なんとか液体の侵入を阻止する少女の右胸の先端を、一寸の狂いなく水
着のうえから魔剣が貫く。
「ッッッ!!!!」
「ユリアァァァ・・・貴様はこのオレ復活の、生贄となるんだアアアッッッ!!!」
凄まじい勢いで、鞘に収まったままの日本刀が、ドリルと化して武道少女の右胸を抉る。ギュ
ルギュルと漆黒の鞘が回転する。
乳首が千切れそうな激痛。だがその合間をすり抜けるように、乳房に埋まった感度のいい箇
所が己の柔肉に摩擦され、かすかに生み出された快感が電撃のように走り抜ける。異なった 刺激を存分に叩きこまれ、フランス人形のマスクが絶叫する。
「いやああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
「苦しめッ! 苦しめ、ユリア! 貴様の苦悶が、オレ様の養分となるのだ!」
「ああああああああッッッ―――――ッッッ!!!! む、胸がああァァァッッ〜〜〜ッッ
ッ!!!! ごぶッ??! ごぼぼぼ・・・」
叫ぶ桃色の唇が大きく開くのを見計らって、小瓶に入った妖しげな液体が、遠慮なくユリの咽
喉元を滑り落ちていく。
「私もいろいろな媚薬を試しましたが、ほとんどのものは眉唾ものでした。だが、これは違う。
長年の経験と試行錯誤に基づいたうえで作った、最高のブレンド媚薬です。この幼い肉体、ボ ロボロにしてあげますよ」
コロン・・・空になった小瓶が、乾いた音色を立てる。
西条ユリを抹殺するために用意された数々の悪魔の品が、いよいよそのヴェールを脱ぎ捨
て、若い肉体に嗜虐の牙を突きたてようとしていた。
「片倉先生の媚薬は感度を高め、このお香は性欲自体を掻き立てる。そして私が作ったブレ
ンド媚薬は、麻薬のようなものでしてね。刺激を感知する脳自体をいじってしまうわけです。3 日徹夜したような夢遊状態が襲い、理性の鎧は剥がされ、やがて性感帯を剥き出しに浮びあ がらせたようになってしまう。欲情に囚われた、メスへと堕ちるのですよ、ユリくん。同じに見え る媚薬でも、それぞれ効果は違いますからね。一度に重ねて使われたら、君のような穢れを知 らぬ少女は発狂してしまうかもしれませんね?」
嬲るように薄笑いを浮かべた醜悪な中年が言葉を浴びせる。
嘲りはちゃんと届いているのかいないのか、雪のような肌を露出させた磔の美少女は、細か
く全身を震え始めている。下腹部から沸きあがってくる、悦楽の波動。それは湧水のごとくコン コンと奥底から溢れてくる。気を抜けば失禁しかねない巨大な津波に、恥じらいの乙女は懸命 に内で闘っているのだ。
「無駄ですよ、ユリくん。君なんかが耐えれるような快感ではありません。早く媚薬を全身に行
き届かせるがいい。ほぅら。ほぅーら」
ユリの襟足で束ねたおさげを乱暴に掴むや、拘束されていない頭をぐらぐらと回し始める変
態教師。
痛みと屈辱で、アニメに出そうな童顔が歪む。紅潮した頬の上で、怒りをこめた丸い瞳が、斜
め後ろに立つ小太りの中年を見据える。
認めたくはない・・・いや、認めてはならないが、媚薬の効果は確実に瑞々しい美少女を侵食
している。火照りという言葉では収まらぬ熱が全身から沸きあがり、思考は快楽への渇望で埋 められていく。素直に媚態をさらしちゃおう・・・本能が囁く甘い誘惑を必死で拒否し、15の少女 は抵抗の意志を示したのだ。
なぜなら敵は、人類の脅威となる侵略者だから。
なぜなら敵は、宿縁ともいうべき相手だから。
なぜなら敵は、完敗を喫した仇敵だから。
「おやおや、まだそんな眼ができますか。しかしいけませんね、教師に向ける眼ではありませ
んよ。生徒はもっと、従順でなければ」
空いた左手で、田所は小さいが形のよい乳房を握り潰す。
「んんんああアアアアアッッッ!!!!」
「ははは、いい悲鳴ですねえ。それ、脳にクスリは回りましたか? ほォーら。ほォぅ〜〜らぁ
〜」
ぐらん。ぐらん。ぐらん。
八頭身の小さな頭が、髪を掴まれて大きく回される。
オモチャのように扱われる美少女の瞳は、焦点がぶれはじめ、ほどなくしてトロンと蕩けだし
た。
“あ・・・あ・・・身体が・・・熱い・・・・・・溶けちゃい・・・そう・・・・・・私・・・・・・おかしく・・・なっちゃ
う・・・・・・・・”
「だいぶ壊れてきたようだな」
黙視していた痩身の悪鬼が、ピアニストのような長い指で、卵型の顎をすっと撫でる。
ビクビクビク!!
有り得ない過剰な反応が、若き天才柔術家が淫欲の波に飲まれ、暴発寸前の欲情を湛えた
雌獣へと変わり果てたことを教える。
ハゲ頭のたらこ唇が尖り、水着を通して浮きあがった若芽に、ふっと生臭い息を吹きかけ
る。
「んあうッッ!」
ガクンと仰け反る童顔。
ピンク色に顔全体を染め、潤んだ瞳で虚空をみつめるユリの脳裏には、もはや渦巻く官能
と、かろうじて抑制しようとするギリギリの戦士のプライドしかなかった。
「ユリくん、いや、ファントムガール・ユリア。君が瀕死の状態でも、不屈の闘志で立ち上がっ
てくる勇敢な戦士であることは知っています。前回の闘いでね」
「だが、貴様がまるで性を知らず、悦楽への耐性が備わっていないのも、またわかっている」
聖少女を地獄に落としたふたりの男。
その淫靡な両手が囚われの美少女の、白肌を這い回る。
長い指が小さな胸の膨らみを下から掬いあげる。周囲をじっくり撫でまわし、身体の中央線
に沿って下へ。縦長の臍をなぞり、ビキニに覆われた下腹部をゆっくり這う。
脂ぎった芋虫のような指は、脇の下から側面を下り、打撃で痛めたアバラを突く。白い臀部を
強く揉み、太股の内側を触れるか触れないかのバランスで羽毛のようになぞっていく。
西条ユリという、極上の瑞々しい若華。
その白く、細く、美しい少女の肉体を、横暴な獣欲を発散した2匹の悪魔が、雪肌の隅々まで
を撫で回していく。
「ふへぇッ・・・・・・んはアッ・・・・・・ぐぅぅッ・・・・・・」
“ダメ・・・声が・・・出ちゃう・・・・・・我慢・・・できない・・・・・・”
身体が燃えるように熱い。空気が動くだけで、舐められてるかのように肌がザワつく。下腹部
の秘芯がたぎり、熱い蜜壷が強引に広げられた股間の中央で蕩け出している。
媚薬の協奏曲が穢れを知らぬ少女を飲み込んでいた。柔肉に潜んでいた性感帯は、本人も
驚く場所と数で顕在化し、点火した性の炎は身を焦がす勢いで渦巻く。触れられただけでイッ てしまいそうな高揚。だが現実は聖少女の仄かな願いを聞き入れず、絶頂に達する寸前で、 少女の昂ぶりを留め続ける。すぐそこに迫った開放感を、与えられない永遠の悦楽。クスリ漬 けの瑞々しい果肉を、4本の女体を知り尽くした手が、じっくりゆっくり貪り味わう。
「ひぎゅううぅぅッ〜〜ッ!!・・・・んんぎぎィィ・・・・・・はあうッッ!・・・・・・う゛う゛ぇぇアアアッ
ッ・・・・・・」
撫で回す。白い素肌を撫で回す。
最も敏感な石のように固く尖った双つの肉丘の頂点と、ぐっしょりと濡れて変色した股間のク
レヴァスには触れず、その他のあらゆる部位を這い回る。臨界まで上昇したユリを、昇天間際 で押さえて焦らしに焦らす。
雌獣の喘ぎが発狂寸前の武道少女の、ピンクの唇を割って出る。
ガクガクと震える小動物のごとき愛らしいマスク。揺れるふたつのおさげ髪。
焦点の合わない潤んだ瞳から、ポロポロと涙がこぼれていく。
“熱い・・・狂う・・・・・・そこは・・・ダメ・・・・・・こんな・・・・・・負け・・・ダメ・・・・・・おかしく・・・・・・
気持ち・・・いい・・・・・・燃え・・・・・・”
「んふうッッ!! ああんッッ!! はあうッッ!! ふぇあッ・・・ああああああアアッッッ〜〜
〜〜ッッッ!!!」
「フハッ、フハハハハハハ!! 狂えッッ!! 発狂して絶えろッッユリアッッッ!!!」
「いい狂態です、ユリくん! 快楽の魔物に飲み込まれましたか!」
ピタリ
不意に、全身を這い回っていた、触姦が止む。
虚を突かれたユリの心に、ぽっかりと無防備の穴が開いた瞬間。
中年男の丸い指が、白い水着に浮んだ、ふたつの胸の突起を摘まむ。
「ッッひぎいイイィィッッッ?!!」
「イキなさい、西条ユリくん」
息をかけられただけで達したであろう、敏感な小豆が、ビキニが擦り切れそうな勢いで摘まみ
回される。
「んんんんああああああああアアアァァァァッッッ――――ッッッッ!!!!」
その瞬間、大の字に開いた股間から、透明な噴水が激しく噴き出された。
ブシュウウウウウウウウッッッ―――ッッッッ・・・・・・
官能的で、本能的で、凄惨ですらある音楽をBGMに、磔少女が絶頂のダンスを踊りまくる。
ブルブルと震える童顔。ビクビクと波打つ腰。パクパクと開閉する口。手足を拘束され、無駄
に暴れるしかない華奢な肢体が、殺虫剤をかけられた虫ケラのように撥ね動く。食い込んだ鋼 鉄の枷で血が滲む。
天才と呼ばれ、想気流柔術最高の傑作と噂される武道少女が、悪鬼の思い通りに無惨に果
てた瞬間であった。
エクスタシーの聖水がホテルの床をビシャビシャに濡らす。嬌声と性の潮とを搾り取られた美
少女は、磔の木板に全てを失ったかのような表情で大の字に垂れ下がっている。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・・アアぁ・・・・・・」
“・・・・・・・・死に・・・・・・・たい・・・・・・・・”
見られてしまった。
人間として最も見られたくない痴態を、最も忌むべき敵に見られてしまった。
火のでるような恥辱と敗北感とが、幼い少女を責めたてる。もはや西条ユリは、正義の女神
でも、柔術の達人でもなかった。内気で繊細な、か弱き乙女。キスを想像するだけでのぼせて しまうような、思春期の少女。
ある意味、少女にとっては死体を晒される以上の屈辱が、人形のような顔を絶望に染める。
華奢な肉体をガクリと脱力させる。
“・・・・・・私・・・・・・・・・また・・・このひとたちに・・・・・・・負け・・・・・”
「この程度では済まさん」
無表情で磔少女を見据えていた久慈仁紀の尖った指が、水着越しに股間のクレヴァスを突
き貫く。
「くひゃああッッッ?!!」
ビクンと大の字の肢体を再起動させるユリ。
滝のように聖水を放射しても、火照りは収まりなどしなかった。最も女性として大事な場所を
乱暴に抉られ、桃色の電撃に色欲に溺れた体細胞が反応する。
「熱い・・・熱いな、ユリア。なにが正義の女神だ、メスブタめ。感じまくってビショビショではな
いか。それ、快楽の果てに昇天しろ」
白いビキニ越しに透き通った秘裂を、人差し指と中指、2本の指が掻き分けて埋まっていく。
水着ごとユリの体内に侵入した指は遠慮なく暴れ、伸びたナイロン生地が熱い洞窟の内部を 擦る。正確に蜜壷を刺激する久慈の指技に、可憐な少女はまたしても獣の本性を曝け出して いく。
「んんんあああああッッッ?!!! ひゃふッッうううッッッ〜〜〜ッッッ!!! ぬッ、抜いて
ぇぇッッ!!! 抜いてくださいィィッッッ!!!」
洞窟のなか、わずかにへこんだ、快楽のスイッチを久慈の指は的確に探って擦る。極楽世界
に漂うユリに、愉悦の稲妻が次々と股間から延髄へと突き刺さる。
「あくうううッッッ―――ッッッ!!!! ああああんんんんッッッ―――ッッッ!!!! ひゃ
べッッ・・・もうやめ・・・」
少女の嘆願が言葉になる前に、えびす顔の色魔の丸い指が、ユリの臀部に隠れた狭い穴に
突き入れられる。
「ぎゃひいいいいいッッッ――――ッッッッ?!!!」
異物が直腸を圧迫するおぞましさに、磔の武道少女は絶叫した。
次の瞬間、田所の空いた手は、ユリの秘裂の少し上にある萌芽を荒々しく摘まんでいた。
「狂い死になさい、西条ユリくん」
股間に食いついた3つの色魔の顎が、怒涛の勢いで白い妖精を貪る。
膣に飲み込まれた細い手が口から飛び出さんばかりに暴れ、アナルに刺さった指が内肉を
削ぐ勢いで出し入れされ、皮をむかれたクリトリスが嵐のようにこね回される。
そのひとつだけで昇天は免れぬ悪魔の性技を、一度にそれも全力で叩き込まれて、純真な
少女は女獣の嬌声をあげた。
「はびゃひいいいいいイイイッッッ――――ッッッ!!!! んんんええあああああッッッ――
――ッッッッ!!!! あああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
ブッシュウウウウウウウッッ―――ッッッ・・・・・・・・・
2度目の噴射は、1度目と変わらぬ量と勢いで行われた。
小動物のようなキュートなマスクが、果てると同時にガクリと垂れる。浮きあがった汗と涎がト
ロトロと垂れ落ちていく。
正義と悪という関係を無視しても、あまりに無惨な磔少女の姿。
だが、15歳の美少女が吊るされたまま潮を吹く、凄惨な光景を目の当たりにしながら、ふた
りの悪鬼は悦楽の責め手を緩めようとはしなかった。
失神してしまったユリに構うことなく、聖水に濡れ、湯気をたてる手を、休むことなく動かし続
ける。
クチュ・・・ベチャ・・・クチャリ・・・ビチュ・・・・・・
淫靡な響きが豪華なホテルの一室に流れていく。
「・・・うくッ・・・・・・へあッ・・・・・・・・ふぇあぁぁッ・・・・・・・」
「目覚めましたか? まだまだ、こんなものでは終わりませんよ」
楽しげに処刑宣告を告げたハゲ中年の唇が、水着越しに尖った胸の蕾に吸いつく。合わせ
るように、端正な顔をした悪魔が、もう片方の乳首を咥える。
「果てしなく、イキ続けなさい、ファントムガール・ユリア」
「いやあああああああアアアアアアッッッ―――――ッッッ!!!!」
全身を2匹の淫獣に弄ばれ、西条ユリは悦楽地獄に溺れた。
ブッシュウウウウウウウッッッ――・・・・・・・・
ブシュウウウウウウウッッ・・・・・・・
プシュッ・・・シュウウウ・・・・・・
計五回、失神と昇天を繰り返し、天才と呼ばれた柔術少女は惨めに愛液を垂れ流し続けた。
磔の肢体は指まで力なく垂れて、文字通り精根尽き果てた正義の少女は、汗と体液で濡れ
光った姿を宿敵に晒している。
襟足で束ねた髪を無造作に掴むと、凍えた視線で見据える久慈仁紀は、グイッ・・・と囚われ
の聖少女の顔を起こす。
半開きの口からコポコポと涎が垂れ流れ、くるみの瞳いっぱいに溜まった涙が零れる。
グショグショに濡れ光ったユリの顔は、敗北者のそれだった。
「わかったか? 貴様ごときが我らに歯向かうことの恐ろしさが。お前らファントムガールは、
死ぬより辛い地獄を味あわせながら、嬲り殺してくれる」
「・・・・・・お願い・・・・・・です・・・・・・」
桜色の唇を震わせながら、ようやくユリは言葉を紡ぐ。
発狂寸前の快楽責めの連続に、武道少女の心は身体同様ボロボロになっていた。
「・・・私は・・・・・・どうなってもいい・・・・・・です・・・・・・エリを・・・エリを助けて・・・・・・くださ
い・・・・・・・・・エリは・・・普通の人間・・・・・・なんです・・・・・・・・」
「そうはいかん。ファントムガールに近い人間は、全員皆殺しだ」
「・・・私が死ねば・・・・・・エリはもう・・・・・・ファントムガールとは・・・・・・関係ありませ
ん・・・・・・・・お願い・・・です・・・・・・エリは・・・エリだけは・・・・・・助けて・・・・・・・」
「バカが。あの女も我らに歯向かった以上、死あるのみ。姉妹揃って、生首を海岸にでも並べ
てやろう」
必死の願いを容易く一蹴し、冷酷な悪魔は更なる天使蹂躙の準備を進めていく。
(キャアアアアアアアアッッッ――――ッッッッ!!!!)
隣室から魂も凍えそうな絶叫が洩れてきたのは、その時であった。
「エ、エリ・・・・・・・・お、お願い・・・です・・・エリは・・・エリだけは助けてくださいッ!」
「愚かな小娘め。貴様に姉の身を心配する余裕があるのか?」
背後から迫った変態教師が、DVDプレイヤーに接続されたヘッドホンをおさげ髪の頭につけ
る。
同時にユリの正面に位置する白い壁をスクリーンにして、用意されたプロジェクターが巨大な
映像を映し出す。
『きゃああああああああ――――ッッッッ・・・・・・・・・』
ヘッドホンから流れてくる、大音響の悲鳴。
そして、映像の中で、青銅の魔人に貫かれる銀と黄色の巨大戦士・・・
その瞬間、被虐の少女は全てを悟った。
「いッッッ・・・いやあああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
狂ったように叫ぶ、西条ユリ。
彼女が見せつけられているもの。その正体は。
「ハハハハハ! どうです、ユリくん? 己が殺される場面を見る心境は? あのとき、我々
に手も足もでずに惨殺された苦痛と屈辱、そして恐怖を思い返して発狂するのです!」
スクリーンのなかで、ファントムガール・ユリアの身体がタコの触手に貫かれる。
巨大な悪魔の手に潰される。
己が作った光の矢で脇腹を串刺しにされる。
青銅の悪鬼と濃緑のタコに陵辱される。
あの日、メフェレスとクトル、二匹のミュータントによって惨殺されたあの日の映像と己の悲鳴
とが、次々と猛スピードで展開されていく。
媚薬の効果で混乱した脳に、自分が殺される衝撃的な映像は、過去の記憶とあいまって、ま
るで現実に行われているかのような幻覚をもたらした。
「やめてええぇぇぇッッ―――ッッッ!!!! もうやめてくださいいいいィィィッッッ――――ッ
ッッ!!!! 許してええええッッッ〜〜〜ッッッ!!!!」
ガクガクと激しく頭を揺らし、白目を剥きながらユリは懇願する。
戦士のプライドも、武道家の誇りも、宿敵への敵対心も、乙女の恥じらいも全てが吹き飛ばさ
れていた。ただ、死の恐怖に脅え、苦痛を現実のものと認識しながら、懸命に救いを求めて泣 き叫ぶ。
「そおれ、死になさい、ファントムガール・ユリア」
ドシュウウウッッ!! ドシュウウウッッ!! ドシュウウウッッ!!
濃緑の触手が4本、聖少女の四肢の付け根を突き刺して貫通する。
その映像を見せながら、田所の手刀が戯れるように磔になったユリの同じ場所を突く。
「あぐううううッッッ―――ッッッ!!! やめッッ・・・やめてェェェッッッ!!!」
「苦しいでしょう? 痛いでしょう? その柔らかな肉を貫かれるのは。さあ、今度は全身を蜂
の巣にしてあげます」
しっちゃかめっちゃかに、尖らせた両手を細くしなやかな肢体全体に突き刺す変態教師。
太股を、腹部を、二の腕を、胸を、脇腹を・・・格闘技のなんの習いもない田所の手刀は、決
して耐久力があるとは言えぬユリにとってもなんでもない攻撃のはず。それが、目前の映像と 大音響のBGMとによって、有り得ない効果をもたらす。
スクリーンに映ったクトルの8本の触手が、囚われたユリアの胸を、腹部を、太股を、貫く。抉
る。突き刺す。穴だらけにされた銀の天使が、血と肉片を撒き散らして肉屑にされていく。
現実には行われなかった残虐な仕打ち。それは編集してつくられた、虚構の映像であった。
だが、媚薬の幻覚によって、造られた苦痛と記憶は「リアル」としてユリの脳裏に埋め込まれて いく。
「あぎゅうううううッッッ―――――ッッッ!!!! はあぎゃあああアアアッッッ――――ッッ
ッ!!!! 死ッ、死ぬぅぅッッ・・・許しッ・・・許し・・・て・・・・・・」
ピクピクと痙攣しながら、断末魔にも似た苦鳴を洩らすユリ。
蘇る敗北感と絶望が、少女にありもしなかった偽の苦痛を与えていた。武道少女の意識のな
かで、彼女の肉体は図太い触手に貫かれ、半分屍と化した血みどろの肉塊へと変貌してい る。
「トドメの時間です」
水着に包まれた丸いふたつの膨らみを、中年の脂ぎった手が掴む。
触手によってエナジーを吸い取られる映像に合わせて、好色親父の両手はユリの果実を揉
み回す。
『ゴキュウウウウウウウ・・・・・・・』
「はきゅうううううううッッッ?!!!」
死の記憶が蘇る。
実質的にユリアが処刑された技。悪夢の映像は、それだけであどけなさの残る少女戦士を
地獄に突き落とすには十分だった。
己が惨殺されたシーンの再現に、哀れな羊は悲痛な叫びをあげた。
「はくふッッ・・・許しッ・・・許してッッ・・・許してくださいッッ・・・・・・もう・・・・・・やめてェェ
ェ・・・・・・・」
「死ねいッッ、ユリアッッ!!!」
鞘に収まったままの日本刀を、久慈仁紀が、あのときと寸分違わぬ鳩尾の場所に突く。
『きゃあああああああ―――ッッッ・・・・・・・・・・・』
「きゃあああああああ―――ッッッ・・・・・・・・・・・」
映像と同じ悲鳴をあげて、カクリと愛くるしいマスクは垂れた。
スクリーンのなかでは、メフェレスによってトドメを刺されたファントムガール・ユリアの死体
が、青銅の刀に貫かれたまま高く掲げられている。
苦痛の果てに迎えた死。映像と音響で喚起され、再現された死の記憶の前に、白い乙女は
ボトボトと涙と涎をこぼしながら失神していた。
「く・・・ククク・・・・・・苦しみのさなか、堕ちたか・・・脆弱な女め」
引き攣る唇を吊り上げて、久慈が愉しげな声を洩らす。
その横顔には尊大ともいうべき不敵さの影が蘇りつつあった。
「ユリくんの無様な姿を見て、自信が戻ってきたようですねェ。それでこそ、久慈くんです」
失っていた輝きを取り戻し始めたパートナーに、田所教師は嬉しげな笑顔を送ってみせる。
このままユリを嬲り殺せば、魔人メフェレスの復活は遠くない。
そしてその暁には、憎きファントムガールどもをひとりひとり抹殺するのだ。最高のコレクショ
ンとして、一生慰み者として飼ってやる・・・まずは痛い目を見た、桜宮桃子あたりから始末しよ うか?
「さて、それでは次のお楽しみといきますか?」
「・・・ユ、ユリ・・・・・・・」
隣室から聞こえてくる引き攣る悲鳴に、西条エリは無意識のうちに妹の名を呟いていた。
犬の鳴き声のような喘ぎが、少し前から苦しげな絶叫に変わっていた。虜囚となった女性が
避けられぬ被虐の後、生命に関わるような仕打ちを施されていることが、悲鳴からだけでもわ かる。焦燥と怒りに駆られる姉の耳に、やがて妹の叫びは甲高い一声を最後に聞こえなくなっ た・・・
「フン。妹の心配をする余裕があるのか?」
嘲笑う兵頭英悟の豪腕が、唸りをあげて細く引き締まった腹筋の中央を穿つ。
ドボンッッ!!! 肉を叩く鈍器の音がして、非力なエリの肉体が衝撃に揺れる。食い縛った
白い歯の間から、ドロリとした血糊が噴き出す。
「がふッッ・・・ごぶ・・・・・・ぐッ・・・ぶぶぶ・・・・・・」
「このオレを傷つけた罪、しっかり償ってもらうぞ、西条エリ!」
壷のような巨大な拳が、拘束されて身動きできない柔術少女を滅多打ちにする。愛らしい顔
を、ダメージの残る脇腹を、細く頼りない腹部を、鋼鉄の埋まったような危険な拳で容赦なく殴 りつける。ドカ、やバキ、ではない、グシャッッ! やドボオオッッ! という破壊音。一撃でKO 必至な打撃を、もうエリはこの部屋に連れ込まれてから何十発という単位で受けつづけてい た。
双子の姉妹を拉致した後、その責め手を決める作業は思いの外にすんなり決まった。
兵頭英悟が姉のエリを担当することを希望したためだ。最初からユリが目的であった久慈と
田所には、その申し出は好都合であった。皇帝と呼ばれる男にとっては、『エデン』を持たない 人間、それも年端もいかぬ少女に敗れたことは、拭い難い屈辱だったのだ。
用意されていた拷問具を使って、疲弊したエリを兵頭は手際よく拘束していった。
後ろ手に回した両腕を鎖で縛り、ふたつの足首にはそれぞれ重さ50kgの鋼鉄の玉に繋が
った足枷を着ける。人間ひとりにしがみつかれたような足は、一般女性としても力の面ではか 弱い部類に入るエリには、ビクとも動かすことができない。やや足を広げさせられた美少女 は、ちょうど「人」の字をかたどったような姿勢で動きを封じられる。
さらに兵頭は、鋼鉄の首輪を白い咽喉にはめ、天井から鎖で繋いで吊り上げる。立っていれ
ば問題ないが、大きく屈んだり、前のめりになれば窒息する、絶妙な長さ。絞首刑を避けるた めには、エリはずっと「人」型のまま立ち続けることを余儀なくされる。幾多の女性を暴虐の餌 食にしてきた闇の支配者は、束縛にやけに慣れていた。
立ち尽くすサンドバッグと化した柔術少女を、憤怒のままに闇の破壊者は殴り続けた。
一撃でエリの意識は吹き飛び、失神してはまた殴られて蘇生させられる。完全に気絶したエ
リの肢体が脱力して首吊り状態になれば、兵頭は用意してあった革の鞭で水着姿の背中を叩 き、無理矢理に美少女を覚醒させた。鳩尾への殴打は執拗を極め、尖った拳頭が埋まるたび に、苦痛にエリは呻いた。足元の床には黄色の吐瀉物が湯気をたて、胃液の酸っぱい匂いが 部屋には充満している。
美少女の典型ともいうべき顔は紫に腫れ上がり、薄緑の水着が映える白い肌には青い痣が
無数に浮かび上がっていた。鞭によって皮を剥がされた背中は、桃色の内肉が覗いている。 ショック死してもおかしくない悪魔の蹂躙を、エリはその華奢な肢体に一身に浴びてきたのだ。
「いい姿になったな、西条エリ。だが、オレ様に恥を掻かせた罪は、この程度じゃすまんぞ」
セミロングを乱暴に掴み、うなだれる童顔を上向かせる兵頭。
滴る鼻と口からの鮮血が胸元までを染め、紫に膨らんだ顔はあどけなさを失って無惨に変形
していた。本人が自覚せぬまま、熱狂的なファンを生んでいるロリータフェイスが、血と痣にま みれてボコボコに歪んでいる。それでも可愛らしさを失っていないのは、元の顔が類稀な造形 であったがゆえ。
「・・・・・・・ぁぐ・・・・・・がッ・・・・お、お願い・・・・・・です・・・・・・」
破壊された肉体が奏でる痛みに、満足な思考もできないであろう武道少女が苦悶のさなかに
声をあげる。
「なんだ?」
「・・・私は・・・・・・どうなっても・・・・・・いい・・・・・・・ユリは・・・・・・ユリだけは・・・・・・助けて・・・
ください・・・・・・」
奇しくも妹と同じ台詞を吐いた姉を、冷たい視線で破壊の皇帝は見下ろす。
「・・・ユリは・・・・・・私がいなければ・・・・・・闘えません・・・・・・私が・・・死ねば・・・・・・ユリはも
う・・・普通の子・・・・・・」
「どうなってもいい、だと? ならばその台詞、本物かどうか、確かめさせてもらおうか」
これはちょうどいいタイミングだ。
ほくそ笑む内面の声が聞こえてきそうな歪んだ笑いを浮かべ、兵頭は部屋の隅からあるモノ
を移動させる。かけがえのない存在を想う姉妹愛を利用し、悪魔の道具を発動させる歪んだ 愉悦。“いいひと”をやっていたのでは、一生味わえないであろう極上の高揚感が、破壊の悪魔 の歓喜を爆発させる。
ゴロゴロゴロ・・・重々しい響きとともに、その道具は囚われの柔術少女の目前に現れた。
「ッッ・・・ううぅッッ・・・・・・!!」
「さすがは想気流の達人、己に迫った危険が理解できてるようだな。この機械は、“キラーフ
ァントム03型”というのだそうだ」
それは一見、鋼鉄製の椅子であった。
四角い箱に背もたれがついたような、全身鋼鉄の冷たい椅子。だが、キャスターのついたそ
の椅子を、『エデン』と融合して人間離れした怪力を持つはずの兵頭が、渾身の力で重々しく運 んだことから、いかなる装置がその内部に装備されているかが窺い知れる。
台座にあたる部分には、多くのボタンやダイアルが椅子の凶暴性を示すように並んでいる。
無機質独特の冷たさと、悪意の滲む装置の多さが、エリの背中を凍えさせる。
「あのハゲ親父が特注で造らせたものらしい。何百万という単位で金が注ぎこまれてるようだ
が、さすがに金持ちがバックについていると違うな。ファントムガールを拷問するために造られ た機械、まずはファントムガールではないお前が掛けられるのも、面白いかもしれん」
ファントムガール拷問用に造られた機械。
安直であるが故に戦慄せざるを得ないネーミング同様、明確な使用目的がエリの血の気を
引いていく。久慈家の資金力を思えば、いつかはそんな機器が開発される懸念はあった。だが いざ現実に、それも自分に照準を合わせて登場したことに、普通の人間であるエリに恐怖が広 がっていく。
「もう一度聞こう。妹のためなら、なにをされてもいいんだな?」
返ってくる言葉を確実に予想して、尚兵頭は質問を囚われの少女に浴びせる。
「い、いいです・・・・・・・・ユリを助けて・・・くれるなら・・・・・・私はどうなっても・・・・・・・構いませ
ん・・・」
青ざめた顔で、それでも迷うことなく、姉は毅然とした口調で答える。
「よし、ならば地獄に堕ちろ、西条エリ」
ゴロゴロと車輪を転がし、兵頭は鋼鉄の椅子をエリの真下へと移動させる。
台座についたボタンのひとつを押す。
ウィィィィィ・・・・・・ンンン・・・・・・
椅子の中央からせり上がってきたものは、細かなイボが無数に施された鋼鉄の棒だった。
50cmほどの長さ、男性の性器をかたどった造形、冷たく光る漆黒の鋼。明らかな使用法
に、美少女のくるみの瞳が見開かれる。
「フン、今ごろ後悔しても、もう遅い」
必死で腰を振り、暴れ回って椅子の杭が迫るのを逃げようとするセミロングの美少女。両手
足の自由を奪われ、首を吊られた少女にとって、身を捩らせ、腰を捻ることだけが唯一の反 抗。だが、激しい動きは首への窒息を強め、いかに頑張ろうと所詮はわずかな範囲での避難 にしか過ぎぬ、冷酷な現実を知らされるのみ。
『エデン』寄生者の怪力によって小さなお尻は押さえられ、鋼鉄のディルドゥの先端を水着に
浮き出た股間の割れ目に挿入される。
「はくうッッ?!! ふぇああッッ!!!」
薄緑のビキニを通じて伝わる冷たさと、異物感。少女の秘園に突き入れられた杭は、わずか
3cmほどの長さであったが、ウブな少女を戦慄させるには十分であった。
「もちろん、“キラーファントム”の実力はこの程度では収まらんぞ」
パカリと台座の一部を開き、兵頭は数本のコードを取り出す。赤、白、緑・・・さまざまな色の
コードは椅子本体から伸びて、先端に3本爪のクリップのようなものをつけていた。
凶悪な拳がムンズと膨らんだ右胸を掴む。ひしゃげた乳房の中央で、グリーンの水着を尖っ
た蕾が押し上げる。
蛇が噛み付くような勢いで、3本爪のクリップは、西条エリの乳房の頂点に食い込む。
「きゃううううううッッッ?!!!」
「苦しむのはこれからだ!」
仰け反るエリに構わず、間髪入れずに兵頭は台座についた黒いダイアルを回す。
バババババババババッッッ!!!!
「きゃあああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
凄まじい電流が白い妖精の右乳首を灼く。
胸の突起を千切り取られたような激痛に、エリは甲高い悲鳴をあげていた。突然の激しい苦
痛にガクガクと足が震え、腰が砕けそうになる。
ズブズブズブ・・・
鋼鉄の杭がエリの体内にさらに3cm埋まる。首輪が白い咽喉を圧迫する。
股間の違和感と窒息の苦しみが、挫けかけた柔術少女を再び立たせる。全身に浮んだ汗
が、雪のような肌いっぱいに濡れ光る。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・・・」
「そうだ、失神したら膣は破られ、窒息死するぞ! 死にたくなければ立ち続けるんだ」
新たなコードが、左胸に伸びる。浮んだ突起に食い込む3本爪。グリーンのビキニに滲む
血。
右胸だけでも壮絶な苦痛に溺れ掛けたというのに、それを両胸に食らえば・・・
恐るべき予感に、ふるふると腫れあがった童顔が横に振られる。自然発生的な動作。溢れ
そうになる涙を必死に堪えながら、苦痛と正義の狭間で少女は揺れる。
だが、そんな武道少女の想いを根本から断ち切るように、総合格闘技の破壊者は、3本目の
コードを取り出す。
「ッッ!!!」
ボロボロボロッッ・・・
零れる涙を無視し、兵頭英悟は股間の谷間の上にある肉芽を水着越しに掘り出し、最も敏
感な少女の萌芽をこね回して固くさせる。
下腹部の肉ごと、うっすらと盛り上がった小豆に3本爪が噛みつく。
「そッ・・・そんなぁッ!! ・・・・・・ひゃめッ・・・ひゃめてください゛い゛い゛ィィッッッ・・・!!!」
ババババババババッッッ!!!!
懇願をしかと聞き届けてから、無情な悪魔は黒いダイアルを回す。
両乳房とクリトリス、幼い少女の敏感な箇所を、電撃の龍が翔け巡る。突起が弾け飛びそう
な衝撃に、哀れな獲物は泣き叫んだ。
「いぎゃあああああああアアアアアアッッッ――――ッッッ!!!! やめてエエエエッッッ―
――――ッッッ!!!! もうやめてエエエエッッッッ――――ッッッ!!!!」
ガクガクと足が震える。ゴボゴボと泡が口からこぼれる。
闇の魔獣に乳房と股間を食い千切られて、卒倒しそうになるスレンダーな肉体を、気力だけ
が必死で支える。
「“キラーファントム”の味、気に入ってもらえたようでなによりだ」
不意に電撃が和らぐ。吹き飛びかけた意識が、ゆっくりと戻ってくる。
3箇所に食い込んだクリップから、紫の煙をあげながら、半分白目を剥いた被虐少女が、全
身を痙攣させて立っている。
「あくうッッ!!・・・へびゃあッッ!!・・・・・・くふッ・・・いぎぎッッ・・・」
「さて、今度はさっきの倍だ」
ギュルリ!!
無造作に、一気に凶悪な拳はダイアルを回す。
ズバババババババババッッッ!!!!
「ふぎゃああああああああアアアッッッッー――――ッッッ!!!!」
ズブズブズブ・・・
許容外の電撃を浴び、エリの膝は無惨に崩れた。
失神した少女の肢体は鋼鉄のディルドゥを飲み込み、膝折れて深く沈んでいく。
ギャランッッ・・・鎖がピンと伸び、絞首刑に処された美少女は、白目を剥いたまま、ダラリと鎖
に垂れ下がる。
20cmは埋まった鋼鉄の杭を、ドス黒い血が滴っていく。口から溢れた白い泡が、水着姿を
垂れ流れていく。
秘所を貫かれる激痛も、首吊りによる苦しみも、壮絶な電撃に散ったエリの意識を取り戻す
ことはできなかった。
「では・・・クライマックスといくか」
恐るべき台詞を、気絶した妖精は認知することができたであろうか。
機械椅子の台座についた黄色のボタンを、ゴツゴツとした格闘家の指は躊躇なく押した。
プロペラが回るような速度で、イボのついた鋼鉄のディルドゥが唸りをあげて回転する。
ギュルルルルルルルッッッ!!! ブチュルッッ!! グチュグチュグチュッッ!!!
柔らかな肉襞を抉る凄惨な音が洩れる。
白目を剥いたまま、アニメに出てくるようなキュートな顔が、白い歯を食い縛って苦痛に歪
む。失神しながら、尚加えられる悪魔の所業に、筋肉が、細胞が、神経が、肉体そのものが苦 悶しているのだ。
破壊の煉獄に堕ちた少女から、地獄の罪人のごとき苦鳴が洩れ出る。
「ひゅぎいいいいイイイイイ・イ・イ・イ・イッッ・・・・・ギギギッッ!!」
「ワハハハハハ! トドメだ、西条エリッッ!!」
黄色のボタンの隣にある赤いボタンを、兵頭は哄笑とともに押した。
回転して膣を抉る鋼鉄の棒から、火傷しそうな高圧電流が一気にスパークする。
「ぎいいえええああああああアアアアアッッッ―――――ッッッ!!!!!」
意識を吹き飛ばされているはずのスレンダーな肢体が、獣のごとき絶叫をあげる。
一瞬、大きく仰け反った身体が、ビクッビクッ!! と痙攣するや、ガクンッッ・・・と前のめり
に突っ伏す。
絞首刑に架けられた無惨な姿のまま、西条エリはふたつの肉丘の頂点と、股間の萌芽、そし
て蜜壷の内部を電流で灼かれながら、ビクビクと痙攣し続ける。バチバチと敗北の妖精を焦が す凄惨な音が、いつまでもエリの華奢な身体から流れてくる。
「ワハハハハハ! 小癪な女め、今度こそオレの勝ちだな! ワハハハハ!」
周到な罠と悪魔の装置に敗れ去った悲痛の少女武道家に、卑劣な破壊者の哄笑が、途絶
えることなく降り注いだ。
ザーザーという響きが、なんとなく懐かしく耳に届いてくる。
あれは幼稚園のころ。梅雨という言葉も知らず、この時期に傘を準備することが常識だなん
てわかるはずもない少女は、突然の雨に立ち往生して、帰るに帰れないでいた。
しっかりものの母親がいる子は、朝持たされたコウモリをさして雨のなかを消えていく。親が
迎えに来れる子は、飛沫をあげて現れた車に笑顔で飛び乗っていく。
気がつけば、襟足でふたつに髪を束ねた幼女は、ひとりで園の軒下に立っていた。
グシ・・・
潤んでくる瞳をゴシゴシとこする。何度こすっても、あの父親が現れるわけなどないと知ってい
るのに、雨に煙る街を、丸い瞳を凝らして見詰める。
『ゆり』
ポンと肩を叩かれ、少女はくるりと振り向いた。
『おねえちゃん』
『なにしてるの? さあ、かえろ』
『だって、カサがないよ?』
唇の右下に黒子がある、同じ顔の少女はニコリと微笑んだ。
『おねえちゃん、カサもってるの?』
期待した答は、あっさり覆されて返ってきた。
『ないよ。だってあたしたち、双子じゃん』
姉の笑顔に釣られるように、妹の顔も綻ぶ。
『じゃあ・・・よーい、ドン!』
キャアキャアと騒ぎながら、双子の幼い姉妹は、雨の中を飛び出した。
「ハアッッハッハッハッ――ッッ!!! どうした、西条ユリッッ!! 守護天使とやらの実力
はこの程度なのかッッ?! ハアッハッハッハッ!!」
耳元で笑う、狂ったような久慈仁紀の咆哮に、ユリの意識は現実へと引き戻される。
ぐったりとしたユリに、頭からシャワーの冷水が浴びせられる。悪鬼たちは、夢の世界にいつ
までもユリを留めさせてはくれなかった。先程からのザーザーという音の正体を知り、白百合は 己が際限ない快楽責めのさなかにあることを悟る。
もう・・・何度失神と蘇生を繰り返しただろう。
大人ふたりが横臥しても余りがある広い浴室。
磔のまま、悦楽地獄に堕ちた妖精を待っていた新しいステージ。
媚薬と死の再現で、心身ともに衰弱しきった武道少女を、悪の首領と変態教師はさらに加虐
し続けていた。
己の死を再現され、意識を失ったユリを引き摺ってきた悪魔ふたりは、浴槽のなかにスレン
ダーな肉体を放り投げる。
一見なんの変哲もないシャワールーム、しかしそこには性を知らぬ美少女を、徹底的に陵辱
するための罠が仕組まれていた。
「あひゃあああああッッッ〜〜〜ッッッ?!!」
溺れかけたユリが目を覚ますと同時、少女は自らのボディを抱き締めて、卑猥ともいえる嬌
声をあげていた。
「いい鳴き声ですねぇ、ユリくん。いかがですか? 媚薬ローションたっぷりのお風呂は? ま
とわりついた粘液が垂れる感覚だけで、イッテしまいそうですか?」
生温かい透明なゲルは、官能の刺激を喚起する、特製のローションであった。
浴槽いっぱいに湛えられた悦楽の海。全身に塗りたくられたユリは、あらゆる部位を性感
帯、それも敏感に研ぎ澄まされたアンテナに改造されたようなもの。
ハゲた小太りの中年が両肩を掴む。それだけで少女の下腹部に電流が走り、大袈裟なまで
にビクンと震える。
「貴様に戦士らしい死に方などさせぬ。イッて、イッて、イキまくって、愛液を枯らして狂い死ぬ
のだ!」
ベッチョリとローションで濡れ光るスレンダーなモデル体型を、4本の腕が激しく摩擦しながら
全身を愛撫する。
それは身体中に剥き出された肉襞や、クリトリスや、乳首を、一斉に摩擦されるのと同じ、怒
涛の悦楽地獄。津波と化した桃色の刺激に、ウブな少女は木っ端微塵に粉砕されていく。
「ひゅえええああああああアアアアッッッ〜〜〜〜ッッッ!!!! ひぎゅううううッッッ―――
―ッッッ!!!! 狂ううううぅぅぅッッッ〜〜〜ッッッ!!! 狂っちゃいますぅぅぅぅッッッ〜〜〜 ッッッ!!! ゆるひへぇぇッッ〜〜ッッ・・・もう許ひてえええッッッ―――ッッッ!!!!」
許されることなく続く愛撫の嵐に、悶絶の末、意識を失うユリ。
ぐったりとふたりの悪魔の腕のなかで崩れる武道少女に、激しく吹き出るシャワーの冷水が
浴びせられる。
やがて覚醒する、魔宴の生贄。
そして、再び穢れを知らぬ白百合はローションの海に沈められ・・・
そうして何度も、何度も、終わりを知らぬ陵辱刑に、闘少女の肉体は貪られていく。
「気分はどうだ? ユリ・・・いや、ファントムガール・ユリア?」
束ねたおさげを鷲掴み、ローションまみれの少女に冷酷な質問を闇の王が尋ねる。
惨めに蹂躙されていく聖少女の姿が、ヤサ男に自信を戻させたのか。野犬に似た瞳に、以
前同様の不遜な光が宿いつつある。全ての生物は自分に跪くのだという、呆れるまでの自信と 選民意識。
このまま西条ユリは、生命の光を奪われるだけでなく、人類の脅威となる悪魔を、己を犠牲
にして蘇らせてしまうのか。
無言で、ふるふると、少女は首を横に振る。
それはまだ武道家の心に残されていた、反抗の意志。オモチャのように弄ばれる身に堕ちよ
うとも、最後の一線で悪に屈しない、戦士の心がさせた行動。
だが、結果的に、可憐な天使の強い心は、少女戦士をより一層の悲劇に導くだけであった。
「この・・・クズがッッ・・・!!」
久慈の瞳がギラついたと思った瞬間、ユリの肢体はローションの海に沈められていた。
ゴボゴボと気泡が浮びあがる。暴れる少女に、もはや暴虐を撥ね返す力は残されていない。
溺死するかと思われたその時、髪を掴んだ悪鬼は一気に少女を引き上げ、空中に放り投げ る。
「クトル! 両足を持て!」
ユリの長い四肢をふたりの悪魔が捕える。両腕を久慈が、両足を田所が。天に顔を向けた
姿勢で宙高く掲げられた白い妖精。その真下にあるのは、70cmほどの高さの、浴槽のへり。
伸びきった姿勢のユリの身体を、残虐な悪魔たちは猛スピードで真下に叩きつける。
ボギイイイイイッッッッ!!!
「ゴボオオオオッッッ―――ッッッ!!!!」
背骨が嫌な音をたて、ユリの肢体は逆にくの字に曲がった。
激しく噴き出された吐血が、浴室のタイルに血痕を残す。逆さになったロリータフェイスを、朱
色の筋が口から頭に向って垂れていく。
折れてはいないが、激しく損傷した背骨の痛みに、ピクピクと震える少女の顔にシャワーの冷
たい水が浴びせられる。
苦痛でただでさえ呼吸が苦しいのに、激しく顔に噴射され、少女戦士の息苦しさが倍化する。
満足に酸素を吸えない苦しさに、少女の痙攣が大きく激しくなっていく。
苦悶に飲み込まれた妖精のなだらかな胸を、細長い手が揉みしだく。だらしなく広げられた
股間のクレヴァスを、丸っこい指が摩擦する。
もう、どうでもよかった。
快楽にさんざん喘がされ、死の苦痛を思い起こされ、肉体を破壊され、空気さえ奪われ、嘲
るように嬲られて・・・
“・・・・・・私・・・は・・・・・・・・・”
プシュッ・・・
股間から、空気の洩れるような音が響く。
“・・・・・・このひとたちの・・・・・惨めな獲物・・・・・・・”
プッシュウウウウウッッッ・・・・・・
水着を通して、大量の黄金色の聖水が、ユリの股間から放物線を描いてローションの海に落
ちていく。
守護天使ファントムガール・ユリアの正体であり、天才柔術家と呼ばれる美少女は、度重なる
嗜虐の前に失禁した。
勢いよく吹き出る聖水は、やがて放物線のカーブを小さくし、ついにその流れを止めた。
顔に浴びせられていたシャワーが止められる。
浴槽のヘリに折り曲がったまま、無惨な敗北者は、全身を弛緩させて垂れ下がっていた。
「どうだ、ユリア? いまの気分は?」
先程と同じ質問を引き締まった男は繰り返す。
「・・・・・・・・ころ・・・・・・し・・・て・・・・・・・・・もう・・・・・殺して・・・・・・くだ・・・・・さい・・・・・・・」
濁った眼をした人形が、消え入りそうな声で呟く。
「・・・・・エリ・・・・・エリだけ・・・・・・は・・・・・・・助け・・・・・・て・・・・・」
「ククク・・・愚かな。無惨に変わり果てた姿で、まだ姉の身を案じるか・・・」
海老反った白いビキニの少女を見下ろしながら、復活に向う悪の首領は恐ろしい提案を口に
した。
「よかろう。ただし、条件がある。貴様の手で、姉をイカせるのだ。見事昇天させることができ
れば、エリの命は助けてやってもいい。柔術姉妹のレズ競演、楽しませてもらおうか」
シャワールームに甲高い哄笑が響き渡る。
正義の少女は反り曲がったまま、ぐったりと脱力した身体で、嘲りの嵐を浴びせられるしかな
かった。
もう、どうでもよかった。
5
―――――――――――――
白い月明かりが窓から斜めに射し込み、畳敷きの広い室内を照らしている。
『想気流柔術』の看板が掲げられた道場内に、いまは稽古時の熱も喧騒もない。時計の針は
12時を指していた。冬の冷気が貼りついた室内は、澄んだ空気で満たされている。寝静まっ た周囲とは一種異なる、神聖なる静寂ともいうべき空間が、そこには完成されていた。
目を凝らせば、3人の人間が座っているのがわかる。
神棚の奉ってある上座に位置するのは、恰幅のよい中年男性。正座した姿が岩を思わす頑
健な男から吐き出される白い息が、まるで闘気のごとく身体の周囲で揺れ動く。
正三角形を描く位置で相対して座るのは、同じ顔をした姉妹であった。左に座るのが、セミロ
ングの少女。唇の右下に小さな黒子がある。右の少女は襟足でふたつに髪を束ねていた。正 座する足元から真冬の厳粛な空気が這い登ってくるのを、華奢な双子の少女は震えひとつせ ずに受け流している。
月光に照らされた青い世界のなか、3人がそこに座り始めてから30分近くが経過しようとし
ていた。
「さてと・・・12月22日になったな」
腕にはめたGーSHOCKを覗き、西条剛史がおもむろに言う。
「晴れてふたりとも、15歳になったわけだ。準備はいいな?」
無言のまま、双子の美少女がスクッと立ちあがる。
白く、細く、美しい、百合のような可憐な姉妹。学校では、いることすら忘れられそうな静かな
少女たちは、互いに向き合い視線を絡ませる。
学校では、見せたことのない眼光で。
「後継者争いなど、興味はねえんだろうが・・・どうあがいてもお前らは想気流の嫡子だ」
同じ顔をした少女が見詰め合っている。
開いた両手を前に出す。天に向って伸びる若芽のように、シャンと伸ばした背中が美しい、自
然体の構え。鏡合わせで、寸分違わぬ構えが互いの目前に現れている。
怒りはない。憎しみもない。
だがれっきとした闘いの視線が、炎となって互いを包み込んでいる。
クク・・・
確実に一方は大怪我をする、ヘタをすれば死すら視野にいれねばならぬ闘いを、娘同士が
これからするというのに、父は唇を歪めかすかに声をあげて笑う。
こいつらふたりを見て、世間の奴らは「おとなしい」とか「優しそう」とか「可愛らしい」とか、いろ
いろ言うが。
わかっちゃいねえ。
な〜〜んも、わかっちゃいねえ。
結局、なんだかんだ言っても、行き着くところ、こいつらは。
「闘うために、生まれてきたのさ」
ザリュウッッ!!!
畳のい草を踏み躙る音。
合図されることなく、美少女姉妹は、互いを倒す第一歩を同時に踏み出していた。
――――――――――――――
ズリュッ・・・ズズ・・・・・ジュル・・・・・ズルルル・・・・・・
たっぷりと水を含んだ濡れ雑巾が、床を掃除する音。
高級な絨毯に、巨大ななめくじが這ったような跡ができる。浴室から伸びたそれは、広いベッ
ドが収まった部屋へと続いていた。
全身に透明なゲルをまとわりつかせた、水着姿の美少女が、襟足で結んだおさげをひとつづ
つ握られ、ふたりの男にズルズルと引き摺られていく。
仕留めたうさぎをふたりの猟師が引き摺っていくような光景。引っ張られた髪に全体重がか
かる痛みは相当なものがあるはずだが、長い睫毛を縫い合わせて閉じた瞳は、かすかに震え るだけで、開こうとはしない。
猟師役が久慈仁紀と田所教諭。そして哀れな獲物が、西条ユリ。
同じ光景は以前にもあった。陵辱の挙句に、濃緑の体液にまみれたファントムガール・ユリア
は、魔人メフェレスと妖魔クトルとによって、街を数キロに渡って引き摺られた。悪夢の再現が 人間体となってなお繰り広げられている。
「わかっているな、西条ユリ。姉を助けたければ、貴様の手で潮を吹くまでイカせるんだ。間
違ってもイカせられなかったり、貴様が先にイク、なんてことがあるんじゃないぞ」
久慈仁紀の口調は、完全に敵対関係ではなく、主従関係を思わせる。
かつて惨殺された仇敵に、完膚なきまでに汚され尽くしたユリ。天才として名を馳せた武道家
の心も、異性と手を握ることすら恥かしい乙女の純真も、卑劣な悪鬼によって粉砕されてしまっ ていた。
いまのユリは、狩人たちに歯向かうことのできない、従順な服従者。
「・・・は・・・・・・・・い・・・・・・・・・」
か細く呟く鈴の声を、満足げに聞きながら、男たちはベッドルームにまで延々と美少女を引き
摺っていく。
「さあ。立て」
3人は十分に横になれる豪華なダブルベッド。
寝室に連れ込まれたユリは、足腰の利かなくなった肢体を、両脇で抱えられて無理矢理立た
せられる。
その時初めて、靄のかかったユリの視界に、ベッドルーム内に準備された光景は飛び込んで
きた。
「・・・・・・・エ・・・・・・リ・・・・・・ッッ!!!」
先客が、いた。
灰色の重々しい機械椅子に座った、グリーンの水着姿の少女。
数時間前に別れた姉は、変わり果てた姿で妹の前に現れた。
アニメに出てきそうな愛くるしい顔は無惨に腫れあがり、白い肌には無数の青黒い痣が浮ん
でいる。
ビキニの胸のトップが破れ、ピンクの突起が露わになっている。周囲が焦げているところを見
ると、恐らく電撃でも浴びせられたのだろう。下半身を隠す三角の布にも焦げ跡は見られ、敏 感な3つの箇所に電流を流されたのは想像に難くない。
だが、もっとも衝撃的なのは、股間に食い込んだ鉄の杭。
椅子から生えた凶悪な鋼鉄は、エリの体内に深深と突き刺さり、あまつさえいまだにギュルギ
ュルと回転し続けている。
赤黒い泡が棒と椅子の台を濡らしているのは、血なのか。激痛と快感を催す悪魔の槍は、ぐ
ったりと弛緩し、完全に失神しているエリを陵辱の海に突き落としている。白目を剥いた瞳と、 半開きになった口とから、涙と涎が止めど無く溢れ出ていた。
「感動のご対面だな」
傍らに立つ兵頭英悟が、セミロングをムンズと掴む。
ドピュルル・・・クチュル・・・
秘裂に埋まった杭から引き抜かれ、少女の淡い茂みから淫靡な音が流れてくる。ねっとりと
した透明な雫が、エリの股間からドロリと垂れ落ちていく。
そのまま柔術少女を破壊した「皇帝」は、華奢な肢体をベッドの上に投げ捨てる。
ドシャリ・・・
仰向けに大の字になる西条エリ。蹂躙と陵辱の嵐に晒された若い身体が、次なる嗜虐の牙
を待つかのように横臥する。
「・・・エ・・・・・・・リ・・・・・・・・・」
ふたりの男に突き飛ばされ、ヨロヨロと妹は姉のところまでつんのめる。霞んだ視界に、暴虐
に散った姉の惨状はハッキリと看て取れた。
ポト・・・ポトポト・・・ポト・・・
姉の顔を覗き込むユリの瞳から、水滴がこぼれる。
大粒の涙が気絶したエリの顔に、胸に、落ちていく。呼応するように、意識のない姉の瞳か
ら、スッと聖水が横に垂れ流れていく。
“・・・私が・・・・・・私がこんなふうだから・・・・・・関係ないエリまで・・・”
「私がッ!!」
振り返った美少女の漆黒の瞳が、笑う魔人を射抜く。
憤怒の炎が燃えていた。
敵は完全な敗北を喫した恐るべき実力を持つ相手・・・わかっている。
捕獲され孤立させられたこの苦境を脱け出すことがいかに絶望的か・・・わかっている。
そして今の己が完全に屈し、いまや彼らの獲物に成り下がったことも・・・よくわかっている。
だがそれでも、たとえ今の自分が敵ではなくオモチャとしての認識しか与えられていなくとも、
かけがえのない姉を破壊した悪魔を許すことなどできない。
エリを無惨な姿に変えた敵を、許していいわけがない。
陵辱の嵐と死の再現に、人形のごとく魂を抜き取られていた少女武道家の心に激情が蘇っ
ていた。
逆巻く炎が本能に訴える。
闘え。
闘え、私。
白いビキニ姿の美少女が一歩を踏み出す。
研ぎ澄まされた漆黒の双眸が映すのは、冷酷な微笑を浮かべたしなやかな男。
ドボオオオオオッッッ!!!!
西条ユリが久慈仁紀に立ち向かう瞬間、その細い腹部には拳頭の尖った凶悪な拳が埋まっ
ていた。
華奢な肢体がくの字に曲がる。愛らしい童顔がぶるぶると震え、だらしなく開いた桃色の唇か
ら赤い涎がツツッと垂れる。
音もなく忍び寄った兵頭英悟の凶撃は、本来のアンテナを失った天才柔術家の柔肉に容赦
なく突き刺さっていた。
「ごぶううぅぅッッ・・・ッ!!・・・・・・あぁッ・・・がはッ!・・・」
「今更なにをあがく。お前はもう、終わりだ」
前屈みになった上半身を、「皇帝」の左手が束ねた髪を掴んで引き上げる。無防備に垂れ下
がった姿勢を晒すユリ。
相変わらず冷血な微笑を浮かべたままの久慈が、相棒といっていい木刀を手にして真っ直ぐ
に近付く。
ドスッ!! ドスッッ!! ドスッッ!!
ミサイルのごとき突きが、滑らかに光る雪肌の胸を、咽喉を、臍を抉る。
「ガハウウッッッ!!!」
獣の咆哮とともに、鮮血の華が武道少女の口から洩れる。
鋭い激痛が肉体を貫く。痛み自体は本当に刀で串刺しにされたのと変わらない痛撃に、ユリ
に生まれた反抗の力は塵のごとく吹き飛ばされた。
“ガッッ・・・の・・・ど・・・潰れ・・・・・お腹・・・・・・・破れッ・・・・熱ッ・・・・・・私・・・・・・・壊さ
れ・・・・・・た・・・・・・”
ピクピクと痙攣していたユリの肢体が、やがてガクリと糸が切れた人形のように垂れ下がる。
襟足のおさげを掴まれたまま、脱力した美少女は、膝を折って座り込む。透明な液体がまた
一滴、白桃の頬を流れていく。
「怒りに駆られたくらいで、お前にはなにもできん。できるのは、姉を悦ばせてやることぐらい
だ」
抱きかかえた兵頭が、強引にユリをベッドで横臥する姉のもとへ投げ捨てる。抵抗できない
武道家は、単なる細身の女子高生に過ぎなかった。脱力した妹は、痣だらけの姉の胸にドシャ リと顔を埋める。スレンダーなモデル体型の姉妹が、抱き合うようにベッドに横になっている。
「やれ、西条ユリ」
冷ややかな久慈の口調は、命令以外のなにものでもなかった。
“・・・エ・・・リ・・・・・・ごめんなさい・・・・・・私・・・どうしても、このひとたちに・・・・・・勝てな
い・・・・・・”
ポト・・・ポト・・・ポト・・・
屈辱がそうさせるのか。悲哀がそうさせるのか。
とめどなく溢れるユリの涙は、再び物言わぬエリの顔に、胸に落ちていく。腫れあがった姉の
顔は、苦痛に歪んだまま凍っていた。
“・・・せめて・・・・・エリだけは・・・・・・助けるから・・・・・・”
闘いの選択肢を奪われたユリにできるのはただひとつ。
すうっとグリーンのビキニに覆われた姉の乳房を撫でる。
決して大きくはないが、少女らしいなだらかな曲線は、初々しさに満ちて青い果実の芳香を醸
す。顔だけでなく、肉付きまで寸分違わぬ双子の身体は、ユリに己の肢体を愛撫する奇妙な錯 覚を覚えさせた。
掌にすっぽりと収まる乳房を優しくこねる。瑞々しい弾力は己のものと変わらなかった。確か
な温もりを伝える薄い丘に、仄かな愛着の念すら沸いてくる。破れた水着から覗く乳首を、指で ツンツンとついてみる。心なしかピクリと反応するエリ。桃色の突起を軽く摘まんで回すと、みる みるうちに固く尖ってくる。
“エリ・・・私に・・・・・・反応してるのね・・・・・・”
悪のいいなりになる屈辱。津波のように押しよせる悔しさのなかに、確かに潜む、双子の姉
を辱める背徳感。己の手によって、エリを感じさせる禁断の悦びが、無意識のうちにムクムクと 起きあがっているのか。
尖った乳頭をくりくりとこね回してみる。幾多の陵辱地獄のなかで、肉体で知った、ユリ自身
が感じる責め手。双子の姉は、失神したまま腰を浮かせ、姉妹揃って感度が同じであることを 示す。
“おねえちゃん・・・やっぱり、こうされると・・・・・・キュンってなっちゃうの?”
ふたつの掌をつかって、双乳を揉み回す。指を白肌に這わせ、ゆっくりと熱を昂ぶらせてい
く。小さな乳輪と屹立した乳首は薄い桃色。我が姉ながら美しい素肌を、愛しげにユリは撫で 回す。固い突起をこね、押し沈め、引っ張り上げると、エリの眉根はピクピクと震えた。
「可愛らしい美少女姉妹の絡み、これほど素敵なショーを見逃す手はないですねぇ」
煩悩を隠そうともしない変態教師の声も、今のユリには届かない。
3人の悪鬼に囲まれて、環視されるなか、黙々と姉をイカせるための愛撫を続ける。
“ごめん・・・ごめんなさい、エリ・・・・・・でも、これであなただけは・・・助けられる・・・・・・”
赤い舌がチロリと覗く。
数瞬のためらいの後、妹の小さなベロは、エリの右乳首をペロリと舐めた。
生温かい感覚が電撃となってエリを貫く。妹による愛ある責めは、失われた姉の意識を取り
戻した。
ペロペロペロペロ・・・
子犬のように、ユリの舌が何度もエリの小豆を舐め上げる。幼さを残した少女が、上目遣い
で赤い舌を出し入れする光景は、なんとも扇情的であった。すっかり唾液に濡れた乳頭は尖り きって、今にも飛び出そうだ。カッと眼を見開いたエリの肢体は反りあがり、疾走する快感に細 身が捻れる。
「はふッ・・・はぁぁんんッッ・・・・・・!!」
“感じてる? 感じてるのね、エリ・・・・・・このまま、私が・・・イカせてあげるからね・・・”
たまらなく恥知らずなことを我ながら思う・・・ユリの脳裏で自虐が渦巻く。
イカせるなんてはしたない言葉・・・それも肉親のエリに対して思うなんて。
だが、今のユリはなりふり構っていられなかった。 姉の乳首を舐めるという、狂いそうに恥
かしい行為。それが姉を救う唯一の方法と信じて、ひたすら妹は愛撫を続ける。
パクッと、桃色の唇は小豆の突起を咥えた。
口の中で姉のコリコリに固くなった乳首を転がす。胸の頂点が生温かい粘液に包まれる感覚
に、たまらずエリは声をあげていた。
「ふひゃあああッッッ?!! んはアッ!! ううううッッ〜〜ッッ!!」
自由になった右手を股間に、残る左手を左の乳房にユリは伸ばす。これまでの闘いで刻まれ
た悦楽の手練。肉体が覚えた性の技が、今度は己の手によって姉の身に再現されるのだ。
未発達ながら、ユリの肉体の感度は高い。
特に胸のふたつの頂点と股間の真珠、この3箇所への愛撫が破壊的な快楽を催すことを、
ユリは身をもって体験済みであった。
その複雑で深い官能の三重奏を、無惨な姿に変わり果てた姉に敢行する。
「きゃううううぅぅッッ〜〜〜ッッ?!! んへああッッ・・・ゆ、ユリィィィ・・・?!!」
ムズ痒いまでの焦燥感。背筋を走る切迫した不可思議な感覚の名が、快感であることをエリ
は後に知る。苦痛と汚辱に堕ちていた彼女の意識は、新たな色責めによってハッキリと覚醒し ていた。妹の手による愛撫は優しく、それまでの陵辱の荒々しさとは一線を画していた。まるで 未体験の快感・・・生まれて初めて味わう官能の妙味に、エリの意識は混乱する。
「ゆ、ユリィィィ・・・ひゃめッ・・・やめッッ・・・な、なん・・・でぇぇ・・・??」
「お、お姉ちゃん・・・・・・ごめん・・・ごめんね・・・・・・」
喋りながらもユリの指は乱れることをやめず、赤い舌は桃色の突起に絡まり続ける。
左手は白い乳房をこねながら頂点をつまみ、右手はクレヴァスをなぞりつつ包皮に包まれた
蕾を弄る。優しいゆえに、少女の愛撫はエリに電撃のごとき激しい悦楽を与えた。特に唾液ま みれの舌に舐めあげられる乳首は、全身が突っ張るほどの快楽をもたらす。
思春期真っ只中の美少女姉妹は、脱皮したての蝶にも同じ。柔らかな肉に包まれた剥き出し
の神経を愛撫されるのは、敏感と呼ぶには余りある激しい刺激を少女に与える。オトナの女で は味わえぬ、少女ならではの鋭い快楽に、エリは喘ぐことしか許されない。
「はふうッッ!!・・・へああッッ!!・・・んああッッ!!・・・」
「・・・エ、エリ・・・・・・そんなに・・・気持ちいい・・・・・・の・・・?・・・」
責めるユリの頬がポゥッ、と紅潮する。
自分と同じ顔、同じ身体をした少女が、己の手によって感じ、喘いでいる。
誰よりも大切な姉を辱める、屈辱的な行為。それをしなければならぬ己の無力が悔しいの
に、大好きな姉を悦ばせていることに密かな満足を感じていることを、ユリは漠然と自覚し始め ていた。
“お姉ちゃん・・・・・・そんなに悦んで・・・くれるの・・・・・?・・・”
倒錯した想いに飲まれかけた瞬間、白のビキニに包まれたユリの胸に、2本の手が伸びる。
「あはアアッッ?!!」
「ゆ、ユリ・・・・・・」
舌の動きが止まった間隙を縫って、エリの手は下から妹の乳房に伸びていた。
形が変形するほど強く握り締める。幾度となくイカされ、とっくに搾り尽くされたはずのユリの
体内深くから、愛液がじんわりと滲んだ。伝わってくる厳しさと温かさ。同じ強く握られるのでも、 他人からでは味わえない感覚が、ユリの奥深くに官能の火をつける。
「お、お姉ちゃ・・・・・・」
「ユリ・・・・・・」
姉の掌が、妹の乳房を揉みしだく。
性のことなどまるで知らないエリの愛撫は、巧みな強弱でユリの脳髄を貫く。傍から見れば稚
拙な技巧も、ユリにはたまらない刺激を掘り起こしていた。双子ならではの感覚の一致。パズ ルのピースが合うように、ユリにピッタリの官能の波動を、エリは察知しているのだ。
そしてそれは、逆のことも言えた。
乳首とクリトリスを摘まんでいたユリの指が動きを早める。
ユリの責めもまた、エリの官能のツボにピタリと一致する。経験したことのない未曾有の快楽
の津波。己のものとは思えぬほどに、エリの肉体は捻れ、反り、よがり狂う。クライマックスを迎 えた愛撫に、獣のような鳴き声をエリはあげる。
“お姉ちゃん・・・お姉ちゃんッ!! このまま、このままイッて!!”
姉の嬌声が妹の理性を狂わせる。
屈辱なのか、狂喜なのか、もはやわからない。ただ、姉を昇天させることを目指して、天才柔
術少女の細い指は、白い肌を踊り回る。
「きゃひいいいいぃぃぃッッッ?!!」
今度の絶叫は、ユリの唇から洩れた。
責めに終始して疎かになった肉体に、姉の反撃の悦手が襲いかかっていた。
コチコチに固く尖った右の乳首と、男でいうならば勃起状態となったクリトリスを可憐な指が摘
まみ、90度に折り曲げている。痛みと、そして快感と。不意に降りかかった姉の責め手に、ユ リの背中がビクンと弓なりに反りあがる。
肉親による愛撫は、ユリの全身を稲妻に打たれたように痺れさせ、一心に行っていた奉仕の
動きを止めさせる。攻守交代。一瞬にして、責める側は、責められる側へと立場を変えてい た。貫く官能に小刻みに震える瑞々しいモデル体型に、姉の逆襲が始まる。
股間の突起を摘まんでいた指の残りが、水着を通して浮びあがった秘裂に挿し込まれる。
白のビキニの上からでもハッキリとわかる尖った乳頭を、今度は姉が口に含む。生温かな粘
液は、懐かしさすら感じさせるほどに心地良い。もう一方の先端は、2本の指に挟まれて弄ば れている。先程まで仕掛けていた3点責めを逆にかけられ、いまだ媚薬の残る幼い肢体は、尽 きない火照りと滴りに占められていく。
「うひゃあああぅぅぅッッッ〜〜〜ッッ!! ひゃッ、やめッ・・・お姉ちゃんんんッッ〜〜・・・・・・
ひゃめへえェェェッッッ〜〜ッッッ!!」
姉の逆襲はユリにとっては予想外の何モノでもない。
己の手により乱れるエリの姿は予想していたが、まさかその姉が仕返しをしてくるなど、想像
だにしなかった。色責めとはいえ、攻撃を受けることに、武道家の血が反応し逆襲に転じたの か?
それともまさか・・・妹の愛撫に溺れるあまり、色欲に捕らわれ本能の赴くがままに反応してし
まったのか?
いずれにせよエリの反撃は、ユリにとっては不都合でしかなかった。散々陵辱された身体の
疼きが再燃するだけでなく、姉を助けるという本来の目的が達せられなくなってしまう。
「あふうッッ・・・んんんあああッッ・・・やめッ・・・てェェ〜〜ッッ・・・・・・お姉ちゃぁぁぁん
ん・・・・・・お願いィッ・・・だからああ・・・はあアぁぁッッ!!」
「ゆ、ユリ・・・・・・私が・・・堕としてあげるから・・・・・・」
潤んだ瞳と桃色に上気した頬でエリが言う。
女としての芯から火照っている表情。明らかに官能に飲まれたエリの目的が、妹の昇天にあ
ることはもはや明白であった。
されるがままに嬲られているユリの肢体が、下の姉に覆い被さっていく。
妹戦士の必死の抵抗であった。心のどこかで姉による愛ある嬲りに果てることを望みながら
も、その姉を救うために玉砕覚悟の反撃を試みる。
エリに覆い被さるユリ。抱き合う形になった美少女姉妹は、互いの美乳の先端をピタリとくっ
つけて、肢体を揺らして擦りつけ合う。
「んんんひゃああああッッッ〜〜〜〜ッッッ!!!」
「くひゅううううううぅぅぅッッッ〜〜〜〜ッッッ!!!」
責めるも極楽、受けるも極楽。
どちらがどちらを責めてるかも、感じているのは責め手か受け手かもわからぬ、心中愛撫。
上下対称な2組の乳房が、グニャグニャと変形し、互いの頂点を摩擦し合う。同じ官能の波
長を持つ青い果実が、互いを犠牲にしあって責め合っている。かけがえのない存在が己の手 によって喘ぎ、官能に歪んだ顔を目前に見せている。かけがえのない存在によって喘がされ、 官能に歪んだ己の顔を見られている。悶える姉妹の姿に興奮する自分がいて、悶える自分に 興奮する姉妹の姿がある・・・劣情のハウリング効果。際限なく増大する火照りに、武道姉妹の 内圧が爆発しそうに高まっていく。
“お姉ちゃんんんッッッ!!! イッて! お願いィィィッッ、イッてェェッ!!”
ギュルリと上にあるユリの身体が回転する。
頭とつま先の位置を、瞬時に逆さまに変えたユリ。グリーンの水着に包まれた股間にユリの
頭が、白い水着に包まれたクレヴァスにエリの頭が近寄る。
じっとりとすでに濡れ湿った股間の食い込みに、姉妹は同時に赤い舌を突き入れた。
「ッッッ〜〜〜〜ッッッ!!! んんんんッッッ―――ッッッ!!!」
ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃ・・・
ビクビクと痙攣する全身に構わず、相手の秘裂を舐め上げる武道姉妹。
子犬の舌が激しく上下する。脊髄を貫く桃色の衝撃に細胞を染められつつも、眼前の敵を滅
ぼすかの勢いで、全身全霊を込めた愛撫を相手に送り合う。
「これは素晴らしいッ!! 美少女姉妹の69とはッ!」
「ハハハハハッッ!! これぞホントの姉妹愛だな!」
“おッ・・・お姉ちゃあああぁぁぁッッ―――ッッッんんんッッ!!!!”
「ひゃああああああああッッッ―――ッッッ・・・・・・」
絶叫の迸りは、姉妹同時に出た。
上の少女も下の少女も三日月のごとく反りあがる。
ビクビクッッと全身を震わせたかと思うと、姉妹の股間から白い噴水が水着を割って噴き出し
た。
互いの聖水が、愛する姉妹の顔面を濡らす。白い湯気が、もうもうとたちこめる。
ビチャビチャビチャビチャ・・・
飛沫が床に撥ねあがる音が途絶えたとき、ドシャリという落下音とともに、美少女姉妹の肉体
は重なり合って、広いベッドに突っ伏していた。
「フン・・・残念だったな、西条エリ。妹をイカせたら、ユリの命は助けてやる約束だったが・・・
お前もイッてしまったのなら不合格だ」
「フハハハ、そういうことだ、ユリ。貴様も不合格だ」
騙されたことを悟った姉妹の瞳から、スゥッと涙がこぼれる。
だが、もはや濁った瞳には、なにも映っていないかのようだった。
長い睫毛をつけた目蓋が、ゆっくり、ゆっくりと閉じられていく。
完全に瞳を閉じたとき、双子の柔術姉妹は、ついに動かなくなった。
「終わったな、西条姉妹」
満足げに唇の端を吊り上げる兵頭英悟を、片手をあげて久慈が制す。
「まだだ。西条ユリは仕留めても、ファントムガール・ユリアは殺してはいない」
数時間前には宿っていた脅えの光を消し去った久慈の両眼が、不敵さを取り戻して三日月
に歪む。
「シェル、そしてクトル。ファントムガール・ユリアを、人類の目の前で八つ裂きにしてくるがい
い」
ぐったりと脱力したおさげ髪の少女を、両脇からハゲ中年と凶悪な格闘家が抱え起こす。
涎と愛液とローションとに濡れた白い妖精は、瞳を閉じ、口を半開きにした惨めな姿のまま、
ズルズルと魔宴が終わったホテルの一室から運び出されていった。
巨大な守護天使を待ちうける、処刑場へと。
「ふ〜ん、里美さん、最後の『エデン』、使う気ないんだ・・・」
真夏の照りつける陽射しを満身に浴びながら、藤木七菜江は両手を突き上げて伸びをする。
痛めた脇腹がピリピリと痺れるが、それ以上に空調の効いた室内で窓越しに浴びる日光は心 地良かった。
五十嵐邸の2階に与えられた、七菜江専用の個室。ひとりで使うには広すぎる感のある部屋
には、この家の居候ふたりが揃っていた。
ショートカットが活発そうな印象を与える少女は窓際に立ち、茶髪のセミロングが鮮やかな少
女はベッド脇の椅子に座っている。
夏休み真っ只中の暑い昼下がり。
本来なら、ギラつく太陽のもと、部活動のハンドボールに汗を流しているはずの少女が、快適
である邸宅内に留まっているのにはワケがあった。
文字通り、人間離れした回復力を誇る『エデン』の寄生者たち。そのなかでもずば抜けたタフ
ネスの持ち主である七菜江をしても、3桁を数える体重の怪物たちに圧殺された肉体のダメー ジは、簡単には拭い切れなかった。根っからのスポーツ少女は眼を離すとすぐにぴょこぴょこ 動いているが、凄惨な拷問を受けた爪跡は奥深い。あまり自覚のない本人を、半ば強制的に ベッドに縛り付けておくのが、今の桜宮桃子の役割であった。
ベッドの隣に位置する丸椅子に腰掛け、ショリショリとりんごの皮を剥いている美貌の少女
は、さらりとした口調で応える。
「まあね。一応、口ではそう言ってたけどねぇ」
「一応・・・って?」
「んと・・・・・・あは、できた♪」
親友の質問には答えず、桃子は完成したばかりの、うさぎの形をしたりんごをフォークに刺し
て七菜江に見せる。
「どう? かわいくない?」
大きな瞳を弓なりにして、美少女は輝くような笑顔を浮かべる。
どんな男でも骨抜きにされるであろう、天使の笑顔。自ら発光していると勘違いしそうなほど、
桃子の会心の笑顔は眩しい。惜しむらくは、見せた相手が同性であることだった。
スタスタと桃子の鼻先にまで歩み寄った七菜江は、憮然とした様子を隠しもせずに、パクン!
とうさぎさんを一飲みにする。
「ああ?! なにすんのよォ!」
「にゃにって、あたひに食べさへるために剥いたんれしょ?!」
「やっとうまくできたのにィ! 今度『たけのこ園』のみんなに見せてあげようと思って練習して
たんだよォ!」
『たけのこ園』とは、知能障害のある児童を集めた施設のことで、福祉の道を目指している桃
子が、夏休みを利用して通っているバイト先であった。バイトとはいっても、ボランティアに近い 扱いのため、報酬はごくわずかであったが、そこに目的はない桃子は喜んで通っている。週に 3日いくそのバイトの日以外は、こうして七菜江の看病というか、監視をするのが彼女の夏休 みの日課となっていた。
「んなことより、一応ってどういうことなの? おひえてよ」
まだ口の中をもごもごさせている猫顔の少女に、口を尖らせつつもエスパー少女は言う。
「べつに。ただなんとなく、ホントにそう思ってるかな? って思っただけ」
「嘘かもしれない、ってこと?」
超能力を持つこの少女が、やたらと勘が鋭いことを七菜江は知っている。
「あくまで勘だよ。エリちゃんに『エデン』を寄生させたくない、って気持ちはわかるし、そこは
ホントなんだろうけど・・・なんか引っ掛かるんだよねぇ」
昨夜遅く、作戦室で交わした桃子と五十嵐里美との会話が、いまのふたりの話題の中心であ
った。
西条エリに『エデン』を渡さない理由を、ファントムガールのリーダーである里美は、不幸にし
たくないから、と言った。
そしてもうひとつ。もう誰にも『エデン』を寄生させるつもりはない、と。
その場は納得した姿勢を見せた桃子だが、彼女の心のどこかに引っ掛かった棘がある。
里美の言葉を飲み込もうとするのを、チクチクと突き刺さって阻害する棘。小魚の骨のごとく
咽喉の奥に刺さった棘は、一夜明けた今日、さらに痛みを増して、ズキズキと桃子の脳に存在 を訴えてくる。
「なんか他にも、エリちゃんをファントムガールにさせない理由があるような気がするんだよ
ね。もう誰にも『エデン』を寄生させない、っていうのも、なんかね・・・」
「・・・モモはそのとき、その・・・吼介先輩のことも・・・聞いたんだよね?」
恐る恐るといった様子で、ショートカットの少女は尋ねる。りんごを頬張っていたときの明るさ
は霧散し、真剣なこわばりがチャーミングな容貌いっぱいに広がっていた。
「ううん。直接は聞いてないよ。それとなくは仄めかしたけど」
「やっぱり里美さん、最後の『エデン』を吼介先輩に渡すつもりは・・・ないのかな・・・?」
5人目の仲間である桃子が戦列に加わって以来、それとなく気になっていることがあった。
特に意識してはいなかったが、澱のように胸の奥底に沈んでいる不確かな疑問。七菜江だけ
ではない、恐らく他のメンバーも、なんとなく気になっていたに違いない疑問の念。
五十嵐家が所有する最後の『エデン』。
その活用法について、里美がなにも言わなくなった。仲間を増やすことができる、重要な切り
札であるはずなのに。
大量に『エデン』を保有している久慈らに対して、五十嵐家、ひいては日本政府が手中にして
いる謎の宇宙生命体は、あとたったひとつしかないのだ。
戦闘能力に優れ、正のエネルギーを強く持つ者を味方に引き入れるのは、人類の未来を背
負うといっても過言ではない巨大な闘いの勝敗を左右する重要事項であることは、疑う余地の ないことだった。一刻もはやく、最後の戦士を見つけることは、リーダーである里美の大切な役 目であるはずなのだ。
それが5人の少女戦士が揃って以来、話題のかけらにすら昇らなくなった。いや、正しくは、
『エデン』が残りひとつになって以来というべきか。
確かに『エデン』を寄生するのは、あまりに大きな代償を必要とする。戦力が揃ったと判断し
た里美が、これ以上の“犠牲者”を増やさぬよう、最後の『エデン』を封印したというのもわから ぬではない。
だが、生まれ持った使命に従い、己の人生全てをこの闘いに捧げている里美が、輝かしい未
来が待っているはずの4人の少女を、断腸の思いで巻き込んだ里美が、本当にそのような理 由で切り札の行使を放棄するだろうか。
五十嵐里美が『エデン』をとっておくのには、きっと他の理由がある。
そう、例えば。
最後の『エデン』を、最強と呼ばれる格闘獣のためにとってあると考えても、決しておかしくは
ないだろう。
「・・・ねえ、モモ、正直に言って欲しいんだけど・・・」
神妙な顔つきになった元気少女が、真っ直ぐな瞳を桃子に突き刺す。
可憐でいて、どこか哀しげな顔。
美貌という言葉がこれほどまでに似合う者はいまいエスパー少女は、普段は快活な友が見
せる別の顔に、不覚にもドキリとしてしまう。
「里美さんの反応を見たとき、どう思った?」
「ど、どうって?」
「ホントに吼介先輩に、『エデン』を渡すつもりはないと思う?」
桃子の厚めの唇が、キュッと強めに閉じられる。
押し黙るとつめたく感じられるのは、桃子の美貌がいかに整っているかの証明だった。エス
パー少女の頭のなかで、さまざまな思いが高速で回転していた。七菜江につられるように、桃 子の顔もまた、真剣な光を帯びていく。
「わかんないよ・・・あたしのは、単なる勘だから・・・」
「その勘が聞きたいの」
里美の冷静な状況判断よりも、夕子の合理的な思考よりも、時として、桃子の直感の方が何
倍も正解に近いことがあるのを、七菜江は知っている。
しばしの沈黙の後、大人の芳醇さすら漂わせる赤い唇を、桃子はゆっくり動かした。
「正直にいうと、里美さんは多分、吼介に『エデン』を」
「想像で気持ちを判断されるのは、あまり嬉しくないな」
突然沸いた3つ目の声に、虚を突かれた桃子の台詞は途切れた。
ビクンと肩を震わせたふたりの少女が、風切る素早さで、丸い瞳を部屋の扉に向ける。
いつの間に、入ってきたのか。
閉じられた入り口の前、軽く腕を胸の前で組んだ五十嵐里美が、苦笑とも取れる表情を浮か
べて立っている。
「さ、里美さん・・・」
「ゴメンね、ナナちゃん。ノックもせずに入ってしまって」
すす・・・と固まった少女ふたりに、この家の令嬢は歩み寄る。
話に夢中になり、里美が入室するのに気付かなかった・・・わけがない。七菜江も桃子も、未
熟とはいえ『エデン』を宿した戦士なのだ。気配には人一倍敏感であり、多少なりとも音がする ドアの開閉を聞き逃すとは思えない。
故意に気配を消して、入ってきたのだ。
現代くノ一の頭領ともいうべき里美にとれば、侵入の類は得意中の得意分野。だが、それを
仲間に対しても平然としてしまうのが、ファントムガールのリーダーの底深さを知らせる。
思惑通りに桃子の口を閉じさせるのに成功した里美は、すかさず次なる言葉を紡いだ。
「どうやら本当のことを言った方がいいみたいね。妙な勘繰りをされないためにも」
「え・・・?」
「エリちゃんをファントムガールにしないのは、ユリちゃんに頼まれているからよ」
明かされる真実に、七菜江と桃子の瞳がさらに大きく見開かれる。
「エリちゃんはユリちゃんを闘わせないためにファントムガールになりたがっているけど、逆に
ユリちゃんはエリちゃんを闘わせたくないと思っている。あのふたりらしい話でしょ」
一見当たり前で、姉妹愛に溢れた西条姉妹にはもっともな話。
だが、しばしの沈黙の後、ある疑問に気付いたのは、ショートカットのアスリート少女であっ
た。
「でも・・・“許可”を出せるのはエリちゃんだけだから、『エデン』がなくても襲われる可能性は
高いんでしょ? だったら、エリちゃんをファントムガールにした方が、安全なんじゃないのか な・・・」
「あ、そうか。結局闘いに巻き込まれちゃうんだから、エリちゃんのことを考えたら、『エデン』
をあげた方がいいかもしんない」
不安そうな七菜江と同調する桃子。
変身少女たちのなかでも、直感で動くタイプのふたりに、里美は静かな口調で西条ユリの想
いを説明する。
「エリちゃんがファントムガールになりたがってるのは、普段本気を出せないユリちゃんに闘っ
て欲しくないため、ということは知ってるわね?」
コクリと美少女ふたりは同時に頷く。
「だったら、もしエリちゃんがファントムガールになったら、危険な闘いに向うよう、妹に“許可”
を出すと思う?」
「・・・出さないと思う」
「ユリちゃんはお姉さんが本当は“許可”を出したくないことを知っているのよ。エリちゃんがフ
ァントムガールになりたがるのは、ユリちゃんの代わりに闘うつもりだから。もし『エデン』を寄生 したなら、二度とユリちゃんに“許可”は出さないでしょう。たとえ・・・自分が闘いで命を落とすこ とがあっても、妹だけは生き残るように」
大切で、大好きな妹だから。
そして、想気流柔術の正統な後継者だから。
「そのお姉さんの想いを悟っているから、ユリちゃんは『エデン』をエリちゃんには渡したくない
の。自分の身代わりになって欲しくないから」
できる限り淡々とした口調で、五十嵐里美は双子の武道姉妹が秘めた想いを話す。
互いを愛し、互いを守ろうとする姉妹。
宇宙から落下した『エデン』が巣食うという偶然が、妹を選んだ現状がある以上、もうひとりの
少女を敢えて不幸にする必要がどこにあるというのか。
哀しく美しい、武道姉妹の物語。
たまらずに切なげな表情を露わにする純粋な少女たちに、悲しみを断ち切るように強い口調
で里美は言った。
「だから、エリちゃんには『エデン』は寄生させない。もうこれ以上、あのコたちが不幸になる
必要は、ないの」
ぬるめのシャワーの温度が、火照った肌に心地いい。
引き締まった豹のごとき体躯に水の粒が流れていく。天才と呼ばれる柔術少女を、先程まで
さんざん弄んでいたシャワールームのなかに、久慈仁紀はいた。
久しぶりに感じる開放感。
餓えていた心を満たす、充足感が確かに感じられる。
あの、生涯忘れ得ないであろう敗北の日以来、暗黒に閉ざされていた心に、復活の光が射し
こんでいる。
負けたことが、ないとは言わない。
学校でのスポーツや、勉学など。柳生新陰流の修行時代には、幾度となく苦杯を舐めさせら
れた。五十嵐里美にはいろいろな面で負けを自覚させられたし、ファントムガール・ナナに不覚 を取ったこともある。
だが、違うのだ。
それらの負けとは決定的になにかが違う敗北。
全存在を否定されたような破滅的な敗北を、あの筋肉の鎧を着た格闘獣は味あわせてくれ
た。
崩壊した肉体が治るまでの間、ろくな意識もないまま、悪夢に苛まれ続けた日々。自分が何
をしているかもわからない夢遊病者の状態のなか、恐怖に震えた暗黒の時間。
1度この手で地獄に送った少女を、再度嬲る快感が、久慈をようやく暗闇から脱け出させよう
としている。
「あとは・・・あの姉を、切り刻んで完成とするか・・・」
ファントムガール・ユリアに変身する少女は、多くの人類に公開して処刑するよう、指示を出し
た。
手許に残った少女は、ユリアを本気にさせることのできる唯一の人物。もう用はなくなった同
じ顔をした双子の姉を、愛刀のサビにしてナマスに切れば、きっと心の闇は完全に晴れること だろう。
そしてそのときこそ、魔人メフェレスの完全なる復活が果たせるのだ。
柔らかなバスタオルで全身の水滴を拭き取る。
シャワールームを出た痩身の美男子は、上半身裸の姿で、広いベッドに縛りつけたままの西
条エリの元に向う。
幼い肉体をさらに貪るか、それとも絶叫のなか、鋭い刃先で切り刻んでやるか・・・
「??!」
どす黒い欲望に囚われた久慈の意識が、一気に現実に引き戻される。
ベッドに四肢を縛り付けておいたはずの、西条エリの姿がない。
逃げた? いや、そんなはずがない。いくら柔術の達人であろうと、あれほどきつく束縛され
て脱出できるはずはない。となると・・・
「うおおおおッ!!」
背後から沸き起こる蛮声。
大上段に構えた日本刀が躊躇なく、細身の男に振り下ろされる。
風を裂いて一文字に振り落とされた刀は、すんでのところで身を捩った背中にかすることなく
通り過ぎる。
「ちッ、畜生ッ!」
悔恨の呟きを背に受け、久慈仁紀は5mを跳躍してから襲撃者を振り返る。
「キサマ・・・兼子とかいう奴だな」
総合格闘技ジム「アタック」の総帥・兵頭英悟を裏切った少年は、日焼けした顔に冷たい汗を
浮かべて、久慈の愛刀を右手に構えていた。
「てめえの武器を手放して呑気にシャワーとは、油断が過ぎるんじゃねえか、おい!」
己を鼓舞するかのように、兼子賢児は獅子のごとく咆哮する。
水着姿の美少女が、ワゴン車に磔にされたままあるホテルに連れ込まれたという報せは、兼
子の耳にほとんどタイムラグなく伝えられた。
武道姉妹を街中に晒して辱めるというアイデアは、田所教諭の姦計であったが、結果的にそ
の悪行は少女たちの助けに働いたのだ。
場所はわかっているのだから、救出はさほど難しい問題ではない。ただ、限りない勇気と行
動力があれば。
よくは事情を察していないホテルの従業員を脅して鍵を奪うと、兼子は一息に目的の部屋へ
急いだ。見たこともない豪華な調度品が並ぶVIPルームの一角、広いダブルベッドの上に、グ リーンの水着を身につけた少女は大の字で拘束されていた。
「死にたくなけりゃ、とっととそこをどけ! オレはマジだからな!」
「この・・・蛆虫が・・・身の程もわきまえずに・・・」
唾を飛ばして興奮する兼子と、氷のような視線を向ける久慈。
真剣を手にした兼子と武器を奪われた久慈。情勢は明らかに久慈不利なはずなのに、脅え
ている己を兼子賢児は自覚する。
「返せ。それは貴様ごときが、持っていいものではない」
「こォのッッ!! 死にやがれェェェッッッ!!!」
せいぜい不良少年の域を出ない兼子が、眼を血走らせて殺到する。振りかぶった刀が、久
慈の頭頂目掛けて振り落とされる。
ガシイイッッッ!!
兼子の右手首は、涼しい顔で進み出た久慈の左手に片手で掴まれていた。
「ぐッ・・・ううッッ・・・」
180cmを越える長身の兼子が全力を振り絞っているのに、右手はピクリとも動かない。サイ
ズは明らかに見劣りする久慈によって、総合格闘技を習う少年の腕力は完全に封じられてしま っている。
顔色ひとつ変えない久慈の左手が、万力のようにギリギリと締め付けてくる。手首に指が食
い込んでいく様を、兼子は恐怖の眼で見詰めるしかない。
ゴキン
嫌な音が室内に響き、兼子の右手首は90度に折れ曲がった。
引き攣るような絶叫がこだまし、少年の手からポトリと日本刀が床に落ちる。
「フン、クズが・・・」
メキメキメキイッッッ・・・!!
折れたとしか思えぬ右手首を、さらに闇の王は捻りあげていく。
体験したことのない苦痛に、恥もなく兼子少年は泣き叫んだ。
「ぎゃあああああッッッ・・・!!! やめろオオオッッッ!!! やめてくれえええッッッ―――
ッッッ!!!」
「ククク・・・お仕置きだ。クズに不相応なことをするとどうなるか、思い知るがいい」
激痛に引き攣るしかない兼子の眼に、久慈は余った右手を伸ばす。
眼球を抉り出すつもりなのか。
魔人の恐るべき意志を察知し、不良少年は狂ったように泣き喚く。
「させません!」
可憐な声が裂帛の気合を込めると同時に、久慈は膝から下をダルマ落としの要領で薙ぎ払
われた、奇妙な感覚に囚われる。
強烈な足払い。
独楽のように空中で回転した痩身が頭から床に落ちていく。並の者なら、そこで頭部をしたた
かに打って、二度と立てなかったであろう。しかし、久慈仁紀は並の範疇には収まらなかった。
回転の勢いを利用し肩から落ちた魔人は、猫のようにしなやかな動きで回転しながら何事も
なかったように立ち上がる。しかも、床の愛刀を右手に掴みながら。その一連の動作がコンマ 何秒で完成される。
「西条・・・エリ・・・」
立ちあがりざま、斬りつけようとした久慈の右腕は止まっていた。
背中に兼子賢児をかばって、西条エリは十分な距離を置いて構えている。不意打ちに対応し
た久慈も怪物なら、その久慈の動作を予見していたエリもまた怪物。並の存在を外れた達人 同士が、臨戦体制に入ったまま、互いに鋭い視線を送る。
「で・・・出てきちゃダメだ・・・・・・」
右手首を押さえつつ、震える声で兼子が言う。尋常でない汗の量が、彼を襲う苦痛の激しさ
を教える。
「兼子さん・・・ここは・・・・・・私に・・・任せてください・・・・・・」
構える武道少女の肩が、ブルブルと小刻みに揺れている。
破壊の皇帝と称される悪魔に殴られ続け、拷問機械の電流責めに昇天し、妹の愛撫に果て
たエリ。その後に訪れた静寂のなかで、幾分体力を回復したとはいえ、体調が万全でないの は、誰の目にも明らかだ。だが、それでも柔術少女は、己を地獄に堕とした悪魔と対峙しなけ ればならない。
“ユ、ユリ・・・・・・・私が・・・助けに・・・いかないと・・・・・・”
本気をだせない妹が連れ去られるのを、姉は薄れる意識のなかで覚えていた。
信頼できるファントムガールの仲間たちは、遥か遠い地にいる。なにより、世界で唯一ユリを
本気にさせることができるのは、自分だけなのだ。
「貴様のような半死人が、このオレに歯向うだと・・・? しかも、『エデン』も持たぬ、妹より弱
い貴様が?」
カチャリ、という真剣を握りなおす音。
エリが向ってくるのは、久慈にとっても好都合であった。動けない獲物を嬲り殺すより、闘い
のなかで仕留める方が楽しいというものだ。そしてまたその方が、己の復活には役立つに違い ない。
素手の西条エリと、刀を手にした久慈仁紀。
想気流柔術の達人と、柳生新陰流の達人。だが、一方は戦闘力を大幅にあげる『エデン』を
持ち、一方は立つことすらやっとの体力しか残されていない状況。
圧倒的不利に置かされて尚、エリの瞳に諦めの光はない。
「や、やめろ・・・相手は刀だ・・・今のお前が勝てる相手じゃ・・・ない・・・」
背中越しに届く、苦しげななかに愛しさを秘めた声。
だが、当然の判断とも言える兼子の忠告に、エリは毅然とした口調で答える。
「・・・大丈夫、です・・・・・・想気流には・・・打撃もあります・・・」
敵が刀である以上、勝負は一瞬。
柔術少女が選んだのは、一撃で決着をつけられる、打撃技であった。
ニヤリと久慈の薄い唇が吊り上がる。
この男は知っていた。エリが打撃でこようが、組み技でこようが、まず間違いなく愛刀の刃は
柔肌を断つであろうことを。
そして、エリ自身もまた。
“腕の一本無くしても・・・いえ、お腹を刺されたって構わない・・・ただ、ユリの元に向うまでの
命があれば・・・”
悲壮な決意を秘めた少女と、余裕ある魔人との間に緊張感が高まっていく。
一撃。一瞬で勝負は決まる。
痩身の体躯が地を這うか、人形のような顔が宙を飛ぶか。
仕掛けたのは、エリ。
右の掌を広げた美少女が、真っ直ぐに突っ込んでくる。
全ては久慈の、思惑通りであった。
後の先、つまり仕掛けてくる相手にカウンターを合わせるのが想気流の真髄。
だが、立っているだけで体力を削られていく状況のなか、エリには待つ時間はなかった。本領
を発揮できず、仕掛けざるを得ない柔術少女に、逆にカウンターを合わせて斬り倒す。思い描 いたシナリオ通りの展開に、久慈に巣食う悪魔が微笑む。
「死ねッ、西条エリッッ!!」
細い首に、真剣の刃先が飛ぶ。
死を賭した少女にひるむ様子はない。真っ直ぐに突っ込んだ右掌が、引き締まった胸の中央
へ。
首に迫る刃と、胸に伸びる掌。タイミングは同時――いや、久慈が上回っているか。
「うおおおおおおッッ?!!」
絶叫したのは、魔人と呼ばれた男だった。
間違いなく斬首できたと思われる日本刀を放り投げ、久慈は恐怖の表情で、胸に触れんとす
るエリの手首を両手で掴んでいた。
その野犬のような瞳が見詰めるものは。
ビルの地下室で、プライドごと粉砕された、巨大な格闘獣の拳。
「想気流柔術奥義・無撃ッッ!!」
全てを賭けた決死の一打、発動―――
「ッッ??!」
手首を握った久慈の全身がガクガクと崩れる。
まるで魔法のような不思議な光景。骨格を抜き取られたような、糸の切れた操り人形のよう
な。つま先から頭頂まで、全身の力が抜けたことを示して、剣の達人が無様に崩れ落ちてい く。
味わったことのない、奇妙な体験であった。
全力で押し合っていた相手が急に消滅したような、たたらを踏むあの感じ。あの感覚が、「手
首を握る」という行為の最中に現れたのだ。
あらゆる筋肉が、ベクトルを失って無秩序に奔走する。
結果、久慈の肉体が陥った現象は「全くの無防備」。
ドンンンンンンッッッ!!!!
武道少女の掌から、背中に突き抜けていく衝撃。
“無”の状態になった久慈の胸を、全身の筋力をうねりと化して放った一撃が貫く。
「ガハアアッッッ!!!」
薄い唇から、鮮血が迸る。
グラリと大きく仰け反る研ぎ澄まされた肉体。必死に倒れるのを堪えた久慈の身体は、ヨロヨ
ロと壁際までの数mを後退していく。
「やっ・・・・・・た・・・・・・」
電池の切れたおもちゃのように、セミロングの少女が膝から崩れ落ちる。
倒れ伏せる瞬間、左腕で抱えて阻止したのは、日焼けした少年であった。
「よし、逃げるぞ!!」
軽量の武道少女を抱え、兼子賢児は凄惨な拷問が繰り広げられたVIPルームから風を巻い
て脱出する。
ドン
シャープな肉体が壁にもたれながら、ずるずると崩れ落ちる。尻餅をついた軽い音が、誰も
いなくなった室内に響いた。
「・・・おのれ・・・おのれ・・・おのれエエエェェェ〜〜〜ッッッ!!!!」
怪鳥のごとき絶叫が、ホテルの一角を揺るがした。
夕闇が迫る海岸に、一台のワゴン車が白砂をあげて乗りつける。
観光地伊豆の夏の海辺というのに、海水浴に訪れた観光客の姿は全く見当たらない。昨
夜、関東地方に初めて現れた巨大生物と光の女神。その闘いの後遺症で、海岸は封鎖され、 ただ地元の旅館経営者などが、時折様子を覗きにくるだけであった。
昨日の昼までは、想気流柔術の門下生たちが合宿を開いていた白い浜辺。
深いタイヤの跡を残して侵入してきたワゴン者から、白い物体が放り出される。
ドシャリッッ・・・・・・
砂煙が舞いあがる。
ゴロゴロと砂浜を転がる物体は、白のビキニに身を包んだ、華奢な少女が正体であった。
「うぅぅッ・・・・・・あッ・・・・・はぁッ・・・・・・」
砂地を4回転してようやく俯けの姿勢で止まった西条ユリの口から、かすかな苦鳴が洩れる。
心身ともに悪魔のコールタールに沈められてしまったような、儚げな武道美少女は、己の無
力を知らしめるように大の字のまま、ピクリとも動かない。ただ途絶えることのない苦痛の呻き が、少女の生存を教えていた。
ワゴン車から降りてきたふたりの男が、砂浜に伏せる白い妖精に近付いていく。
兵頭英悟が履くぶ厚い底のブーツが、襟足でふたつに縛った黒髪をグリグリと踏み躙る。
「ウアアッッ・・・・・・アアッッ・・・・・・!!」
「修行の地で処刑されるのも、乙なものだろう、西条ユリ?」
柔らかな砂浜に、小動物のような愛くるしいマスクが、ズブズブと埋まっていく。
頭の半分近くが埋まったところで、「皇帝」と称される総合格闘技の猛者は、ユリの顔を引き
抜いた。
「ガハアッッ!!・・・ハアッ・・・ハアッ・・・ハアッ・・・」
「さあ、ユリアに変身しろ」
「ユリくん、君に勝機は万に1つもありません。せめて闘う姿勢を見せて、華々しく散ったらどう
です?」
臭い息を吹きかけながら、しゃがみこんだ淫欲教師が這いつくばる少女の鼻先で言う。
敵の狙いがファントムガールになった姿での処刑にあることは、ユリも重々承知している。久
慈仁紀が唱えている世界征服のためには、邪魔者である守護天使たちは人類の目の前で公 開処刑する必要があるのだ。だからこそ、ホテルの一室でいつでも始末できたはずのユリを、 ここまで生かしているのだ。
変身すれば相手の思うがまま。
そして、そのときこそ西条ユリ、いや、ファントムガール・ユリアの最期のとき―――
「うーむ、どうやら変身したくないようですねぇ」
「ならばせざるを得ないようにしてやるまでだ」
拳頭が尖った凶悪な拳を、兵頭英悟は白い水着の背中に振り落とす。
光るような滑らかな肌に、核弾頭のごとき剛打が埋まる。
「ゴハアアッッッ!!!」
折れ曲がらんばかりに仰け反った美少女の口から、血塊が弾ける。
背骨を砕かれたかのような苦痛。ビクビクと震えるユリの鳩尾に、追撃の豪腕が突き刺さる。
胃の腑を突き破られそうなボディーブローに、ビチャビチャと吐血の残滓がこぼれ出る。
「ガハアアッッッ!!!・・・・・・アアッッ・・・ゴブッ・・・あああ・・・・・」
胸元を血で染めた武道少女が、破壊の拳の隙間からずれ落ち、砂煙をあげながら海岸に倒
れこむ。
拷問と陵辱の果てに、ボロキレと化してしまった儚い少女闘士を、破壊の「皇帝」と淫獣教師
は、生ゴミを扱うように蹴り飛ばす。
ゴス! ガシ! ドス! ボコ! ドボ! バキ!
「チ・・・しぶとい奴め。このまま殺してしまおうか」
兵頭の言葉が、うつ伏せで倒れこむ少女に吐き捨てられる。
透明感ある雪肌も、爽やかな白い水着も、砂と泥で汚され、血と痣で変色していた。闘いとは
いえない、単なるリンチ。内気で繊細で大人しい、あどけなさを残した少女は、抵抗の素振りす ら見せずに、2匹の獣の足元に転がるのみ。
「兵頭くん、そう短絡的に考えるもんじゃありませんよ。ユリアくんを出現させるのは、それほ
ど難しいことではありません」
薄い唇を吊り上げた田所教諭が、黒い霧に溶けていくのを見たとき、兵頭英悟は変態中年
の作戦を理解した。
「なるほど、それなら変身せざるを得ないな」
台詞が終わるより早く、総合格闘技の使い手の肉体もまた、黒い霧となって蒸発していく。
「キュオオオオオオオオッッッ――――ッッッ!!!」
天をつんざく巨大生物の鳴き声が轟いたのは、それから30秒と経たない間のことだった。
伊豆の海岸に、昨日現れたヤドカリの怪物が、再び姿を現している。
昨夜との違いは、山間ではなく海岸に場所が変わったことと、隣にもう一匹の巨大生物がい
ること。
濃緑のヘドロに覆われた、8本の足を持つタコの魔獣。
一ヶ月ほど前、地方都市を壊滅状態に陥れた醜悪な化け物が、遠く離れたこの伊豆で、ヤド
カリ巨獣と並び立って復活を遂げたのだ。
「・・・う・・・・・・あぁ・・・・・・」
誰もいない海辺で、アニメのような可愛らしい声が、苦悶に揺れた調子で流れてくる。
誘っている。変身せねば、街を破壊すると。
守護天使としての使命と弱み。この温泉観光地の平和を守るためには、闘わざるを得ない
少女戦士の宿命を逆手に、悪魔たちが処刑の地にユリを誘っている。
四つん這いになったおさげ髪の少女の真下に、ポトポトと血の滴が落ちていく。
白い肩がブルブルと震えている。昨夜の激闘のダメージ。ホテルでの拷問と終わることない
陵辱地獄。惨殺された前回の記憶。そして、本気になることを封じられた状況。
全てがユリの耳に囁き掛けてくる。忠告を繰り返してくる。
よくわかっている、よく理解しているはずの内容を―――
“変身すれば・・・・・・死ぬ―――”
ガクガクと揺れる両足を踏ん張り、武道少女は立ち上がっていた。
「トランス・・・・・・フォーム・・・」
鈴のような声がつぶやくと同時、華奢な美少女の姿は、眩い光に包まれた。
いつからだろう? 姉に勝てるかも、と思うようになったのは。
小さいころから、一緒のふたり。顔も性格も行動までもそっくりで。
双子として同じように育てられたふたり。時として姉であり、時として友人であった存在は、一
緒のはずなのにどこか遠くて眩しくて。
気がつけば、いつも姉の後を歩いていた。
なにをやっても敵わない、きっとこの関係はずっと続くんだと思っていたのに。
もしかして、私の方が強いのかも。
中学生になったころから、どこかでぼんやりと気付き始めていた。
8割ほどの力でやる柔術の稽古。毎晩繰り返される、姉妹だけの練習のなかで、なんとなく、
どことなくわかり始めていたふたり。
そして、あの日。15になった誕生日の夜。
過酷な現実が、明らかになった日。
勝者は私で、姉は敗者で。
でも、でも、そう、今でも私はわかっているの。
私は、お姉ちゃんがいないとダメなの―――
「死ねッッ、ファントムガール・ユリアッッッ!!!」
オレンジ色の熱線が、巨大ヤドカリの鋏から一直線に放たれる。
赤茶色の岩石が集合してできたような怪物の破壊光線は、タコに四肢を絡み取られ、身動き
できない黄色の女神の背中に直撃する。
「きゃああああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
爆発とともに火花が飛び散り、海の中でジュウジュウと音をたてる。
細身の背中は、赤色に焼け爛れていた。銀色の輝く肌は、あちこちが黒焦げになっている。
陶酔しそうな美しき女神の肢体は、いまや悪魔に蹂躙されて、その輝きをほとんど失ってい る。
ヴィーン・・・ヴィーン・・・ヴィーン・・・
海岸を流れる女神苦闘の調べは、ファントムガール・ユリアが登場してから間もなく、点滅を
開始していた。
誰の目にも明らかなほど、ユリアは衰弱し切っていた。
ヤドカリの巨獣シェルと、タコの淫獣クトルとの間に、颯爽と現れた黄色と銀の妖精。
だが、出現した瞬間から、肩で大きく息をしていた守護天使は、一撃の攻撃も繰り出すことな
く、二匹の魔獣に嬲られ続けていた。
ヤドカリとタコの間を、フラフラと往復するファントムガール・ユリア。
シェルの巨大な鋏がユリアの胸を、腹部を突き刺す。仰け反ったところを、クトルの8本の鞭
が、銀の皮膚をはぎとる勢いで叩き伏せる。全身に血を滲ませる少女戦士を、凶悪な鋏が今 度はハンマーと化して頭部を殴りつける・・・
リンチと呼ぶにはあまりに凄惨な処刑が、美しい海岸をバックに展開される。
グッタリと脱力したユリアを、濃緑の足が首に巻きついて、吊り下げる。
ゴボゴボと白泡を垂れ流し、窒息死を迎えんとする闘少女を、すんでのところでシェルが抱え
あげる。
だが、それは次なる嗜虐の始まりでしかなかった。
細い胴体に食い込んだふたつの鋏が、ギリギリと圧迫していく。
メシメシと悲鳴をあげる肋骨。徐々に破壊される壮絶な激痛に、ふたつに纏めた髪を振り乱
して絶叫するユリア。
助けられたと思ったら責められ、死ぬ寸前で助けられる・・・
少女を破壊する愉悦に震える悪魔二匹によって、黄色の守護天使はそんな苦悶の煉獄にず
っと陥っているのであった。
「ハハハハハ、いかがですか、ユリアくん? 最期の時を迎えた心境は?」
クトルの足が四肢を捕えて、上空高くにユリアを固定する。
仰向け状態のユリアの視界に、夏の満天の星空が飛び込んでくる。ズキズキと疼く全身の激
痛が、爽快な星空のなかで、より一層際立って少女戦士に染み込んでくる。
“・・・私・・・・・・・これ・・・から・・・・・・殺され・・・るんです・・・ね・・・”
悪鬼どもの暴力の捌け口と堕してしまった、無力な己。
弱い自分を自覚した武道少女は、無念のまま、死を迎えようとしている。
天の川が・・・キレイだな・・・・・・
地獄の口に向う者としては相応しくない、静かな感情がユリの内面には広がっている。
「君のように美しく、脆いオモチャはずっと遊んでいたいところですが・・・あいにく始末するよう
言われてましてね。命が果てたあとにでも、ゆっくりその未熟な身体は味あわせてもらいます よ」
4つの手足に2本づつ絡んだタコの触手が、天高く大の字に拘束した黄色の妖精をギリギリと
引き伸ばしていく。
「ギャアアアッッッ・・・!!! アアアアアッッッ〜〜〜ッッッ!!!」
鈴の声が引き攣る悲鳴を奏でる。
付け根から四肢をもがれる苦痛。ミシミシと皮膚が、筋肉が千切れていくおぞましい音が、孤
独な闘少女を苛んでいく。
ギュオオオオオオッッ―――ッッッ!!!
磔のユリアの真下に移動したシェルが、背負った巨大貝殻を高速で回転させる。
白いドリルの凶悪な回転音が、苦痛にもがく可憐な妖精の耳朶を打つ。
「さらばだッ、ファントムガール・ユリアッッ!!!」
大の字のまま、華奢な黄色の女神が、背中からヤドカリのドリルに落とされる。
ギュリュリュリュリュリュ!!! ブチイッッ!! ドバアッッ!! ビシャアッッ!!
「キャアアアアアアアアアアアッッッ――――――ッッッ!!!!」
闇を切り裂く凄惨な悲鳴。
貝殻のドリルがユリアの背中を突き刺し、ギュルギュルと回転しながら、銀の皮膚を、柔らか
な乙女の背肉を抉っていく。
噴き出す鮮血が白いドリルを朱色に染めていく。ビチャビチャと細胞の破片が飛び散り、砂
浜を桃色に霞ませる。
ゴボリと血塊が花びらのような唇からこぼれる。全身を突っ張らせ、ビクビクと痙攣するファン
トムガール・ユリア。胸の中央のクリスタルが激しく明滅し、青い瞳の光も点灯と消滅を繰り返 す。
闘えぬ少女戦士に処せられた、過酷な串刺し刑。
ひと思いにお腹まで突き貫くことはできるだろうに、敢えて魔獣二匹は永遠の安息を簡単に
はユリアに与えなかった。四肢に絡めた触手を放したクトルは、その吸盤の先で、妖精の乳首 の先を、女裂の襞を、臍を、腋を、尻肉の割れ目の中を、次々と吸いついて瀕死の少女を弄 ぶ。ヤドカリの鋏がぶらさがった細い両手首に食い込み、生贄少女の動きを封じる。背中の中 央を貝殻のドリルで抉られながら、ユリアはただヤドカリの上で垂れ下がっているしかない。
ギュルルルルルル・・・・ギュルルルルルル・・・・・・
「ふぇああああああッッッ―――ッッッ!!!! んんええあアアアッッ・・・!!! ひぎいイイ
イッッッ―――ッッッ!!!!」
細い背中に穴を開けられていく、守護天使・ユリア。
ドクドクと真っ赤な血が垂れ落ちていく。壮絶な激痛と執拗な魔悦。徐々に滅ぼされていく、凄
惨な処刑ショーが、夏の海岸に大パノラマで広がっている。
「いい悶え具合ですよ、ユリアくん! 君の苦しみと悦びが身体からよく伝わってきます。さ
あ、このままゆっくりじっくり、お腹を突き破ってあげますからね。苦しみながら死んでいきなさ い!」
「オレ様のドリルで八つ裂きにしてくれる。二度と復活できないよう、バラバラになって死ね、
ユリア!」
“・・・・・・・・・し・・・・・死・・・・・ぬ・・・・・・・・・・お姉ちゃ・・・・・・ん・・・・・・”
クリスタルの点滅音が、小さく、遅くなっていく。
瞳と胸の水晶体の青色が、暗く翳り、消え入るように薄くなっていく。
「ユリアッッッ―――――ッッッ!!!!」
海岸に響き渡る、絶叫。
兼子賢児の運転するバイクに跨った、セミロングの美少女。
衰弱しきった身体は毛布に包まれ、赤黒い血が口元にこびりついている。悪魔の拷問から、
命からがら生還した不運な柔術少女。己の身もいまだ危険な状態であるのは間違いない。だ がしかし、普段は蚊の鳴くような声しか出せない内気な少女が、どこにこんな力が残されてい たかと思う大声で、愛しき者の名を叫ぶ。
「ユリアッッ!!! 私が“許可”・・・いいえ、“命令”するわ! そいつらと闘って! そし
て・・・ぜったいに勝ちなさい!!」
消えかけていた女神の瞳が、カッと強い光を放つ。
幻聴? いや、間違いない。間違えるわけはない。
全てを諦め掛けていたファントムガール・ユリア、西条ユリの耳に聞こえてきた、あの鈴のよう
な声は。優しく、心地良く、時に厳しく、頼りがいのあるあの声は、忘れることなどできるはずの ないあの人の声。
“・・・・・・お姉・・・ちゃんッッ!!・・・”
「うあああああああッッッ!!!!」
串刺しを待つだけの脱力した銀の肢体に、光の力が蘇る。
潤んだ唇が咆哮する。遠慮がちな少女戦士の、生命にしがみつく叫び。
拘束されていない両足がグンと撥ねあがる。
空を大きな弧を描いて腰の上へ。さらに頭の上へ。
脚をふんばる反動で、ズブズブと背中にドリルが埋まっていく。構わず勢いよく回転する長い
美脚。
ヤドカリ巨獣の背中の上で、ちょうど後ろ回りする形となったユリアの柔肉から、貝のドリルが
抜けていく。
「せやああああッッッ―――ッッ!!!」
脚から優雅に着地した武道天使が、処刑の脱出から一気に逆転の柔術を仕掛ける。
巨大な鋏に挟まれた両手首を、内側から旋回するように捻る。
ベキン! ゴキン!
軽やかな音を響かせて、怪物となった総合格闘家の手首は、いとも鮮やかに外されていた。
「ッッ??! ぎィッッ?!!」
「想気流柔術・櫓落とし!」
奇妙に捻れたヤドカリの鋏に、両手首を挟ませたまま、銀の女神が一本背負いの要領で巨
獣の懐に飛び込む。
ベキッ! ボキイッッ!! ボコッッ!!
手首を折られる痛み、肘関節を砕かれる激痛、肩関節を脱臼する苦痛が電流のように一瞬
で巨獣の右腕を駆け巡る。スピード、タイミング、そして激痛に自ら飛びあがる敵の勢い・・・そ の全てを芸術的に融合させた天才の投げ技が、3倍以上の質量がある巨体を、風車のように 大回転させる。
「キシャアアアアアアッッッ―――ッッッ!!!」
砂浜が揺れる。海が波立つ。
巨獣が叩き伏せられ、人工的な地震が観光地を揺らす。倣岸な「皇帝」が、惨めな鳴き声を
夜空に轟かす。
「ユッ・・・ユリアァァァッッ〜〜〜ッッ・・・き、貴様ァ・・・・・・」
右腕を破壊された痛みに、ブルブルと震えながら巨大ヤドカリが立ちあがる。
その赤い眼に飛び込んできたものは。
光の矢を引き絞り、照準を己へと合わせた、黄色の妖精の姿。
「なッッ?!!」
ドンンンンンッッッ!!!!
強固なシェルターに入る間もなく、狙いすました必殺の嚆矢が、赤茶色の肉体の中央に突き
刺さる。
一瞬の静寂。
溢れる聖なるエネルギーの爆発に、巨大ヤドカリの肉体は白い貝殻ごと、木っ端微塵に吹き
飛んだ。
「やったぜ! 今度こそ、ファントムガールの完全勝利だ!」
「・・・まだ・・・です・・・」
踊りあがらんばかりに吼える兼子賢児を、西条エリが制する。
確かにヤドカリ巨獣・シェル、人間を破壊することに愉悦を覚える総合格闘家・兵頭英悟は倒
した。
だが、本当の闘いはこれから。
成す術もなく惨殺されてしまった最悪の敵、クトル。
柔術を操るユリアにとって、天敵ともいえる最悪の宿敵が、再度守護天使を地獄に落とさんと
構えている。
「驚きましたね。あの状態から、まだ抵抗できるとは・・・。思わぬ人物が現れたものです」
ヘドロの塊のごとく見えるタコの淫獣が、赤い眼をちらりと浜辺のエリに向ける。
当然のように、魔獣はユリアを蘇生させたキーパーソンの存在に気付いていた。あの状態で
久慈仁紀のもとを脱け出してくるとは、思いもよらなかったが・・・だが、この死闘の場に現れた 邪魔者は、ファントムガールを処刑したあと、始末すればよい。
軟体生物タコの能力を引き継いだキメラ・ミュータント、クトル。
関節技を主体とするユリアは、彼にとっては獲物でしかない。ましてすでに限界を迎え、瀕死
と呼んで差し支えない状態。目前でシェルが葬られても、慌てることなく、哀れな銀の妖精に近 付いていく。
「ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・・・・」
後退する守護天使。
肩で大きく息をし、ガクガクと揺れる武道少女が、無意識に下がっていく。胸のクリスタルが、
ヴィーン・・・・・・ヴィーン・・・・・と、か細く点滅を繰り返している。
「ユリアッッ!! “無撃”を使いなさい! 関節技が効かない相手には、打撃しかないわ」
衰弱した肉体に鞭打って、再びセミロングの少女が大声で叫ぶ。
声は間違いなく届いていた。しかし、素直な少女戦士は、いつになく、ふるふると細い首を横
に振る。
「どうやら私に勝てないことは、ユリアくん自身が一番理解しているようですねぇ。安心なさい。
女の悦びをたっぷり教えながら殺してあげますよ」
「・・・う・・・・ううぅ・・・・・・・」
ズルズルと8本の触手を蠢かしながら、タコのミュータントが細身の女神に迫る。
火傷に黒ずみ、背中からドクドクと鮮血を流す凄惨な姿の天使。彼女に残された体力も時間
もわずかしかない。絶望的な状況が、正体は15歳にしか満たない少女を追い詰めていく。
「ユリッッ―――ッッッ!!! やりなさいッッ!!!」
思わず正体の名を叫んだ姉の声が、さそり座のもとに響き渡ったとき、濃緑の悪魔が8つの
触手を踊らせて、震える守護少女に殺到する。
しかし。
先に突っ込んだのは、ファントムガール・ユリア。
突進して放つ、右拳の突き。
「愚かな!」
真っ直ぐに伸びたストレートが、ヘドロの肌に触れた瞬間、濃緑の足はユリアの右拳はもとよ
り、全身に絡みついていた。
ボロボロの少女戦士の打撃は、本来の速度から遠くかけ離れていた。触れるのが精一杯
で、威力を与えられなかった右拳は、容易くクトルに捕えられた。
――――かのように見えた。
「え??」
ガクン
骨格のない巨大タコの全身が、ぐらりと大きく揺らぐ。
悦楽に魅入られた魔獣を襲ったのは、つっかえ棒をなくしたような喪失感。全身の力がバラ
バラになって迷走する感覚。
久慈仁紀が西条エリに味あわされた奇妙な感覚、あの再現が正邪の死闘で行われる。
ユリアの右腕は絡まれたのではない。
絡ませたのだ。
「想気流柔術奥義・無撃ッッ!!」
全身の力を失った無防備な腹部に、大砲のごとき衝撃が叩きこまれる。
「ゴボオオオオオッッッ!!!」
どす黒い吐血を大量に撒き散らしながら、濃緑の巨体が美しい海岸を飛んでいく。
天まで届く波飛沫をあげて、海中に落ちていくタコの魔獣。
嵐のごとき津波が浜辺に打ち寄せられる。油断しきったたるんだ腹部に、ボーリングの玉を
撃ち込まれたような衝撃。少女戦士の何分の一かのダメージを負った醜いキメラ・ミュータント の姿は、掻き消すように忽然と伊豆の海岸から消えていた。
「ハァ・・・・・・・・ハァ・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・」
しばし勝利をもたらした右拳を見詰める黄色の女神。
瞳から青い色が消えていくのにあわせるように、ゆっくりと後方に倒れていく。
正義の少女が海岸を揺るがせる直前、その麗しく可憐な肢体は、白い光の粒子と化して、夜
の空間に溶けていった。
―――――――――――――
「そろそろって、とこだなァ」
峻烈な空気に支配された道場の畳の上で、西条剛史は再び手首のG−shockを覗きこん
だ。
時計の針は以前見たときより、30分以上進んでいた。
後継者を争う、双子姉妹の死闘。
一瞬の隙を突いて相手を倒そうとし、一瞬の隙を突かれたら相手に倒されてしまう、極限の
緊張状態。それをほぼ同じ力量を持つ相手と交える一分は、いかに長いことか。
100mを全力で走るのに、普通の人間がかける時間は15秒足らず。
それを思えば、一分を全力で闘うことの疲労がいかに激しいかは容易に見当がつく。
その激しく、厳しく、危険な一分を、15歳になったばかりの少女が、30回以上繰り返してい
る。
文字通り、死すら賭けた闘い。だが、一進一退の攻防のなかで、決着が間近に迫っているこ
とは、この場の3人ともが嗅ぎつけていた。
仕掛けねば、ならない。
互いの精神も肉体も、崩壊までわずかだ。勝負を賭けて仕掛ける以外、姉妹に道はない。
打撲、捻挫、靭帯の損傷、骨折、数知れず。
ただ、致命傷を求めて、双子の姉妹が同時に真正面から突っ込む。
ガシッッッ
肉が交錯する音が響いて、同じ顔をした美少女の動きは止まっていた。
姉の突いた右拳が妹のアバラに触れている。
エリの全力の突きが肋骨を砕くより早く、ユリはその手首を掴むことに成功していた。
想気流柔術を知り尽くしたふたりの後継者候補は、互いの好機と窮地を悟っていた。
エリの“無撃”がユリの力を抜くのが早いか―――
ユリの関節技がエリの手首を極めるのが早いか―――
他の敵なら必殺といえる態勢も、裏表を知り尽くした今の相手には、勝敗を分ける境界線上
の状況にしかならない。次の一瞬には勝者と敗者が決まってしまう、ギリギリの極限時間――
「お姉ちゃん・・・」
凍った時間を動かしたのは、ユリの口から洩れてきた、意外な台詞であった。
「無撃を・・・うって」
己の敗北を望む言葉。
持てる力を全て振り絞った少女が、姉との死闘の果てに出した結論。
「ダメよ、ユリ」
アニメ声とも揶揄される可愛らしい声が、ゾクリとするほど冷たい口調で言い放つ。
「最後まで闘うの。あなたの技と、私の技・・・どちらが優れているか、決着よ」
「お・・・お姉ちゃん・・・・・・」
「ユリッッ!! やりなさいッッ!!」
見えない閃光が輝き、聞こえない轟音が鳴り響く。
力、技、スピード、タイミング、呼吸・・・全てを捧げた一撃が、同時に互いに叩きこまれる。
「・・・決まったようだなァ」
呑気とも取れる父親の声が、静かな冬の道場に透き通っていく。
妹のユリが右膝を畳につけて跪いている。左の脇腹にあてられた右手は、折れている肋骨
の感触を確かに伝えていた。
薄ピンクの小さめな唇の端から、すっと深紅の筋が流れる。
ポトポトと、赤い水滴が、古びた畳の上に点描画を描いていく。
「・・・・・・・・エリ・・・姉ちゃん・・・・・・」
胡桃のような丸い瞳の先に、姉の姿がある。
畳にうつ伏せに倒れたまま、ピクリとも動かない姉の姿が。
墓標のごとく天に向って、一直線に伸びているのはエリの右腕。
そのしなやかな細長い腕は、肘と手首のところで180度づつ捻じ曲がって折れていた。
「きゃあああああああッッッ――――ッッッ!!!!」
悲痛な絶叫は、勝者である少女の口から放たれた。
次期想気流柔術後継者の名が決定した瞬間であった。
――――――――――――――
『2番線、下り方面京都行き、普通列車参ります。白線の内側までさがってお待ち下さい』
甲高いアナウンスに耳を傾けながら、西条エリは紺のシートに深く腰を降ろす。
予定より一日遅れて家に帰ることになったが、連絡した父は携帯電話の向こうで大笑いする
だけであった。娘ふたりが、命からがらの死闘を繰り広げていたことなど知る由もない。少し不 貞腐れながら、エリは静かに電話を切った。
目の前には、傷だらけの妹が眠っている。
よりによって白のキャミソールを着たユリの素肌には、あちこちに包帯が巻きつけてあった。
ファントムガール・ユリアとして受けたダメージは、変身解除後は数十分の一に軽減されること はエリも知っているが、それでも残った負傷は多い。特に酷い背中には、皮膚がよじれて抉れ た肉のなかから鮮血がこぼれていた。厚いガーゼをあててあるが、いつ服にまで血が滲んでく るか、密かな心配の種でもある。
ただでさえ目立つ愛らしい双子なのに、痛々しい姿はいやでも周囲の目を引く。
内気な少女は、早く列車が出発しないか、気を揉みながら透明なガラスの向こうを眺めてい
た。
「あ?!」
花弁のような唇が、小さく呟く。
プラットフォームに現れた金髪の少年。
キョロキョロとなにかを探しているよく日焼けした長身の男は、エリとユリがこの街でもっとも
世話になった人物かもしれなかった。
“まさか・・・ユリを見送りにきたのかな・・・”
少年が抱いた仄かな恋心に、姉は勘付いていた。
ユリになりきって、サーファー然とした少年と対したとき、彼が持つ妹への愛情を確かにエリ
は嗅ぎ分けていた。会った当初は、敵となるはずだったふたり。だが暴力という恐怖によって、 兵頭英悟に服従していた彼を裏切らせ、最終的には柔術姉妹の絶体絶命の窮地を救わせた のは、ユリへの想いがあればこそだったのかもしれない。
長い睫毛を閉じた妹を、じっと見詰めるエリ。
すうすうとかすかな寝息をたてた少女戦士に、休息がなにより必要なことを彼女は知ってい
る。
再び、いや、三度妹になりすますことを、少女は決めた。
「カネコさん」
せわしなく周囲を見回している兼子賢児に、エリはやや遠めから声をかけた。
「あ!」
ピンクのタンクトップを着たエリに気付いた金髪少年が、白い歯を見せて走ってくる。夏らしい
Tシャツのせいだろうか。日焼けした精悍な顔は、爽やかな印象すら与える。
「どうしたんですか?」
「どうしても君に言いたいことがあったから、来ちゃったよ」
どことなく真剣な眼差しに、エリは兼子が言わんとする内容の見当がついた。
ユリのフリをして、代わりに聞いてしまおうか?
浮んだ考えを即座にモデル体型の少女は打ち消す。聞いてはならない。兼子が口にしようと
する台詞は、ユリ以外の者が聞いていい台詞ではないだろう。
「あの・・・ごめんなさい・・・」
「ん?」
「私は・・・ユリじゃないんです・・・・・・・」
騙していたようで、ごめんなさい。
続けようとした言葉は、兼子によって遮られた。
「わかってるよ」
「え?」
「初めて会ったときから、君がユリちゃんじゃないことはわかったよ。いくら顔が同じでも、服も
髪型も違うからわかるさ」
カーッとエリの頬が赤く染まっていく。
ユリのフリをして会っていたのに、兼子は全てわかっていたなんて。
「エリちゃんって名前はあとで思い出したんだけどな。そういや兵頭が、双子の姉がいるって
言ってたなあって」
「あ、あの・・・」
「エリちゃん、オレは君に言いたいことがあって来たんだ」
通過列車が汽笛を鳴らして通りすぎる。
兼子賢児の口から発せられた本心からの言葉は、頬を真っ赤に染めた西条エリの耳と心
に、確かに響いて伝わった。
走り去った電車を、いつまでも少年は見送っていた。
電車の姿が見えなくなってから、もう20分ほどが経っている。
ようやく金髪の少年は、くるりと背を向け、出口へと向い始めた。
「オレのひと夏の恋も・・・終わったか」
少年には少年なりにやることがあった。
まずはトップのいなくなった格闘技ジムを、なんとか存続させていかなければならない。
この星を守るような闘いではなくても・・・少年にとって、熱い闘いはこれから始まるのであっ
た。
「んん・・・」
小動物が鳴くようなかすかな声を洩らすと、西条ユリは黒めがちな瞳をパチリと開けた。
電車はもうだいぶ距離を進んだようだ。窓の外には緑生い茂る山間の風景が広がっている。
向いの席に座った姉は、じっと外を眺め続けていた。
ユリが起きたことに気付き、そのまま外に視線を向けたままで声を掛けてくる。
「起きた?」
「うん・・・」
「まだ、先は長いから・・・寝てていいよ」
「うん・・・」
優しい姉の声が、ユリの心に温かみを与える。
いつもと変わらないようで、どこか雰囲気の違う双子の姉。
後ろに飛んでいく緑を見詰める姉の瞳は、心なしか、ユリには潤んでいるように見えた。
《ファントムガール第八話 了 》
![]() |