Act8 非情の罠 |
 現れたアリサにガッツ星人は低く笑った。 「愚カ者メ...」 |
 「お望み通り、来てやったよ。さあ覚悟しな!」 そう言うとアリサは、ガッツ星人目掛けて突っ込んで行った。 |
 「てぃっ!」 勢い良くジャンプしたアリサは、得意のドロップキックを放つ。だがその時、ガッツ星人の姿は薄く消滅しつつあった。 |
 目標を失ったアリサは、そのまま地面に落下した。 「うっ!」 ヒップをしたたかに打ち付けたアリサは、一瞬目の前が白くなった。 |
 「痛っ...」 痛みに思わず腰に手をやったアリサの背後に、再びガッツ星人の姿が現れる。 |
 ガッツ星人はアリサの痛めた腰に狙いを定めて、強烈なキックを蹴り込む。 「あうっ...」 余りの痛さに、アリサは思わず身を反らせた。 |
 だが相手は容赦しなかった。伏したまま痛みに悶えるアリサの腰を、ガッツ星人は何度も踏み付ける。腰の骨が悲鳴を上げるたびに、アリサの口からは呻き声が漏れた。 |
 「いい加減にしろ!」 怒りに駆られたアリサは、ガッツ星人の踵目掛けて、手刀を横殴りに叩きつけた。思わぬ反撃にバランスを失ったガッツ星人は、よろめいて2、3歩後退した。 |
 執拗な攻撃から逃れたアリサは、腰を庇いながらようやく立ち上がった。 「よくも人のヒップを玩具にしてくれたわね...お返しだ!」 |
 「レディ・フラッシュ!」 アリサは両手を前方に突き出し、フラッシュ・バンを放つ構えに入った。アリサの全身から、両手に向かってエネルギーが集中して行く。だがその時、背後に青白い光が出現したことに、アリサは気が付かなかった。 |
 青白い光はガッツ星人の姿と変わる。その両手から眩い光線が放たれ、フラッシュを放とうとしていたアリサの身体を包んだ。 「う!」 全身に鋭い衝撃が走り、アリサの集中は妨げられた。両腕に集中されていたエネルギーは、ゆっくりと大気中に放散した。 |
 「こ..これは...」 身体中が麻痺したように、アリサの筋肉が弛緩して行く。アリサは何とか倒れないように、両脚に神経を集中するのがやっとだった。 |
 その間に、前方のガッツ星人は既に体制を立て直していた。そして全身の麻痺と必死に抵抗しているアリサ目掛けて、再び光線を放った。 「くっ!」 上半身を包んだ怪しい光線に、アリサの心臓は異常な心拍を打った。全身の筋肉が麻痺し、アリサの身体は後方へ大きく傾いた。 |
 「あ...」 よろめいたアリサを、後方のガッツ星人が羽交絞めに抑えた。 「初メテ味ワウ麻痺光線ハドウダ?」 前方のガッツ星人は軽く両手首を廻しながら、ゆっくりとアリサに迫った。 |
 アリサに近づいたガッツ星人は、その拳で勢いよくアリサの頬を殴った。 「ぐっ...」 激しい衝撃に、アリサの顔は横を向いた。 |
 更に反対側から、2撃目が襲う。髪が横ざまに揺れ、アリサの顔は下を向いた。 |
 「マダダ...」 ガッツ星人はアリサの腹を、下から思い切り突き上げた。 「う...」 足下に崩れ落ちそうになるアリサの身体を、後方のガッツ星人がガッチリと抑える。 |
 「脆イナ..マルデ相手ニナラン...」 スクリーンを見つめていた指揮官は、首を左右に振った。 「余リ時間ヲ掛ケルナ..早ク痛メツケテ、エリザヲ呼バセルノダ」 |
 「先程マデノ威勢ハ、ドウシタ?」 ガッツ星人は指先で、アリサの顎を軽く持ち上げた。 「ひ..卑怯だ..2人掛りなんて...」 痛みに喘ぎながら、アリサは恨みの言葉を漏らした。 「戦闘ノ目的ハ勝ツ事ダ...ソノ為ニハ敵ノ弱点ヲ徹底的ニ突ク」 ガッツ星人はアリサを抑えている仲間に頷いた。 |
 「あ?」 ガッツ星人の両手が素早く動き、アリサの乳房を握った。 「な、何を?」 「我々ニハ決シテ勝テナイ事ヲ、コレカラタップリト御前ニ教エテヤル...」 |
 ガッツ星人は前に突き出した手で、握り拳を作って合図した。 「あぐっ.....」 柔らかな乳房に、ガッツ星人の太い爪がグイグイ喰い込んでいく。必死に激痛に堪えるアリサは、震える頭を左右に振った。 「セイゼイ足掻クガ良イ...ダガ無理ニ足掻クト、大事ナ乳房ヲ失ウゾ...」 自分の乳房を絞りあげる手を、もどかしそうに押さえるアリサに、ガッツ星人は低く笑った。 |
 「安心シロ、我々ノ標的ハ御前デハ無イ。コレ以上苦痛ヲ味ワイタク無イナラ、エリザヲ早ク此処ニ呼ベ...」 「それじゃ、最初からそのつもりで...」 「御前達ノ弱点ハ既ニ把握シテイル...抵抗ハ時間ノ無駄ダ」 そう言うとガッツ星人は、アリサの胸のクリスタルを爪で弾いた。 |
 「よくも騙したわね...誰がするもんか!」 アリサは目の前のガッツ星人の腹を思い切り蹴り上げた。 |
 不意を突かれたガッツ星人は、1、2歩後ずさった。背後のガッツ星人は、慌ててアリサの乳房を捩じり上げる。 「あっ...」 その痛みにアリサは思わず天を仰いだ。 「フム、モット苦痛ガ味ワイタイト見エル...」 蹴られたガッツ星人は、そう言うとアリサににじり寄った。 |
 「喰ラエ!」 鋭く突きだされたガッツ星人の拳が、アリサの下腹部にめり込んだ。衝撃が薄い筋肉を超え、その奥の子宮に達した瞬間、アリサの全身が硬直した。 |
 柔らかい乳房を拘束していたガッツ星人には、アリサの身体が激しく痙攣するのが判った。子宮が発した危険信号が脳の神経コントロールを麻痺させ、全身の血管が極度の膨張を起こした。細い血管の多い肺が、これに耐えられずに破損した。 「う...」 言葉にならない声が漏れ、アリサの唇から一筋の血が零れ落ちた。 |
 背後のガッツ星人がそっと握っていた乳房を離すと、支えを失ったアリサは足元に崩れ落ちた。その身体が細かく痙攣するのを見た2人のガッツ星人は、互いに顔を見合わせて小さく笑った。 |
 「アリサノエネルギー変換率、18%マデ急速ニ低下...」 制御卓に付いているガッツ星人が報告した。 「予想以上ノ効果ダ...ダガ子宮ヲ攻メ過ギルト、アリサガ失神シテシマウゾ...」 「ウム...エリザヲ誘キ出ス事ガ困難ニナル...」 指揮官は制御卓を操作している部下に合図した。 「攻撃箇所ヲ変更...」 |
Act9 罠に墜ちた姉妹 |
 「子宮ヘノ攻撃ハ中止ダ。モット苦痛度ノ低イ、乳房ニ変更ダ...」 後方のガッツ星人は軽く頷くと、アリサの両腕を掴んでその体を引き上げた。 |
 そして両脇から腕を差し込むと、アリサの豊満な乳房を掴み、思い切り上へ持ち上げた。 「あうっ!」 骨が擦れる鈍い音がして、アリサの口から苦痛の叫び声があがった。 |
 ガッツ星人はアリサの乳房に爪を喰い込ませたまま、繰り返しその上半身を後方へ引き寄せた。限界を超えて曲げられた腰骨は、その度に軋む音を発する。 「う...ううっ...」 西に傾いた夕陽に照らされるアリサの顔は、腰と乳房の2つの苦痛にひどく歪んでいた。 |
 前方のガッツ星人はアリサに近寄ると、片膝を突いてアリサの顔を覗きこんだ。 「痛ムカ、アリサ? 楽ニナリタケレバ、姉ヲ呼ブノダ...」 「嫌..だ...」 アリサは必死に苦痛に抵抗しながら、頭を小さく左右に振った。 |
 「抵抗シテモ無駄ダ...早ク、エリザヲ呼ベ」 「誰が...呼ぶ..もんか...」 苦痛に震える声が途切れると、アリサの頭がガックリと下を向いた。それまで必死に抵抗していたアリサの両腕が、力無く下に落ちる。 |
 「脆過ギル...姉ノ『エリザ』トハ比較ニナラン...」 「モウ少シ、『アリサ』ガ耐エラレソウナ箇所ハ何処ダ?」 「乳房ノ次トナルト...股間ノ恥骨ニナルガ..」 「止ムヲ得ン、目標変更ダ...手加減サセルノヲ忘レルナ..」 |
 「マッタク、手間ヲ掛ケサセル小娘ダ」 ガッツ星人はアリサの腕を掴み、身体を仰向けにした。 「コイツノ脚ヲ広ゲサセロ。尻ヲ上ニ向ケルノダ...」 |
 ガッツ星人はアリサの両足首を持つと、脚を大きく広げた。 「?...」 アリサは相手が何をしようとしているのか、全く思い付かなかった。アリサの身体は無意識に上半身を起こそうとしたが、後方のガッツ星人が手首を押さえてそれを許さなかった。 |
 後方のガッツ星人はアリサの手を踏み付け、上半身の自由を奪った。そしておもむろに立ち上がり、仲間に頷いた。アリサの脚を広げていたガッツ星人は、掴んでいたその脚を反対側の仲間に引き渡した。 「あ!」 振り上げられたガッツ星人の手刀に、アリサは本能的な恐怖を覚えた。 |
 勢いよく振り下ろされた手刀が、鈍い音と共にアリサの股間にめり込んだ。 「うっ!」 恥骨に加えられた衝撃に、アリサは思わず叫び声を上げた。 |
 股間から痛みが薄れる間も無く、次の一撃が恥骨に叩きつけられる。 「やめて..お願い...」 下半身に走る激痛に、アリサは思わず懇願した。だがガッツ星人はそれに構わず、アリサの股間にチョップを振るい続けた。 |
 「あうっ!」 ガッツ星人の手刀がアリサの股間を打つ毎に、アリサの口からは苦痛の悲鳴が洩れる。アリサの意識が徐々に薄れ始めた時、胸のクリスタルが赤く変化し、警告音を発し始めた。 |
 股間の痛みが下半身全体に広がり、アリサの両脚の感覚は既に無くなっている。そして今、エネルギー枯渇という危機が追い打ちを掛けるようにアリサを襲った。それまで体験したことの無い深い絶望感が、アリサの心を蝕んで行く。急速に大きくなる死への恐怖が、遂にアリサの意思を砕いた。 「...姉さん..助けて...」 |
 突然、絵里の意識の中に、助けを求める亜里抄の声が響いた。冷たい氷に触れたような感覚が走り、絵里は思わず股間を抑える。 「亜里抄!...」 |
 「副長! これからエリア11の調査に行きます」 そう言い残すと、絵里はドアに向かって走り出した。 「待て、絵里! もうすぐ交代時間だぞ...」 だが絵里の姿は閉じたドアの向こう側に消えて行った...。 |
 廊下に走り出た絵里は、あうやく通信士のミキにぶつかりそうになった。 「絵里、どこ行くの? もう交代よ?」 「ごめんなさい、話は後で...」 そう言い残すと、絵里はエレベーター目指して駆け出した。 |
 屋上に出るにはエレベータを降り、更に非常階段を昇らねばならなかった。ようやく屋上に辿り着いた絵里は、大きく肩で息をしていた。ガッツ星人に締め上げられた喉が、長い全力疾走で再び痛み始めていた。 |
 ようやく息が整ってきた絵里は、上体を起こすと空に目をやった。夕暮れの陽光が、絵里の顔を赤く照らし出している。絵里は大きく息を吸うと、右手を天にかざした。 「エリザ・チェンジ!」 柔らかな光が渦を巻いて絵里を包み込むと、その姿は光に紛れて見えなくなった。 |
 次第に迫り来る夕闇の中、アリサの胸にあるクリスタルが赤く瞬いていた。それが発する甲高い信号音は、エネルギー残量が既に危険域に達したことを告げている。だがアリサはその身体を小さく上下に振るわせるだけで、全く動くことができなかった。 「ソロソロ『エリザ』ガ来ルヨウダ。コイツノ役目ハ終ワリダ、トドメヲ刺シテヤレ...」 もう一人のガッツ星人は、黙って頷いた。 |
 「命令通リニシテイレバ、苦シマズニ済ンダノニナ。ダガ、コレデ楽ニ成レルゾ...」 ガッツ星人は背筋を伸ばしてアリサの股間に狙いを付けると、その上に勢い良く膝を落とした。 「あうっ!」 骨が砕ける音が響き、苦痛に悶えるアリサの身体は、ビクンビクンと激しく痙攣した。 |
 痙攣が収まると同時に、アリサの眼から光が消え去り、額のクリスタルも光を失った。ぐったりと横たわったアリサの身体に、もはや動きは見られなかった。 「フム...気ヲ失ッタノカ?」 「コレデコイツハ、二度ト動ケマイ...」 |
 「お願い..アリサ、もう少し頑張って...」 夕空の中を泉ヵ丘へ急ぐエリザの心を、激しい焦燥感が襲っていた。既に限界まで速度をあげていたが、それでも次第に大きくなるエリザの不安を押し止めることはできなかった。 |
 次第に薄れて行くアリサの意識に、ガッツ星人の会話が響いた。 「信号音ガ変ワッタゾ...」 「ソレニ、クリスタルノ点滅ガ速クナッタ。間モ無ク、コイツノエネルギーハ尽キル...」 だが聞き取れたのは、そこまでだった。アリサの意識は、深い暗黒の淵へと急速に墜ちて行った...。 |
 「待ちなさい!」 ガッツ星人達が声のした方向に振り向くと、エリザが空から降りて来る所だった。 |
 「ヨウヤク現レタカ」 「少シハ歯応エガ有リソウダナ...」 2人のガッツ星人は敵意を剥き出しにしながら、ゆっくりとエリザに接近した。 |
 エリザは一人のガッツ星人を指差した。 「アリサに手を出すなんて、卑怯よ! 貴方達の狙いは私じゃなくて?」 「勘ガ良イナ..妹トハ少シ違ウヨウダ...」 そう言いながら、ガッツ星人達はじりじりとエリザを包囲して行く。 「絶対許さない...」 エリザは固く拳を握りしめた。 |
 背後に廻ったガッツ星人は、エリザ目掛けてパンチを繰り出した。しかしこの攻撃を予測していたエリザは、間一髪これを腕で受け流した。 |
 エリザは腰を捻り、攻撃して来たガッツ星人の顔面にカウンターパンチを見舞った。ガッツ星人はよろけながら、後方に尻餅をついた。 |
 そして振り返りざま、エリザは回し蹴りを放つ。宙に弧を描いた足が、隙を狙って襲いかかって来たガッツ星人を横ざまに弾き飛ばした。 |
 蹴り飛ばされたガッツ星人の身体は、青緑色の光に包まれ、次の瞬間には掻き消すように消えた。 |
 「何処へ?...」 エリザが周囲を見廻すと、パンチを見舞った筈のガッツ星人の姿も見当たらなかった。 「テレポーテーション?...まさか...」 敵の底知れぬ能力に、エリザの不安は増々大きくなっていった...。 |
Act10 強いられた闘い |
 「そうだ、アリサは...」 エリザは急いで、仰向けに倒れたまま動かないアリサに走り寄った。 |
 しかしアリサのクリスタルからは既に光が失われており、光子エネルギーの反応も全く感じ取れなかった。 「遅かった...ごめんなさい、アリサ...」 もしやと思い、エリザは指先でアリサの股間にそっと触れてみた。皮膚を通して、恥骨がグシャグシャに砕かれているのが感じ取れる。 「なんて酷いことを...」 |
 エリザはゆっくり立ち上がると、右の掌をアリサに向けた。 「傷がひどすぎて、私には治せない...アリサ、もう少しだけ辛抱してね...」 エリザは必要最低限のエネルギーをクリスタルに注ぐと、変身解除のシグナルを送った。 |
 「思ッタ通リダ...。エリザノ現在ノエネルギー残量ハ?」 「残存エネルギー78%。此方ノ思惑程ハ、消費シテイナイ...」 「妹ノ蘇生ハ諦メタヨウダナ。ナラバ戦闘ニ引キズリ込ンデ、徹底的ニ消耗サセルマデダ...」 |
 背後に何かの気配を感じたエリザは、肩越しに振り返った。丘の頂上に青白い影が出現するのが見えた。 |
 「逃がさないわ!」 エリザはガッツ星人目指して、全速で丘の斜面を駆け上がった。 |
 夕陽が周囲の山々を赤く染め上げている。次第に迫る薄闇の中で、エリザはガッツ星人と相対した。 「よくもアリサを酷い目に遭わせてくれたわね..」 「同ジ目ニ遭イタク無ケレバ、我々ガッツ星人ニ無条件降伏スルノダ..」 「誰がするもんですか!」 |
 エリザは素早く踏み込むと、ロングフックを放った。顔面に一撃を喰らったガッツ星人は、思わずよろめいた。 |
 「エイッ!」 続けてエリザは、ガッツ星人に得意の回し蹴りを叩き込む。ガッツ星人の身体は大きく後方へと弾き飛ばされた。 |
 夕暮れの涼風が亜里抄の頬を撫でると、亜里抄はうっすらと目を開いた。一瞬記憶が混乱した亜里抄は、自分が何処にいるのか判らなかった。 |
 その時、亜里抄の傍らに眩しい青白い光が現れた。光は人の形となり、ガッツ星人特有の頭部が見て取れた。 |
 「あ!」 ガッツ星人の姿を見た亜里抄に、先程味わったおぞましい恐怖が蘇った。 |
 「あ..あっ...」 亜里抄は立ち上がって逃げようとしたが、下半身が全く言う事を聞かなかった。それでも亜里抄は自由になる腕だけで、必死に逃げようともがいた。 「無駄ナ足掻キハ止セ...逃ゲラレハシナイ..」 亜里抄に迫るガッツ星人の眼が、怪しく煌めいた...。 |
 「フフフ....」 蹴り飛ばされたガッツ星人は、低い声で笑いながらゆっくりと立ち上がった。 「一体、何が可笑しいの?」 エリザは怒気を含んだ声で詰問した。 |
 「フッ...アレガ見エルカ、エリザ?」 ガッツ星人は立ち上がりながら、谷の向こうの稜線を指差した。 |
 ガッツ星人が指差した先には、別のガッツ星人に羽交絞めにされている亜里抄の姿があった。そのガッツ星人はエリザを挑発するかのように、握っている亜里抄の胸を大きく上下に揺らした。 |
 「アリサ!...卑怯よ、人質を取るなんて!」 胸を弄ばれる亜里抄の姿に、エリザの心の中で怒りの感情が爆発した。 「アレハ御前ノ逃亡ヲ防グ為ノ保険ダ。御前ガ此処デ我々ト闘ッテ勝利スレバ、妹ハ解放シテヤル...」 |
 「許せない...貴方達だけは許さない...」 エリザは握った拳を、怒りに震わせた。だが極度の感情の昂りのせいで、エリザは自分の背後に出現した青い光に全く気が付かなかった。 |
 背後に出現したガッツ星人は、両手を上げるとエリザ目掛けて眩い光線を放った。 「ぐっ!」 光線がエリザの胸を貫いた瞬間、エリザの心臓が一瞬鼓動を停止した。 |
 心臓が不規則な脈を打ち、エリザの全身の神経が痺れたように動かなくなった。 「う...」 全身に震えが走り、エリザは思わず両腕を抱える。 |
 だが敵は容赦しなかった。今度は前方のガッツ星人が光線を放つと、光線はエリザの乳房を覆った。 「あうっ...」 再び襲って来た衝撃に、エリザは思わず呻いた。 |
 2度目の衝撃に、エリザは遂に立っていることができなくなった。ガックリと両膝を突いたエリザは、大きく肩で息をつく。これを見たガッツ星人達は、そっとエリザの横合いに廻り込んだ。 |
 「姉貴、私に構わず逃げて! そいつらは私達の身体の秘密を知ってるんだ!」 亜里抄は思わず大声で叫んだ。亜里抄を羽交絞めにしているガッツ星人は、低い声で笑った。 「逃ゲルモノカ...奴ハ大層妹想イダカラナ...」 |
 「残存エネルギー57%...モウスグ、奴ノエネルギーハ50%ヲ切ル」 「ソノ時点デ、エリザハ最大ノ武器デアル、『スペシウム光線』ヲ使用デキナクナル」 「ソレデ我々ノ勝利ガ決マル...何トシテモ時間ヲ稼ガセルノダ..」 |
 ガッツ星人達が両手をかざすと、その掌から眩い光線が発射された。4本の光線は一瞬にしてエリザの身体を挟み込む。 「あ..ああっ...」 エリザの心臓がまたもや不規則な拍動に陥り、痺れが上半身から身体全体に急速に広がっていく。エリザは必死に腕を振るってもがいたが、光線はまるで生き物のようにエリザの身体にまとわりついて離れなかった。 |
 光線が途切れたことで、エリザの心臓はようやく正常な脈動を取り戻した。しかし全身に伝播した痺れが、エリザの筋肉から動きを奪っている。ブルブルと震える脚で、エリザはかろうじて倒れるのを堪えた。 |
 だがそれで終わりではなかった。再び光線が発射され、またもエリザの身体を襲う。 「ううっ...」 まとわりつく光線を払いのけるかのように、エリザは必死に上半身を捻るが、所詮それでは避けられはしなかった。 |
 光線が途切れた時には、エリザの全身の筋肉が麻痺状態に陥っていた。エリザの大きく上下する肩が、肉体の激しい疲労を物語っている。 |
 「あっ...ああっ...」 再び光線が発射されたが、もはやエリザはもがくこともできなくなっていた。全身を震わせ、天を仰いだエリザの口から、苦痛の喘ぎ声だけが発せられる...。 |
 「姉貴!」 苦しむ姉の姿に、亜里抄は思わず叫んだ。 「アレハ『パラライズ・ビーム』ダ...破壊力ハ無イガ、確実ニ神経ヲ麻痺サセ、筋肉ヲ弛緩サセル...」 背後のガッツ星人は愉快そうに亜里抄の頭上でつぶやいた。 |
 完全に動きの止まったエリザを、再び光線が包む。だが、もはやエリザに抵抗する術は無かった...。 |
Act11 落日の惨劇 |
 光線による縛めが消えると、エリザはガックリと両膝を付いた。身体の激しい震えに、肩からこぼれた髪が揺れる。エリザが何とか立ち上がろうと腕を伸ばした時、胸のクリスタルが黄色に変わった。 |
 「コレデ怖イ物ハ無クナッタ...」 投写スクリーンに移ったエリザの胸を指して、ガッツ星人が満足そうに頷いた。 「フム..後ハ地球人向ケノ見世物ダケダナ...」 |
 両脚の痺れが取れないエリザは、それでも何とか上半身を起こした。 「あ...」 だがそれを待っていたかのように、背後のガッツ星人がエリザの両腕を掴み、無理矢理その身体を引き起こした。 |
 羽交絞めにされたエリザの頬を、ガッツ星人が指先で撫でた。 「コレカラガ見世物ノ始マリダ。妹ヲ救イタケレバ、最後マデ耐エ見セロ...」 「見世物ですって?」 乳房に加えられる痛みに耐えながら、エリザは気丈に詰問した。 「地球人共ニ、御前ガモガキ苦シム姿ヲ見セテヤルノダ。守護神ト崇メル御前ガ惨メナ敗北ヲスレバ、愚カナ地球人共モ抵抗ヲ諦メルダロウ...」 「それじゃ、最初から...ガイガンも貴方達の仕業だったのね..」 |
 「サア、始メルゾ!」 ガッツ星人は拳を握りしめると、エリザの下腹部を鋭くえぐった。 「あうっ!」 予想していなかった衝撃が全身に走り、エリザの意識が一瞬遠くなった。 |
 エリザの唇から、一筋の血が滴り落ちた。それを見たガッツ星人は、満足そうに頷く。 「子宮ノ痛ミハドウダ、エリザ? ドコマデ耐エラレルカ、楽シミダ...」 |
 再び突き出された拳が、エリザの子宮にめり込む。 「うぐっ!」 痛みに天を仰いだエリザの口から、赤い血飛沫が吹き上がった。 |
 「姉貴...」 エリザの子宮の叫びに呼応したのか、亜里抄の下腹部に一瞬痛みが走った。それがどれほど激しい苦痛か、身を以って体験した亜里抄には良く解っていた...。 |
 「我々ノ新シイ武器ヲ披露シヨウ..御前ノ為ニ特別ニ造ッタモノダ...」 そう言いながらガッツ星人達は、ゆっくりと後退して間合いを取った。 |
 ガッツ星人達は片膝を突くと、片手を掲げた。その掌から緑色の光線が放たれ、前後からエリザの子宮を貫いた。 「ぐっ!」 与えられた衝撃の大きさに、エリザの身体は弓なりに反りかえった。 |
 下腹部の激しい苦痛は、エリザがそれまで味わったことのない程、苛烈なものだった。倒れるのを防ぐ為に、エリザは震える両脚に全ての力を込めなければならなかった。 |
 ガッツ星人達は反対側の手で、狙い澄まして第2撃を放った。 「あうっ!」 悲鳴と共に、エリザの身体が反射的に反り返る。 |
 天を仰いだエリザの口から、赤い血の塊が勢い良く吐き出された。血は細かな粒子となって、音も無く地上に落ちて行った。 |
 「あ..あれは...」 吐血したエリザの姿に、亜里抄は言い知れぬ恐怖を覚えた。 「アレハ『振動波ビーム』ダ...目標ノ内部ニ強制振動ヲ発生サセ、内部カラ物質ヲ破壊スル...」 ガッツ星人は得意そうに、亜里抄の耳元でつぶやいた。 |
 「子宮温度ガ急速ニ上昇シテイル..予測通リダナ...」 スキャン画像を指してガッツ星人が頷いた。 「ダガ、マダ子宮ハ活動シテイル..徹底的ニ攻撃サセロ...」 指揮官は冷徹に言い放った。 |
 「ドウシタ、モウ終リカ? ソレナラ残リハ、妹ニ代ワッテモラオウカ?」 ガッツ星人は馬鹿にしたような仕草で、エリザを挑発した。 「ま..まだ..負けては..いない...」 全身を震わせながら、エリザは必死に立ち上がった。 |
 「アリサ..だけは...」 エリザはたとえ自分がどのようになっても、妹だけにはこの苦痛を味あわせたくなかった...。 |
 だがエリザの想いも、冷酷な敵は一切構わなかった。再び光線が子宮を貫くと、エリザの身体が硬直した。 |
 前後から浴びせられる光線が、少しづつ子宮の細胞を破壊して行く。破裂した細胞から放出される光子エネルギーが、次々とエリザの体内機構を自ら壊していった...。 |
 「う...」 エリザが吐血するたびに、亜里抄の子宮に針が刺さるような刺激が走った。何もできないもどかしさに、胸を抑えている手に思わず力が籠る。亜里抄の動揺を感じ取ったガッツ星人は、亜里抄の乳房を軽く揺すった。 「落チ付ケ..苦痛ヲ味ワッテイルノハ、エリザダ...」 |
 激しい苦痛が、遂にエリザの両脚から自由を奪った。エリザの身体がゆっくりと、前のめりに崩れ落ちる。苦痛に喘ぐエリザの肩は、激しく上下に波打っていた。 |
 半ば麻痺した身体で、エリザは何とか立ち上がろうともがいた。その時、エリザの胸のクリスタルが赤く変わり、危険を知らせる警告音を発し始めた。 「も..もうエネルギーが...」 点滅するクリスタルが、エリザの心を激しく動揺させた。 |
 「エネルギーを...補充し..なくては...」 エリザはまだ動かせる両腕だけを使い、太陽の方角へ這い始めた。エリザがまだ動けることにガッツ星人達は唖然とし、もがきながら這い続けるエリザを凝視した。 |
 両膝を突きながらも、エリザは何とか上半身を起こした。大きく両手を広げ、陽光にむけて胸を開いた。 「お願い..私に..エネルギーを...」 エリザは心の中で赤い太陽に祈った。 |
 だが西の地平線近くまで傾いた夕陽では、必要なだけのエネルギーを得ることは到底不可能だった。夕陽に赤く染まった空に、クリスタルの警告音だけが空しく響いていた...。 |
Act12 悲嘆の十字架 |
 投写スクリーンを前にして、ガッツ星人が低い声で笑った。 「愚カ者メ..我々ガエネルギーノ補充ヲ許ストデモ思ッテイルノカ...」 「ダガ、マダ勝負ヲ諦メテイナイヨウダ」 「フム...デハ嫌ト言ウ程、思イ知ラセテヤロウ...」 |
 無防備なエリザの背後からガッツ星人の腕が伸び、エリザの豊満な乳房を握り絞めた。 「あっ...」 乳房の痛みに精神集中を妨げられたエリザは、思わず顔をしかめた。ガッツ星人はエリザの乳房を握ったまま、強引にその身体を引き上げる。 「は..放して...」 エリザは縛めから逃れようともがくが、乳房に掛った手は外れない。ガッツ星人は身体をエリザのヒップに密着させ、下半身の動きを封じてしまった。 |
 「今ノ太陽傾斜角度デハ、言ウニ足ル程ノエネルギーハ得ラレナイ...違ウカ、エリザ?」 前方に廻り込んだガッツ星人は愉快そうに笑った。 「それで...この場所と..時間を...」 エリザは知っていた筈のガッツ星人の狡知に、あらためて恐怖を覚えた...。 |
 「馬鹿ナ小娘ダ...自分ノ愚カサヲ、身体デ学ブガ良イ!」 そう言い放つと、ガッツ星人はエリザの子宮を狙って鋭いパンチを見舞った。 「ぐっ!」 少し和らぎかけていた子宮の苦痛が、再びエリザを襲った。 |
 「うっ!」 鈍い音と共に、2撃目がエリザの子宮にめり込む。苦痛に歪んだエリザの顔が、夕暮れの空を仰いだ。 |
 「遊ビハコレマデダ...ソロソロ終幕ト行クカ..」 ガッツ星人達は顔を見合わせて頷くと、後退してエリザとの距離を開いた。そして膝を付くと、光線を発つ構えを取った...。 |
 ガッツ星人の掌から緑色の光線が伸び、エリザの子宮を捉えた。だが先程と違い、今度の光線は倍の4本に増えていた。 「!」 あまりの衝撃の大きさに、エリザの口から血飛沫が飛び散る。 |
 ガッツ星人達は途切らせることなく、執拗にエリザの子宮に光線を浴びせ続ける。強制振動を起こした子宮の細胞は、度重なる衝撃に次々と破裂していった。 |
 「うっ!」 下腹部に痛烈な痛みが走り、亜里抄は思わずのけぞった。それは亜里抄が経験したことの無い程、苛烈なものだった。必死に助けを求めるエリザの無意識の思念波が、亜里抄に同じ痛みを錯覚させたのだ。苦しむ姉を助けられないもどかしさが、亜里抄の心を苛んだ。 |
 これまで散々に傷付けられてきたエリザの子宮が、遂にその悲鳴を上げた。子宮壁に幾つもの細かな亀裂が生じ、噴出した大量の血液が下部のヴァギナに流れ込んだ。既に神経系が麻痺しているエリザには、どうしようもなかった。そしてヴァギナに大量に流れ込んだ血は、遂には勢い良く膣外に放出された。 |
 短い中断の後、再び振動光線がエリザの子宮に注がれた。身体を震わせるエリザの上と下の両方の唇から、鮮血が勢いよくほとばしる。だが今のエリザに、それを止める術は無かった...。 |
 「エリザノ子宮温度、更ニ上昇中...イズレ子宮ガ肉片ニ変ワルカ、サモナクバ壊死スルカダナ...」 「明日ニハ処刑サレル身ダ..大シタ違イハアルマイ...」 ガッツ星人達はスクリーンを見ながら満足そうに頷いた。 |
 光線が消えると、エリザの身体の苦痛は少し和らいだ。しかし、股間から滴り落ちる鮮血は止まらず、むしろ放出される量が増えていた。足下の血溜りは、次第にその面積を増していく...。 |
 「くっ...」 亜里抄はエリザの悲惨な姿に、思わず横を向いて目を閉じた。亜里抄の身体全体が、悔しさと悲しみで細かく震えている。 「良ク見テ置クノダ、アリサ...」 ガッツ星人は亜里抄の胸を掴む手に、少しだけ力を込めた。 「姉ノ姿ヲ見ルノハ、今日ガ最後ニナル...」 |
 再び光線が発射されて子宮を包むと、エリザの束の間の安らぎは消えた。子宮から発せられる激しい痛みが、絶望と共に再びエリザの全身に広がっていった...。 |
 緑色の光線が下腹部を舐め回す毎に、エリザの両方の唇から血飛沫が上がる。ガッツ星人は鮮血の噴水を楽しむかのように、笑いながらエリザの下腹部に光線を注ぎ続けた。 |
 「子宮温度ガ逆ニ低下シ始メタ...子宮ノ細胞組織ガ死ニカケテイル...」 「エネルギー残量モ、10%ヲ切ッタ...ドウヤラ決着ガ付イタヨウダナ...」 |
 胸のクリスタルは赤く点滅し、危険域に入ったことを示す甲高い音が鳴り続けている。股間から滴る鮮血の流れが、足下に赤い血の池を作っていた。だが血液の大量流失は、唯でさえ残り少ないエネルギーを喪失することを意味していた。次第に迫りくる最期の時に、エリザの心は深い絶望感で覆われていた。救いを求めるように天を仰いだエリザの頬に、2筋の光る涙が流れ落ちた...。 |
 亜里抄の視線の先に、終わりのない苦痛に喘ぐエリザの姿があった。鮮やかな緑色の光線が断続的に放たれ、前後からエリザの下腹部を貫く。 「もうやめて! 勝敗はとっくに付いているじゃないの!」 悲鳴に似た亜里抄の声が、夕暮れの谷に木霊した...。 |
 「アノ惨メナ姿ヲ見レバ、地球人共モ抵抗ヲ諦メルダロウ...」 ガッツ星人の言葉には、あわれみは欠片も感じられ無かった。 「姉さん...ごめん..私のせいで...」 目から溢れ出た涙が、亜里抄の頬を流れ落ちた。 |
 いつしか子宮の激痛は、どんよりとした鈍痛に変っていた。だがそれはエリザのエネルギーが、枯渇しつつあることを意味している。次第に薄れて行くエリザの意識の中に、クリスタルが発する音だけが空しく響いていた。 |
 全ての希望が打ち砕かれたエリザの脳裏に、懐かしい母の面影がよぎった。そして子供だった頃の懐かしい故郷の記憶が、走馬灯のように浮かんでは消えて行く。意識が暗黒の淵に沈む直前に浮かんだのは、妹アリサの笑顔だった。 「アリサ...ごめん..ね...」 そして意識の全てが闇に飲み込まれた...。 |
 クリスタルの音が消えると、周囲は瞬時にして静寂に包まれた。クリスタルの灯りは消え、両眼の光も既に失われている。股間の出血は糸のように細くなり、やがて止まった。最後の血の雫が足下の血溜まりに落ち、血の波紋を作って消えていった...。 |
 エネルギーを完全に喪失したエリザの身体は、固い岩石のように硬直した。不自由な脚で辛うじて取っていたバランスが失われ、エリザの身体は音を立てて大地に伏した。 |
 「終ワッタナ...」 エリザ姉妹に完全な勝利を収めたにも関わらず、ガッツ星人達に喜びの感情は見て取れなかった。 「予定通リ、エリザヲ磔ニ...以後、計画ハ第4段階ニ入ル...」 |
 夕闇の空に、ガッツ星人の円盤が姿を現した。円盤の下には、奇妙な形をした、半透明の十字架が吊下げられていた。 |
 「う...」 ガッツ星人が胸を抑えていた手を外すと、支えを失った亜里抄の身体は、よろけて地面に両膝を付いた。 「モシ地球人ガ降伏勧告ヲ拒否スレバ、エリザハ明日ノ夜明ケニ処刑スル...」 ガッツ星人は亜里抄をからかうように、足の裏で亜里抄の尻を強く押した。 |
 恥骨が折れ、下半身が麻痺している亜里抄は、抵抗もできずに地面に突っ伏した。 「姉ノ生命ヲ救イタケレバ、地球人共ヲ説得スルノダナ...」 そう言い残すと、ガッツ星人の姿は夕闇の中に消えていった...。 |
 亜里抄は両腕を使い、なんとか上半身を起こすことができた。その時、夕空に磔にされたエリザの姿が亜里抄の目に入った。 「姉さん!」 後悔と悲しみの強い感情が、亜里抄の顔を歪ませた。 |
 地平線に沈み行く太陽が、磔にされたエリザの身体を赤く照らし出していた。既に周囲の山々は闇に沈み、死のような静寂があたりを支配していた...。 |
Act13 混沌の夜 |
 長官室に入ったカタギリは、部屋全体に漂う、張り詰めた空気を感じた。 「カタギリ君。先程ガッツ星人から我々地球防衛軍に対し、降伏勧告を送ってきたのは聞いているな?」 「知っています。奴等の存在を察知して対策を練っていたのですが、敵に先手を打たれました..」 「過ぎたことは仕方ない...だがエリザを失えば、我々の防衛力は極度に低下してしまう。是が非でもエリザを救出せねばならん」 「エリザが囚われていると思われる地点には、既に戦闘部隊を出動させてあります」 ワタヌキ参謀の声からも、いつもと違う強い緊張が感じ取れた。 |
 「ガッツ星人はエリザを、明日の夜明けに処刑すると言っている。とにかく時間が無い。エリザ救出作戦の指揮は君に全て任せる」 そう言うと、司令官は立ち上がって制帽を手に取った。 「私はこれから首相の所に行かねばならん。全ての責任は私が取る。カタギリ君、頑張ってくれ..」 |
 亜里抄は陽が暮れる直前に、防衛軍の先遣隊に発見されて、近くの市民病院に搬送された。病院に収容されて間もなく、警備隊のミズキ隊員が見舞いに来た。その理由をミズキはハッキリ言わなかったが、もちろん亜里抄には判っていた。 「ありがとう、あなたの話はとても参考になったわ...」 ミズキはボイスレコーダーを仕舞うと、亜里抄に微笑んだ。 「私はもう戻らなくちゃ...」 |
 「亜里抄ちゃん、あなたのお姉さんは必ず見つけ出すわ。安心して休んでね..」 「ありがとうございます...」 亜里抄は固い表情のまま、頭を伏せた...。 |
 「急がなきゃ...」 ミズキが帰ると、亜里抄はすぐにベッドから起き上がって身支度を始めた。 「ガッツの奴、明日の夜明け..って言ってたよな...」 |
 既に夕食時間を過ぎていたこともあり、病院のエントランスホールは人影は少なかった。亜里抄は松葉杖を突きながら、這うように入口に向った。 |
 オペレーションルームの大型モニタには、ガッツ星人が送り付けてきた映像が映し出されていた。カタギリ自身は既に何回も見ていたが、隣に立っているキサラギ博士はじっと喰い入るように映像を見つめている。 「過去にも多くの戦士達が、地球の為に闘ってくれた。だが女性の戦士というのは、なにしろ今回が初めてだ...」 カタギリはゆっくり首を廻すと、キサラギ博士の顔を見つめた。 「そこで過去の戦士達を研究してきた、博士の協力をお願いしたいのです。しかも博士自身が女性ということもある...」 |
 「これまでの調査結果から、彼等が我々に非常に似通った種族であることは確かです。そしてエリザが女性であるという判断も、まず妥当だと思います...」 「この映像から判断できることは?」 「これは推測になりますが、ガッツ星人はエリザを調査・研究したのだと思います。エリザの下腹部に攻撃を集中していますから」 「そこがエリザの弱点だと?」 「おそらく。攻撃されている箇所は、人類の女性で言えば子宮がある場所です。もっとも私達の場合は、これほど苦しむことはありませんが...」 |
 「今、部下のサクマがエリザにエネルギーを送り込む装置を改良中です。しかしあまり時間がない上に、情報も足りない。博士、サクマを助けてくれませんか...」 「判っていますわ。私達にはこれまで地球を護ってくれた、エリザを救う義務がありますもの..」 「博士、お願いします...」 |
 タクシーを降りた亜里抄は、よろけながらマンションの入り口に向かった。外出禁止令が出されているのか、マンションの周囲には歩いている人影も無い。 |
 部屋に戻った亜里抄は、勉強机の背後に廻った。床の上には、奇妙な輝きを放っている円盤があった。 「持ってきておいて良かった...」 前回のこともあり、亜里抄は宇宙船への転送装置を自宅に持ってきていたのだ。 |
 円盤の上に乗った亜里抄は、目を閉じて精神を集中した。思念波に感応した円盤から、光の柱が立ち上がる。光が亜里抄の身体を包み込むと、亜里抄の姿は掻き消すように消えた...。 |
 亜里抄が目を開けると、そこはもう故郷から乗ってきた宇宙船の内部だった。円盤から降りた亜里抄は、足を引きずりながら蘇生装置に向かった。 |
 「隊長! ファルコンから通信です」 「チャンネル3に廻せ」 カタギリはヘッドセットを取り上げると、左耳にあてた。 |
 「こちらファルコン1! 泉ヵ丘北方10キロ地点の上空にエリザを発見!」 |
 カタギリは一瞬頭をかしげた。 「タカハラ、レーダーで確認してみろ。反応はあるか?」 |
 「これは...隊長、レーダーに反応がありません!目視ではハッキリ視認できるのですが...」 |
 「やはりな...タカハラ、エリザの廻りを数回旋回飛行してから、基地に帰還せよ。代わりの偵察機を出す」 ちょうどその時、ミズキがオペレーションルームに入ってきた。 |
 「エリザが見つかったのですか?」 「我々を混乱させるための囮だ...たぶんホログラム映像だろう。実体は他の場所にある筈だ」 「そう言えば過去の記録にも...」 「うむ。だがこれは興味深い。もしかすると我々にも付け入る隙があるかもしれん...」 ミズキはカタギリの言葉の意味を探るように、その顔をじっと見つめた。 |
 「念の為もう一度言いますけど、ビームの発射継続時間は10秒までに限定してください。それ以上だと発振装置のクォーツが溶けてしまいますから」 「大丈夫、判っていますよ、博士。御協力有難うございました..」 サクマは一礼をすると、タカハラの後に続いて装甲車に向かった。 |
 出撃して行く特殊装甲車を見送りながら、キサラギは複雑な想いだった。夜明けには地球の命運を賭けた戦いが行われる。だが隊員達が生きて帰れる保証はどこにもない...。 |
 人気の無い静寂の荒れ地を、月光が明るく照らし出していた。カトウ達が足下の草を踏みしめる度に、虫の音が止まる。カトウのヘッドセットに、小さく警告音が入った。 「止まれ! エネルギー反応だ...このすぐ先に防御シールドがある」 偵察隊全員の足が止まり、周囲を警戒する。 「カトウ隊員...あれを!」 偵察隊の指揮官が、前方を指差した。 |
 カトウが双眼鏡で捉えたものは、まさに探し求めていたものだった。 「エリザだ...こんな近くに居たとは、まさに灯台下暗しだな..」 |
 切り立った崖のすぐ下に、透明な十字架に磔にされたエリザの姿があった。その肌が月光を反射して鈍い光を反射している。だがエリザ自身には、生命活動らしい兆候は何も認められなかった。 |
 「こちらカトウ...エリザを発見しました。泉ヵ丘南方の崖の下、ポイントD−14の付近です...」 まるで周囲に聞かれるのをはばかるように、カトウの声はひどく小さかった。 |
 「こちらカタギリ、そちらの位置をマークした。よくやったぞ」 背後にいたミズキが大きく溜息をついた。 「私も今からそちらに行く。サクマ達は既に出発した。1時間後にポイントB−3で合流だ...」
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Act14 運命の夜明け |
 狭い山道の路肩には、既に戦車や装甲車がぎっしりと並んでいる。その脇をすり抜けるようにして、カタギリはジープを飛ばした。 |
 「作戦開始は0525時。まず敵の防御シールドを無力化し、機甲部隊と共に防衛ライン内部に突入する。ただし外からシールドを無力化できる時間は1分間だけだ...」 カタギリは緊張している隊員達の顔をゆっくりと見渡した。 「成功の鍵はタイミングとスピードだ。日頃の訓練で培ってきた、自分達の技量を信じて挑んで欲しい。では発進準備にかかれ!」 |
 機甲部隊との最後の調整を終え、カタギリは指揮所に向かった。 「突入した部隊が防御シールドを破壊できなかった場合、私の部隊だけでなく、中佐の部下も全滅してしまいますが...」 後ろを歩く機甲大隊の指揮官の顔が、ひどく曇っていた。 「覚悟の上だ、大尉。俺は部下達を信じている...」 |
 壁の時計が5時20分を廻った時、ワタヌキ参謀が司令に声を掛けた。 「司令...そろそろ作戦開始時刻です」 「む...もうそんな時間か...」 クロキ司令の顔は少しやつれて見えたが、いつもと変わらぬ振る舞いだった。 |
 「待つ身はつらいな、ワタヌキ君...」 司令は椅子から立ち上がると、壁の時計を見上げた。 「信じよう..彼らを...」 |
 サクマがエンジンのスターター・ボタンを押すと、強力なガスタービン・エンジンが目を覚ました。その大きな振動と騒音が、ヘルメット越しにも聞き取れる。 操作パネルをチェックしたサクマは、冷静にインターコムを繋いだ。 「こちらサクマ。エンジン異常無し...」 |
 後方の座席ではタカハラがエネルギー発生装置の制御コンソールをチェックをしていた。 「こちらタカハラ、エネルギー発生装置異常無し。現在出力82%で、更に上昇中。発射可能レベル到達まで、あと3分」 |
 装甲車のエンジン音が、ジープで待機していた2人の意識をはっきりさせた。 「作戦開始まであと3分。エンジン・スタート!」 セルスイッチを廻すと、ジープの6気筒エンジンも息を始めた。ミズキが2、3度軽くアクセルを踏むと、エンジンは機敏に反応した。 |
 一列に並んだ戦車が次々とエンジンを掛けると、静かだった周囲は瞬時にして騒音に包まれた。 「始まった...」 亜里抄は草の茂みに隠れながら、最後尾の戦車にそっと近付いた。 |
 戦車長が上部扉を閉めるのを見た亜里抄は、戦車に駆け寄ると勢いよくジャンプする。 「つ...」 勢い余った亜里抄は、装甲板に腹をしたたかに打ちつけた。しかし何とか落ちる防ぐと、戦車の上に這い上がった...。 |
 未明の空に、防衛軍の中距離誘導ミサイルが飛翔していく。しかしこのミサイルの弾頭は通常のものではなかった。最後の照会地点を過ぎると、ミサイルは最終接近コースに乗った。目標まではあと少しだった...。 |
 カタギリのインターコムに、ミサイルからの信号音が入った。カタギリは左手を挙げると、戦隊指揮官に合図を送った。 「突入開始!」 「戦車前進! 突入せよ!」 戦隊指揮官は甲高い声で通信機に叫んだ。 |
 ミサイルが防御シールドに衝突し、轟音と共に赤い炎球が出現した。それまで目に見えなかった防御シールドが一瞬光り輝くと、フッと消えた。 |
 「地球人ノ攻撃デス。防御シールドガ無効化サレマシタ。現在シールド再構成中...」 「ヤハリ来タナ...攻撃隊ヲ出セ。奴等ノ目前デ、エリザヲ処刑シテヤルノダ...」 |
 でこぼこの荒れ地を全速で走る戦車の振動は、亜里抄の想像を超えていた。車体が跳ねる毎に、亜里抄の身体が装甲板の上で大きくバウンドした。 「ちょ..ちょっと...これ...」 亜里抄は振り落とされないように、片腕を荷物用ラックに廻して必死にしがみ付いた。 |
 朝焼けに染まる稜線を越え、2機の小型円盤が現れた。奇妙な飛行音を立てる円盤は、ゆっくり廻り込むとエリザの正面に静止した。 |
 円盤から赤い稲妻が発射され、磔にされているエリザの身体を捉えた。2筋の光線がエリザの身体を舐めるように移動して行き、最後に胸と下腹部の箇所で止まった。 |
 エリザの身体に注がれる光線に、指揮官は満足そうに頷いた。 「胸ノクリスタルト子宮..コノ2ツヲ完全ニ破壊スレバ、エリザハ死ヌ...」 |
 「まずい..先にエリザを殺るつもりか...大尉!エリザを攻撃している円盤を片付けさせろ!」 |
 戦車の砲塔が旋回し、砲身が上を向く。 「やばっ!」 亜里抄が慌てて飛び降りると、初弾の強烈な爆風がその背中を押した。 |
 エリザ攻撃の為に空中に静止していた円盤に、戦車隊の砲弾が横殴りの雨のように降り注いだ。2機の円盤はあっけなく火を吹くと、力無く地上に墜落していった。 |
 「ミズキ、急げ!戦闘はもう始まっているぞ!」 携帯ロケット発射器を担いだカトウは、小走りに駆けだした。 「はい!」 ミズキもロケットの弾薬ケースを抱えて必死にあとに続く。 |
 ビデオスコープを覗いていたサクマは、ようやく来たチャンスの到来に心臓の鼓動が速くなった。 「邪魔物は消えました、目標オールクリア。胸にあるクリスタルを狙って下さい...」 |
 タカハラは落ち付いて照準器を操作する。最短の距離を動いたセンタークロスが、その中心にエリザのクリスタルを捉えた。 |
 「照準良し!ビーム出力105%、行くぞ!」 |
 特殊装甲車のパラボラ型発射装置から眩い光が伸び、まだ明けきらない朝の天空を切り裂いた。 |
 エネルギー光線は正確にエリザのクリスタルを捉え、大量の光子エネルギーを注ぎ込んで行く。 |
 発射持続限度の10秒間が過ぎ、エネルギー注入が中断した。しかしエリザのクリスタルは赤く点滅を始め、危険を告げる警告音が鳴り始めた。エリザの指先がピクリと動き、その顔がゆっくりと天を仰いだ。 |
 「いいぞ!エリザが生き返った! もう一回お願いします、先輩!」 |
 再びビームが発射され、エリザの体内にエネルギーが注ぎ込まれる。既にエリザは意識を取り戻しており、全身に流れていくエネルギーを感じ取っていた。 |
 そしてビームが消えた時、エリザは蓄積した光子エネルギーの一部を体外に放射した。光子エネルギーは、十字架を形成していた結晶の構造を次々と破壊していった。 |
 十字架が消え去ると、支えを失ったエリザの身体は後方に崩れ落ちた。 「う...」 だが身体に感じるこの痛みこそ、自分が生き返ったことを感じさせる証だった...。 |
Act15 苦闘の果て |
 「フム..昨日ノ戦闘デ大分弱ッテイルヨウダナ...」 スクリーンに映るエリザの様子に、指揮官は落ち付いて命令を出した。 「戦闘員ヲ出セ...エリザニ止メヲ刺スノダ..」 |
 「クリスタルが黄色だ...エネルギーが足りなかったか?だが回路が溶けちまって、もう発射はできないぞ...」 タカハラは思わず舌打ちをして言った。 「いや、注入したエネルギー量は十分の筈...おそらく昨日受けたダメージが大き過ぎて、身体が回復していないんだ...」 サクマの顔も緊張に固くこわばっていた。 |
 何とか立ち上がろうともがくエリザの前に、2つの青白い光が現れた。昨日味わったばかりの恐怖の記憶に、思わずエリザの身体が震えた。 |
 後方から乳房を掴まれたエリザは、無理矢理引き起こされた。前方のガッツ星人がゆっくりとエリザに近付く。 「コレカラ我々自身ノ手デ、御前ヲ処刑シテヤル。地球人達ノ目前デナ...」 |
 動きを封じられたエリザの下腹部に、ガッツ星人の拳が突き刺さる。忘れかけていたあの激痛が、再びエリザを襲った。 |
 「うぐ!」 ガッツ星人の拳が子宮を捉える度に、エリザの口から舞い上がった血飛沫が、高原の朝の空に舞う。それは昨晩の悪夢の繰り返しだった...。 |
 崖の向こう側からガッツ星人の円盤が現れると、戦車を目掛けて攻撃を開始した。あっという間に、数台の戦車が轟音と共に炎に包まれる。 だが亜里抄の意識は、私刑にあっている姉の方にあった。エリザの口から血の噴水が吹きあがると、亜里抄の全身に鳥肌が立った。 「姉貴!」 |
 「アリサ...私は..まだ耐え..られる...先に..円盤を...」 亜里抄の存在を感じ取ったエリザは、襲い来る激痛に必死に耐えながら思念波を送った。 |
 「うん、判ったよ...」 亜里抄は向きを変えると、大きく両手を掲げた。足下から光の渦が巻き上がり、これに包まれた亜里抄の姿が掻き消すように消えた。 |
 突然スクリーン上に出現したアリサの姿に、指揮官は動揺した。 「マタ来タカ、諦メノ悪イ小娘メ...奴ニ全火力ヲ浴ビセロ!」 |
 だがアリサも攻撃を予測していた。円盤に緑色の閃光が走った瞬間、アリサは防御バリアを張る。間一髪で間に合ったバリアは、円盤から放たれた光線を受け止めた。 |
 「お返し、行くよ!」 アリサは両手を前に突き出し、体内のエネルギーを両方の掌に集中させた。 |
 アリサの手に煌めく光球を見て、指揮官が怒鳴った。 「船ヲ軌道上マデ退避サセロ、急ゲ!」 だが部下のガッツ星人達は緊急脱出扉に向けて、大慌てで逃走を始めていた。 |
 アリサの放った光球が円盤に命中すると、轟音と共に円盤が振動した。円盤は制御を失い、フラフラと地上に落下して行った。 |
 突然起こった爆発に、ガッツ星人達は音のした方向を振り返った。爆発のスペクトルから、ガッツ星人達にはすぐに自分達の母船だと判った。 |
 「オノレ...コノ代償ハ、御前ノ生命デ償ッテ貰ウゾ!」 怒ったガッツ星人は、猛烈な勢いでエリザの子宮を叩き始めた。エリザの股間からは鮮血が、赤い噴水のように勢いよく噴出した。 |
 ガッツ星人は狂ったように、執拗にエリザの下腹部を叩き続ける。その時ガッツ星人の背中に、爆発音と共に赤い炎が噴きあがった。 |
 「命中だ!装填急げ、ミズキ!」 「ハイ!」 ミズキは重い弾頭を拾い上げ、ロケット発射筒の後部に装填した。 |
 「小癪ナ地球人メ...エリザト一緒ニ片付ケテヤル...」 ロケット弾を浴びたガッツ星人は怒りもあらわに、カトウ達に向けて破壊ビームを放った。 |
 光線が地面に命中し、強烈な爆風がカトウ達を襲った。カトウの身体は紙屑のように、後方に吹き飛ばされた。 |
 「そこまでよ!」 ガッツ星人が上を見上げた瞬間、アリサのキックがガッツ星人の頭を捉えた。たまらずガッツ星人は、半回転して背中から地面に落ちた。 |
 「調子ニ乗リオッテ!」 エリザを拘束していたガッツ星人は、エリザの身体を放すとアリサに向かって突進した。支えを失ったエリザは、前のめりに地面に崩れ落ちる。 「ブーメラン!」 アリサが右手を天に掲げると、その手には赤く輝く三日月が現れた。 |
 「サセルモノカ!」 ガッツ星人はアリサの顔目掛けてパンチを繰り出した。アリサは前方に踏み込んで身を屈め、間一髪でこれを受け流した。 |
 「エイッ!」 掛け声と共にアリサは小さく半回転すると、逆手に持ったブーメランをガッツ星人の腹に突き刺した。そして許す限りのエネルギーを、全てブーメランに注ぎ込む。ガッツ星人の身体は、放電音と共に眩い閃光に包まれた。 |
 閃光が途絶えると、ガッツ星人の両手がだらりと下に落ちた。 「コウイウ..使イ方ガ..アルトハ...」 そしてガッツ星人の両眼から光が消えた。 |
 アリサはブーメランをガッツ星人の腹から引き抜くと、先程蹴り倒したガッツ星人の方にゆっくりと歩み寄った。 「ドウヤラ、我々ノ負ケラシイ..早ク止メヲ刺セ...」 腰を付いたガッツ星人の声は冷静だった。 |
 「待って..殺しては..だめ...」 エリザの声に、アリサは驚いて振り返った。 「姉さん..こんなひどい目に遭ったのに何故?...」 |
 「もう暗黒は嫌...意味の無い..殺し合いは...」 苦しい声を絞り出したエリザは、そっと頭を左右に振った。胸のクリスタルが奏でる悲しげな音が、高原の風に乗って散っていった...。 |
 アリサはガッツ星人の方に顔を戻すと、空の彼方を指差した。 「行きなさい...二度とこの星には来ないで..」 |
 「敵ニ情ケヲ掛ケラレルノハ、我々ニトッテ最大ノ屈辱...コノ借リハ必ズ返ス..覚エテイルガイイ...」 ガッツ星人はゆっくりと胸の前で両腕を組んだ。その姿は青白い光に包まれ、やがて掻き消すように見えなくなった。 |
 ガッツ星人の姿が消えるとアリサは、地面に伏したまま動かない姉の所へ駆け寄った。エリザの胸のクリスタルは、既に危険信号を発している。 「姉さん..しっかりして...」 エリザを抱き起したアリサは、そっとエリザの身体を揺すった。 「終わった..のね...」 大量の出血にも関わらず、エリザはアリサに優しく微笑んだ。 「うん、終わったよ...悪夢はもう終わった...」 |
 「...戻りましょう...みんなが..待ってるわ...」 「うん...」 姉妹はそれぞれ、分子転換を解除した。姉妹が消え去った高原には、ガッツ星人の遺骸だけが残されていた...。 |
Act16 新たなる誓い |
 変身を解いた二人だったが、絵里はピクリとも動かなかった。亜里抄が顔を覗きこむと、絵里は目を閉じたまま気を失っていた。 「姉貴...痛かったんだね...」 戦士として戦ってきた姉が、これまでにどんな辛い思いをしてきたか、亜里抄はようやく理解できたような気がした。 |
 その時、亜里抄はこちらに近付いて来る人影に気付いた。特徴のあるヘルメットから、警備隊員だということはすぐに判る。 「オーイ!こっちだよ〜」 亜里抄は手を挙げて注意を引くと、警備隊員達はすぐに駆け寄って来た。 |
 恐怖と緊張のあの日から、既に一週間が過ぎた。防衛軍極東基地の空にも、少しばかり秋の気配が感じられる。今日は基地の病院に入院している絵里の所に、カタギリとミズキが見舞いに来ていた。 |
 「基地中探しても、一番眺めの良い場所は此処だな...」 サンルームの大きな窓越しに開ける展望に、カタギリは目を細めた。 「でも絵里が突然行方不明になった時は、ホントに心配したわよ」 ミズキが大げさに溜息を付いてみせる。 「すいません...」 車椅子の絵里が申し訳なさそうに肩をすぼめた。 |
 「絵里..君は自分で何でも背負い込む、悪い癖があるようだな...」 カタギリは絵里に近付くと、そっと肩に手を置いた。 「だが警備隊員は君だけじゃない。更に言えば、防衛軍全体が地球を護っているんだ...少しは自分の仲間を信じろ...」 「はい..申し訳ありません...」 顔を伏せた姉の横顔を見ながら、亜里抄が思わず微笑んだ。亜里抄は姉が説教される所など、ついぞ見たことがなかった。 |
 「ん..そろそろ勤務時間だ...じゃあ、ゆっくり休養したまえ」 カタギリは腕の時計を見ると、扉の方に動きかけた。 「あ、そうそう亜里抄君。君は単車に乗るようだが、戦車の上に乗るのだけは止めるんだな。ヘタをすると首の骨を折る...」 「え?...あ、はい...」 皆からの刺すような視線を感じながら、今度は亜里抄が下を向いた。 |
 カタギリ達の姿がドアの向こうに消えると、絵里は亜里抄の顔を見て言った。 「戦車って..何の話?...」 「え?..ああ、きっとあのオジサンの人違いだよ、私に似てる人って、結構いるじゃん?」 亜里抄を見つめる絵里の眼が、いつもより険しくなった。 「亜里抄...ほんと、困った子ね...」 |
 「さ、せっかく昇って来たんだ。外の景色でも見ようよ」 亜里抄は車椅子を押して、窓際まで絵里を運んだ。展望窓の外には、秋の気配を漂わせた丘陵が見渡せる。青空をファルコンが一機、低高度で横切って行った。 「あ、あれ、警備隊の飛行機じゃない? タカハラさんだ..姉貴のこと、心配してるみたい...」 「そうね...私にも感じるわ...」 絵里は自分の心のなかに、心地よい温かさが伝わってくるのを感じた。 |
 「これからは、もうあの悪夢を見なくて済みそうだね...」 外の景色を眺めながら、亜里抄はそっと呟いた。 「ええ...二度とね...」 絵里は小さく頷いた。自分の力の続く限りこの星を護り続けよう、絵里は心の中でそう誓った...。 |
制作後記
ようやく終わりました、第4話。絵の枚数的には、他の話の2倍近くあったので、正直もう体力の限界です(笑)思い起こせば6年前、同じ話を作った後に倒れ、その後の見習いの人生が大きく変わりました。そういう意味では個人的にも因縁のある話だったと思います。古いヒロピンファンの方に、「もう一度あの話をやってくれ!」という熱い(暑い)要望が多かったのも事実ですが(笑)
新しいチャレンジ項目としては、「エリザ・アリサ姉妹の過去と、弱点が発覚して行く過程を描く」ということでして、今後の展開の伏線的な意味も込めてあります(今後、新たな弱点がまたもや判明しますが。笑)
個人的には今回の話を作っている過程で、ずいぶんと反省点が浮き彫りになった気がします。制作技量は仕方ない(諦める、キッパリ断言)としても、ストーリーの展開と繋ぎの拙さが露骨に出てしまったのはマズイですねえ。特に絵の枚数が多いと如実に出てしまう弱点なので、今後に向けて改善して行きたいと思います。
今回の苦労話を少しばかりすると、一番困ったのが地形でした。「使えそうだな」と思っていた地形データが、実際に使用するサイズに引き延ばしてみると、なんとこれが穴だらけ(頂点数が少ないオブジェクトを、拡大し過ぎた時に起こる現象で、実際には穴ではなくて、鋭角な影として映る)で、なんとか修正しようとも思いましたが、時間の都合(と気力の問題で)諦めました(笑)それとVueの機能を良く理解していない為に、空がとんでもない事になってしまっています。これも次回作までに何とかせねば、と思っております(冷汗)
反対にラッキーだったことは、今まで無精をしてPoser上でレンダーしていたのを、時間を掛けてでもデータを移し替えてVueで行うようにした所、制作時間短縮とレンダー時の品質向上(若干ですが)が見られたことです。しかしPoserって、ホント大量データ時のI/Oが脆いですね、これじゃ小道具並べられないです。まあPoserは動画の元データを作る為のソフトなんで、仕方ないと諦めてますが。
それと今回、見習いは画像制作において大きく方針転換しました。それは何かと言うと、商用データ(要は売り物のデータのこと)の積極採用です。今までは単純な形状の小道具程度なら、「こんなのに金を払うぐらいなら自分で作る」といきまいて、結局は低品質なものを作っていたんですね。でも良く考えてみると「時間=お金」っていう格言もあるじゃないですか。要は「時間」を買っているのだと思えば良い訳で、特にPoser向けの商用データは値段も安いので、自作する時間と比較して、自作以上の(時間的、品質的)効果があると判断すれば積極的に購入して使うようにしました(もちろん何度も再利用できそうなのが殆どですが。笑)しごくあたりまえの話なのですが、人の性格ってなかなか治らないんですよね(笑)
使用したフィギュアの話をすると、今回は宇宙怪獣ガイガン、それにガッツ星人の2体です。いずれもウルフェさんの作品で、出来が非常に良いですね。これはウルフェさんのどの作品にも言えることなのですが、実にオリジナルのイメージを上手に捉えて作ってます。以前にも書きましたが、生物フィギュアの出来不出来は、イメージをどう捉えて造るか、にあると思います。判りやすい例を挙げるならば、初代のセブンの時のガッツ星人の着ぐるみと、最近のウルトラ作品でリメイクされたガッツ星人の着ぐるみを比べて見てもらえば良いかと思います。オリジナル版の造形の美しさに比べて、リメイク版の何とショボイこと(涙)形だけ真似すれば良いってもんじゃないですよね(第一、全体のバランス見てないよねえ、リメイク版は)
ガッツ星人は外見がいかにも異星人っぽいのと、両手の造りが人間に近いので、怪獣ヒロピン制作家の間では、人気のフィギュアですよね(なにせH責めに最適ですもん。笑)個人的にはナックル星人とかも欲しいところですが、なにせあの吹き出物がねえ...(笑)
「誰か、私に怪獣フィギュアを作ってくれ! 私はここでヒロインに負ける訳には行かないのだ...」
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