秘 密 結 社 驚 愕 団
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- GALLARY / EPISODE 7A
- 悪の華 -


Act1
闇に光る眼
予期せぬ呼び出し音に、ネフェルは亜空間通信装置に歩み寄った。回線をつなぐと、予想していた相手の姿がホログラム映像に浮かび上がった。
「コレハ、メフィラス司令。何カ緊急事態デモ?」
ネフェルは手を上げて敬礼をした。相手は短気で冷酷なメフィラス星人である。注意が必要だった。
「計画ハ進ンデイルノカ、マグマ星人ネフェル?御前ガ提出シタ計画書ニ依レバ、既ニ第1段階ヲ終了シテイル筈ダゾ...」
「御心配ニハ及ビマセン...既ニ罠ハ仕掛ケテアリマス。間モ無ク、獲物ガ掛カルデショウ」
「フム、良カロウ...。御前達マグマ星人傭兵ヲ雇ウ為ニ、コチラハ少ナカラヌ代償ヲ支払ッテイルノダ」
ホログラム越しに、メフィラス星人の眼が一瞬冷たく光った。
「解ッテイルダロウガ、皇帝陛下ハ敗北者ヲ絶対ニ許サヌ...」
「存ジテオリマス。モシ失敗シタ場合ニハ、ソノ罪、我等ノ死ヲ以ッテ償イマス」
「結構ダ。デハ第1段階終了後、直チニ報告シロ。待ッテイルゾ...」
通信が切れた後も、ネフェルは腕を組んで苦い思いを噛み締めた。
「何ヨ、アノ偉ソウナ態度!」
三姉妹の中では一番下のネルヴァが、両手を広げて姉の思いを代弁した。
「諦メナ、ネルヴァ。『黒蜘蛛三姉妹』ト呼バレタ私達デサエモ、所詮使イ捨テノ駒ナノサ...」
普段は口数の少ない二女のネゲブも、珍しく愚痴をこぼした。
「ダガ姉貴、我々ノ計画通リニ事ガ運ブダロウカ?」
大きな身体に似合わず慎重派のネゲブは、姉のネフェルの顔を伺った。
「心配スルナ、ネゲブ。計画ノ第1段階サエ上手ク行ケバ、後ハ此方ノ思ウ通リニ運ブサ」
ネフェルは口元で微笑んだ。
「計画通リニ、準備シロ。間モ無ク、奴ガ基地カラ出テクル時間ダ...」
その日は春の暖かい日差しが、基地全体を包んでいた。3週間ぶりに休暇が取れた絵里は、家へ戻る所であった。
「結構です、少尉。お気をつけて」
「ありがとう」
門衛の軍曹から通行証を受け取ると、絵里はゆっくりと車のアクセルを踏んだ。
国道に入っても渋滞は無く、絵里は快調に車を走らせた。窓の外を、心地よい風が流れて行く。うららかな春の景色に気を取られていた絵里は、基地を出てからずっと追跡してくる背後の車に気がつかなかった。
「小鳥が巣に戻る。捕獲地点に移動し、待機せよ...」
ネフェルは通信器のスイッチを元に戻すと、意識を前方の赤い小型車に戻した。
たった3週間、離れていただけなのに、マンションの周囲は冬の装いから、すっかり春めいた感じになっていた。車を降りた絵里は、街路樹の若々しい緑に目を細めた...。
マンションに入る絵里の後姿を見ながら、ネフェルは再度通信器のスイッチを入れた。
「今、小鳥が巣に到着した。捕獲準備...」
絵里がドアを開けると、室内には照明が点いていた。
「ただいま。亜里沙、もう帰ってたの?」
部屋の奥に声を掛けた絵里だったが、何の返事も無かった。
「変ねえ。買い物にでも出かけたのかしら...」
一通り部屋を覘いてみたものの、亜里沙の姿は無い。リビングに戻ろうとした絵里の背後に、音も立てずに怪しい人影が迫った。
「え?」
廊下の角を廻った絵里の目前に、見知らぬ者の姿があった。黒レザーのレオタードのような服を着た女性は、絵里に対して身構えている。
「あなた誰?」
あっけに取られた絵里は、背後から迫る音に気が付かなかった。
「あっ!」
突然絵里は背後から首を絞められ、後ろに仰け反った。それを見た前方の侵入者が、目にも止まらぬ速さで絵里に近付く
それは一瞬の出来事だった。鋭く突き出された拳が絵里の下腹部をえぐり、ドシッという鈍い音が室内に響いた。
「うっ...」
雷に打たれたようなショックが全身を駆け抜けると、瞬時に絵里の意識が遠くなった。ゆっくりと頭が下がり、絵里は気を失った。
「フン、脆過ギルジャナイ...本当ニ、コイツガ今回ノ標的ナノ?」
失神した絵里の顔を見上げながら、ネルヴァは不満そうに鼻を鳴らした。
「標的ハ、コノ地球人デハ無イ。コイツト融合シテイル、『シャンドラ星人エリザ』ノ方サ...」
床に仰向けに倒れている絵里を見下ろしながら、ネゲブは腕を組んだ。
「ダガ『シャンドラ星人』ノ弱点ハ、融合シテイル地球人ニモ影響ヲ与エルト見エル」
「モシコレガ『エリザ』ノ能力ナラ、姉貴達ノ出番ハ無サソウネ。私一人デモ十分ダ...」
ネルヴァは軽蔑した表情で、目を閉じている絵里を見下ろした。
その時、部屋に小さな電子音が響き、青白い光が出現した。
「来タカ、姉貴...」
「手早ク片付ケタヨウダナ...」
気を失っている絵里の顔を見ながら、ネフェルは軽く頷いた。
「ネゲブ、コノ地球人ノ女ヲ、我々ノ宇宙船ニ運ブノダ。ネルヴァ、手ヲ貸シテヤレ...」
Act2
秘められた意識
絵里が意識を取り戻した時、最初に目に入ったのは薄暗い天井だった。数回瞬きをすると、ぼやけていた焦点が次第にはっきりとして来た。どこからか低い電子ハム音が聞こえてくる。絵里は自分が何者かに捕まったのだと理解した。
「あ...」
身体を起こそうとした絵里は、自分が奇妙な台の上に拘束されていることに気付いた。見れば両腕と両足を拘束している器具が、緑色に発光している。絵里は身体を動かそうと試みたが、腕と足はまるで万力に挟まれたかのように動かない。
「こ..これは...」
視線を下に移すと、衣服は脱がされ、絵里は一糸まとわぬ姿になっていた。そして何よりも大切なペンダントが、絵里の胸から無くなっていた...。
「御目覚メノヨウダナ...」
顔を上げて見ると、顔暗闇の中から3人の若い女が姿を現した。
「貴女達は誰?私をどうするつもりなの?」
絵里の不安を隠せない声に、先頭の女がニヤリと笑った。
「私ノ名ハ『ネフェル』。。心配スルナ、殺シハシナイ。今ノ所ハナ...」
絵里に精神融合しているエリザが、瞬時に危険を感じ取った。
「ネフェル...貴女達、地球人じゃないわね?」
「ソノ通リ...御前ガ唯ノ地球人デハ無イノト同様ニナ...ヨカロウ、我等ノ正体ヲ見セテヤロウ」
ネフェルは他の2人に向かって頷いた。
変身を解いたネフェル達の姿に、絵里の表情が固くなった。
「マグマ星人!」
「ソウダ...コノ2人ハ私ノ妹デ、背ノ高イノガ『ネゲブ』、小サイ方ガ『ネルヴァ』ダ。我等ハ同盟軍デハ『黒蜘蛛姉妹』トモ呼バレテイル...」
ネフェルの言葉に絵里、いやエリザの心に衝撃が走った。
かつてエリザが戦士養成センターで学んでいた頃、教官達から度々その名前を聞いたことがあった。同盟側に雇われた傭兵として、彼等は高い戦闘能力と狡猾な戦法を駆使し、幾人もの光の戦士を倒していたことを。それまで女性戦士の採用に消極的だった銀河連邦に、女戦士育成を決意させる一因にもなった存在であった。
「貴女達が...黒蜘蛛姉妹...」
思わず絵里の肌に鳥肌が立った。
「ホウ..我等ヲ知ッテイルノカ?ナラバ抵抗ハ無駄ダト、知ッテイルダロウ...」
「サテ、姉貴達。ソロソロ始メルヨ...」
ネルヴァは丸いリング状の機器を絵里の頭に乗せると、絵里の眼のところまで押し下げた。
「な、何をするの?」
危険を感じた絵里は何とか身体を動かそうとしたが、絵里の力では、所詮虚しい試みに過ぎなかった。
「心配スルナ絵里、コレハ脳ヲ制御スル装置ダ。御前デハ無ク、融合シテイル『エリザ』ノ潜在意識ヲ覘カセテ貰ウノサ...」
ネフェルは絵里に向かって微笑んだ。
「始メロ、ネゲブ。最初ハ『表層睡眠モード』ダ...」
ネゲブは姉の指示に頷くと、制御卓のスイッチを入れた。頭のリングから低いハム音が鳴り始めた。一瞬絵里の頭にピリッと痛みが走ったが、次第にそれは和らぎ、やがて心地良い刺激へと変わって行く。絵里の意識は再び、灰色の奈落へと落ちていった...。
亜里沙が玄関の扉を入ると、ハンガーに絵里のショルダー・バッグが下がっていた。
「ただいま〜!姉貴、帰ってるの?」
だが部屋からは何の返事も無い。
「買い物かな...」
その時亜里沙はリビングの床に、何か光る物が落ちているのに気が付いた。
「何だろ...」
亜里沙は小首をかしげながら、光る物に歩み寄った。
「これは!姉貴のペンダント!!」
光る物を手に取った亜里沙は、大きな衝撃を覚えた。
「もしかして、姉貴に何か...」
命と同じくらい大切なものを、絵里が落として気付かない筈は無い。亜里沙は不吉な胸騒ぎを抑えることができなかった...。
薄暗い陰気な部屋の中で、マグマ星人達は並んだディスプレイを喰い入るように見つめていた。
「此処ヲ見テ、コノ神経回路ニ強イ抵抗反応ガ有ル...」
ネルヴァはモニタ上に現れた、ひとつの信号パターンを指差した。
「コレハ生存本能ニ属スル神経回路ダ。モシカスルト、姉貴ノ予測ガ的中シタカモ...」
ネゲブの感心したような一言に、腕を組んでいたネフェルは小さく頷いた。
「コレハ生殖行動ヲ司ル神経群ノ様ダ。ドウヤラ思ッテイタ通リダッタナ」
「シカシ姉貴、コノ神経回路ニ流レル信号レベルハ、他ト比較シテモ、至極微弱ダ。コノ神経組織ガ極端ニ衰エテイルノカ、ソレトモ...」
「自分ノ潜在意識ガ、ソウサセタノカ...アルイハM78ノ奴等ガ、手ヲ加エタカ...ソンナ所ダロウ」
ネゲブの指摘に頷いたネフェルは、軽く微笑んだ。
「エリザノ種族、『シャンドラ』星人ノ雌ハ多産ダ。ソノ生涯デ平均十数人ノ子ヲ出産スルト聞ク...ソノ性欲ハ我々トハ比較ニナラヌ程、強イ...」
「ソレデハ恐ラク身体機能ノ殆ドガ、出産ノ為ニ振り向ケラレテシマウ...戦士ニハ全ク不向キナ種族ダナ」
ネゲブは呆れたように呟いた。
「ネフェル姉貴ノ狙イガ判ッタ!『エリザ』ノ強イ性欲ヲ目覚メサセテ、辱メヲ与エルンダネ?」
ネルヴァが嬉しそうに叫ぶと、ネフェルは微笑みながら、末の妹の頭を優しく撫でた。
「ソウ、『エリザ』ガ淫ラナ姿ヲ曝シテ敗北スレバ、モハヤ地球人達ハ『エリザ』ニ失望シ、誰モ自分達ノ守護神トハ思ワナクナル」
さも当然、という風にネゲブが頷いた。
「ソウヤッテ地球人達ト『エリザ姉妹』ノ協力体制ヲ破壊シタ後、我々ガ地球ヲ乗ッ取ルノサ...」
「次ニ、洗脳操作ニ入ル。『エリザ』の封印サレタ性欲制御回路ノ扉ヲ、コジ開ケテヤルノダ」
2人の妹はネフェルの言葉に頷いた。
「『ネゲブ』ハ脳波解析装置ノプログラム調整。『ネルヴァ』ハ使用スル薬品ト、例ノ奉仕機械ノ準備ダ...」
防衛軍極東基地において、キサラギは2つの局の長を兼任している。その為、自分の専門分野の研究には、殆ど時間を割くことができなかった。キサラギはミキが差し出した書類の束を、うんざりした表情で眺めた。
「有難う、伍長。届けて頂いた書類は、明日までにサインして置くわ」
「お願いします、博士。では、失礼します!」
ミキが退室して行くのを見送ったキサラギは、意識を先程までやっていた作業に戻した。
「エリザの外見的特徴は過去の戦士達に類似するが、地球人類同様に性別が有り、エリザ自身は女性に相当すると推測される。その理由として身体的特徴の他、女性の肉体構造に起因する脆弱点を挙げることができる...」
キサラギは数ヶ月前に入力した自分の報告書を読み直しながら、ドキュメントにクリップした動画を再生させた。それはガッツ星人との闘いの際に記録された映像で、キサラギ自身も既に何度も見直したものだった。
「何か見落としているのかしら...?」
キサラギはこの映像を見返す度に、意識の中で何か引掛かるものを感じていた。それが何なのかを明確にできない自分に、キサラギは強い焦燥感を覚えた。
これまではエリザとアリサの姉妹が、異星人達の侵略をかろうじて防いでいる。だがこれまでの戦いが示すように、エリザ姉妹の戦闘能力が過去の戦士達に比べると、著しく劣っていることは明白だった。そして地球防衛軍が、姉妹が負っているハンデを補完しなければならない。その為には姉妹の特徴、長所、脆弱点を把握して置くことが絶対必要なのだ。
「せめて細胞か体液サンプルでもあれば、もう少し確実な事が判るのだけど...」
キサラギは疲れた目を休ませるようと、眼鏡を外して目蓋を押さえた...。
Act3
解き放たれた
欲望
「サテト、例ノ薬ヲ試シテミルカ...」
ネルヴァは桃色に発光する大きな座薬を取り出した。
「コレハ、エリザ達ノ母星『シャンドラ星』デ産出サレル、媚薬『サテュリオン』ヲ、10倍ニ濃縮シテアルノサ」
「地球人ノ生体構造ハ奴等ニ極メテ近イ筈ダ。効果ノ程ハ、コノ地球女ノ体デ試シテ見レバ判ル...」
絵里の股間を指差しながら、ネフェルは頷いた。
ネルヴァは空いている手の指で、絵里の陰唇を左右に開いた。
「な、何をするの?」
陰唇が咥え込んだ冷たい物体に、絵里は怯えた。だがネルヴァは構わずに座薬を一気にヴァギナの奥へと押し込んだ。
「夢ヲ見ル為ノ甘イ薬ダヨ、絵里...コレデ天国ヲ味ワエルノサ...」
早くも薬に反応し始めた絵里の陰唇を眺めながら、ネルヴァは残酷な微笑みを浮かべた。
「な..何なの...これは...」
異星の媚薬の強烈な刺激に、絵里は呻きながら頭を左右に振った。絵里の膣内で体液に触れた媚薬は、すぐさま溶けて液状化し、陰唇から溢れて検査台の上に滴り落ちた。
「見テ、凄イ! 信ジラレナイ...」
「結構ナ効キ目ダナ...ソレジャ、始メルカ...」
そう言うとネフェルは、ネルヴァを促して奥の制御卓に向かった。
「凄イ反応ダヨ、姉貴...『エリザ』ノ脳波ハ既ニ興奮状態ダ」
「フム...確カニ、敏感ナ反応ヲ示シテイルナ。ダガ、絵里ノ脳波ガ未ダ境界線以下ダ...」
ネフェルはモニタを指差しながら、舌打ちした。
「絵里ノ意思ガ『エリザ』ノ快楽中枢ヲ抑制シテイル...絵里ノ意思ヲ砕ク必要ガアルナ」
「絵里ノヴァギナニ対シテ、物理的ナ刺激ヲ加エル...快楽中枢ニ刺激ヲ与エ続ケレバ、絵里ノ抵抗モ破レルダロウ」
ネフェルは検査台の制御卓にいたネゲブに合図を送った。
「ネゲブ!御前ノ玩具ヲ、味アワセテヤリナ」
頷いたネゲブは、取り出したヴァイブレータのスイッチを入れた。
「地球人ニハ、少シ刺激ガ強過ギルカナ...」
ネゲブはヴァイブレータの先端を絵里の陰唇に咥えさせると、ゆっくりと深く刺し込んだ。
「あっ...ああっ...」
ヴァイブレータは、その振動する稼動部をゆっくり回転させながら、絵里の膣内を探って行った。その尖った先端は、周期的に振動周期を変えながら、丹念に膣壁をえぐる。その抗し難い刺激に、絵里は思わず快感の喘ぎを漏らした。
「コイツハ御前ノ膣内温度ト、噴出スル液体量ヲ検知スル。自動的ニ最モ快感ヲ覚エタ箇所ヲ探リ出シ、最適ノ『動作パターン』デ責メルノサ...」
自分の作った作品の出来に、ネゲブは満足そうに呟いた。
「良イゾ、絵里ノ脳波パターンガ変化シタ。次ハ記憶中枢ニ、快楽情報ヲ流シ込ムノダ...多重レベルハ最大ノ5平列ダ」
「最初カラソンナニ刺激シタラ、『エリザ』ハ耐エラレテモ、絵里ノ精神ガ崩壊スルカモヨ?」
姉の顔を伺うネルヴァに、ネフェルは頭を横に振った。
「絵里ガ廃人化シテ『エリザ』ニ変身不可能ニナッテモ、マダ妹ノ亜里沙ガ居ル。我々ノ計画ニ支障ハ無イサ。言ワレテ通リニヤリナ、ネルヴァ...」
卑猥な映像情報が脳波信号に変換され、絵里の脳の記憶中枢に強制的に注ぎ込まれた。
「あ..ああっ...やめて...」
多重化して送り込まれる視覚情報とヴァギナが伝えて来る信号が、脳の快楽中枢を激しく励起する。あたかも自分が肉体交渉によって刺激的な快感を得ているかのように、絵里は歓喜の極みへと急速に上昇して行った。
「軍ノ調査報告デハ、『シャンドラ星』ノ恒星ガ放出スル宇宙線ノ影響デ、奴等ノ男ハ極端ニ少数デ、短命ナンダッテ。ソノ為ニ、女ハ可能ナ限リ子ヲ産ム必要ガ有ルラシイヨ...」
歓喜に喘ぐ絵里を物珍しそうに眺めながら、ネルヴァは肩をすくめて言った。
「ネルヴァ、御前ガ生マレル以前カラ、『シャンドラ星』ノ女ハ、奴隷トシテ好評ダッタノサ。奴等ハ遺伝的ニ、性的満足ヲ与エテクレル者ニハ抵抗デキナイカラナ...」
ネフェルは絵里の肢体を見つめ、明らかに侮蔑の表情を浮かべながら続けた。
「コレマデ『エリザ』ハ識閾下デ、種トシテノ性的欲求ヲ無理ニ抑制サレテキタ...戦士トシテ戦ウ為ニナ。ソノ鎖ヲ断チ切レバ、『エリザ』ノ肉体ト精神ハ女トシテ目覚メ、ソノ性的能力ヲ発達サセ始メルダロウ」
「ソノ代ワリニ、戦士トシテノ能力ヲ喪失シテ行クケドネ...」
姉の横顔を見ながら、ネルヴァは愉快そうに呟いた。
「あっ..あ...あうっ...」
絶頂が近付くにつれ、絵里の喘ぎ声が一段と大きくなった。呼吸が極端に速くなり、上下する胸では2つの乳房が激しく震えた。
「絵里ノ脳波レベル極大化...間モ無ク境界域ニ到達スル。『エリザ』ノ脳波ハ既ニ境界域ヲ突破シ、ナオ上昇中...」
絵里の肉体反応を記録しながら、ネゲブはチラリと絵里の横顔を見た。もはや計器を見ずとも、その悦びに満ちた表情と喘ぎ声で、間も無く絶頂に達する事は明らかだった。
事実、絵里が歓喜の頂きに達するまで、そう時間は掛からなかった。
「あ..あっ...あ〜っ.........」
絵里の最後の喘ぎが発せられると同時に、制御卓からピーッという甲高い警報音が発せられた。
「...境界域突破...両者ノ脳波信号強度ガ、急速ニ低下中...」
絶頂に達した絵里とエリザの意識は、心地良い快楽の海に漂っていた。経験した事の無い悦びの余韻に、絵里の上下の唇はだらしなく開かれたままであった...。
「コレデ我々ハ、『エリザ』ノ封ジラレタ欲望ヲ開放シテヤッタ訳ダネ。何ダカ、久々ニ面白クナリソウ...」
無邪気な笑みを浮かべるネルヴァに、ネゲブは肩をすくめた。
「自分達ノ守護神ガ、淫乱ナ雌豚ニ過ギナカッタト知ッタ時、地球人共ノ反応ガ楽シミダナ...」
辛辣なネゲブの言葉に、ネフェルは思わず笑い声を洩らした。
「フフフ...ソノ通リダ。サテ、私ハ御偉イ上官殿ニ報告スルトシヨウ。御前達ハ計画第3段階ノ実行準備ニ掛カレ...」
警備隊の作戦室で、カタギリはキサラギを前にして困惑していた。
「エリザ姉妹の支援体制を早急に強化する必要性は理解できます。ですが博士を生命の保証ができない前線にお連れするのは、あまりに危険です。非戦闘員の取扱いを定めた、防衛軍指揮規範にも抵触しますし...」
「解っています。ですが生命の危険については、確か防衛軍に入った時に署名した宣誓書にも記述がありましたわ。違いまして?」
「それはそうですが、いわば博士は防衛軍の頭脳です。他の隊員とは立場が...」
「無理をお願いしていることは承知しています。ですが、地球防衛の要である姉妹に危機が迫っているのです。もし今、彼女達が死んでしまったら、地球は...」
キサラギは真剣な眼差しで、カタギリに食い下がった。
カタギリは大きく溜息をついた。
「分かりました、博士は警備隊が責任をもって護衛します。但し、前線においては、私あるいはカトウ副長の指揮命令に従って貰います。宜しいですな?」
「有難うございます、隊長。御指示に従います...」
「ところで博士が懸念されている、『エリザ姉妹の危機』とは一体何なのか、具体的に話して頂けませんか?」
「わかりました。隊長、こちらへ...」
オペレーションルームにいる、他の隊員達に聞かれないように、キサラギは小さな声でカタギリをスクリーンの前に誘った。
「これから御話することは、エリザ姉妹に関する私の仮説です。これからお見せする映像情報以外に、現時点で仮説を裏付けるデータがありません。その点に留意して御聞き下さい...」
そう言いながらキサラギは、登録した映像データを呼び出す一連の番号をビューアにセットした。
「既に何度も御覧になったかと思いますが、これは半年前のガッツ星人との戦闘映像です」
「確かに十数回は見ました。ですが既に博士御自身がこの映像を分析して、エリザ姉妹の弱点が子宮にあると指摘されたのですぞ」
「ええ、そうです。ですがこの前のキングジョー襲撃後になってから、この映像で何かを見落としていたような気がしたのです...」
キサラギの言葉に、カタギリの脳裏に不吉な予感がよぎった。
「エリザ姉妹の子宮が、肉体的に脆弱な箇所であることには確信があります。ガッツ星人以外の侵略者達も、姉妹の下腹部を執拗に攻撃していましたので、彼等も同じ判断をしているのでしょう」
ここでキサラギは、子宮を突かれたエリザが吐血したシーンをループ再生した。
「特定の箇所を攻撃する最良の手段は、標的を動けなくしてしまう事です。侵略者達は姉妹に対して常に数的優勢を保ちながら、これを実行する戦術を採用しているように思います」
「確かにその見解は、我々警備隊のそれと一致します。だが我々が察知できる事ならば、エリザやアリサは十分承知している筈でしょう。しかしガッツ侵攻以降の戦いを見る限りでは、繰り返し同じ手でやられています。そこが分からんのです...」
我が意を得たり、とばかりにキサラギは顔の前で人差し指を立てた。
「私もそこに疑問を感じました。そこで侵略者達の基本戦術を確立したガッツ星人との戦闘記録を分析し直してみたのです...」
カタギリの眼光が鋭くなったことを感じたキサラギは、映像を切り替えたスクリーンを見ながら話を続けた。
「これは侵略者達が好んで使う戦術で、姉妹の背後から乳房を掴み、その行動を封じます。仮にこの体勢を『ブレスト・ホールディング』とでも呼んで置きましょう。現存する記録に限って言えば、エリザ姉妹はこの体勢から自力で脱出できたことがありません」
「乳房は女性にとって鋭敏な部位でしょう?であれば、エリザ達も地球人と同様なのではないですかな」
「私もそう思いました。乳房を傷つける事を恐れ、動けないのではないかと...」
「もしその仮定が正しいとすると、今後エリザ達に勝利の可能性は極めて低いと言わざるを得ませんな。侵略者達は、エリザ達をこの体勢に捕獲するだけ良い...他からの妨害が無い限り」
「その通りですわ、隊長。エリザ達にはエネルギーに起因する、時間的な制約があります。侵略者達は姉妹をこの体勢に捕らえ、ただエネルギーが枯渇するのを待てば良い訳です。ですが当然、エリザ達も敵側のこの戦術に気付いている筈です...」
「しかし理解できないことがありますな、博士。これまでの戦いを見る限り、戦闘での敗北は大抵敗者側の死を意味します。いくら乳房が女性にとって大切な器官であるとは言え、自己の生命より重要だとは思えませんが?」
「問題はそこなのです。自己保存本能はあらゆる生物に共通した、最も強い行動原理の筈です。しかし現実には、エリザ達はこの体勢から脱出できていません」
「とすると、先程の仮定自体が間違っているか、あるいは...」
キサラギは深く頷いてカタギリの言葉を継いだ。
「あるいは、まだ私達の知らない理由、言い換えれば自己の生命を危険に曝してでも優先される理由、があるのではないでしょうか?」
「私が強い懸念を抱くようになったのは、ガッツ侵攻戦の映像データを1フレームづつ分離して解析していた時でした」
キサラギはビューアのボタンを押し、一枚の静止画を表示させた。
「これはエリザが『ブレスト・ホールディング』に捕らえられた直後のものです。このエリザの表情に注目して下さい。フレーム・カウントにして僅か4、5枚程度しか写っていない為、識閾下には残っても、明確な情報として認知できなかったのです」
「はて...博士が一体何をおっしゃりたいのか、私にはよく判りませんが...」
「私にはこの表情が喜悦の反応に思えるのです。私達地球人でも苦痛と喜びの表情に、類似性が見られるケースはあります。ですが私には、これは後者のように思えてならないのです」
呆気に取られているカタギリを前に、キサラギは更に言葉を続けた。
「つまりごく短時間とは言え、エリザは性的な興奮を感じたのだと思います。他の映像記録も調べてみましたが、姉妹が『ブレスト・ホールディング』を受けた直後の反応は、全て同様でした。そして彼女達の手の動きは、乳房を掴む相手の手を放すまいとしているような印象さえ受けます」
「いや、まさか...自分の生命を危うくしてまでも、性的な満足感を優先していると言うのですか?」
「地球上にも、自己の生命より生殖行動を優先する生物は存在します。一般的に申しますと、寿命の極めて短い、単純な種に見られる性質ですが」
思いもかけなかった展開に、カタギリは顔をしかめた。
「確かにそうした生物の話は聞いたことがあります。ただそれは雄に限ってのことでしょう。新たな子孫を生まなければならない雌が、そうした性質を持つとは考えにくいですな...」
「私達は彼女達に関する事は殆ど何も知らないのです。これも想像の域を出ませんが、もしかすると彼女達の種族は、雄体が圧倒的に少数なのかも。それならそうした性質が、雌体に遺伝的に備わったとしても不思議ではありませんわ」
カタギリは溜息を付くと、ビューアに目をやった。子宮を突かれ、苦悶するエリザの姿に、カタギリの心は石のように重くなった。
「だとすれば、エリザ姉妹は大変な十字架を背負っていることになりますな...今度ばかりは博士の御懸念が、単なる杞憂に終わることを祈りたい気分です...」
Act4
迫り来る闇
同盟軍が惑星ガンマ14と呼ぶ惑星は、地球人が大マゼラン雲と呼ぶ伴銀河の外周部に存在する。ほんの数週間前に、未熟な科学力しか持たないこの星の種族は、必死の抵抗も虚しく同盟軍に制圧されたのだった。
今や大マゼラン星域攻略の為の前進基地が、この惑星のかつての王宮に設置されていた。同盟軍がこの伴銀河の辺境に位置する惑星に基地を設置したのには、マゼラン星域の占領とは別に、もうひとつの理由があった。地球の属する銀河に近接している為、2つの銀河を攻略する為の後方基地として好位置だったのだ。そして今この基地は、予期せぬ来客を迎えていた。
「コレハ上級司令官閣下...コノ様ナ辺境基地ニマデ視察ニ来ラレルトハ珍シイデスナ」
マゼラン星域方面軍司令のゼットン星人は、上官の突然の来訪に内心強い警戒心を抱いていた。
「ゼットン司令、当惑星占領ノ作戦指揮ハ、中々ノ手際ダッタナ...皇帝陛下ヘノ報告ニハ、貴官ノ功績ヲ入レテ置コウ」
「感謝致シマス、メフィラス上級司令。所デ、此処ニ御出デニナッタノハ、当戦線へノ督戦デスカナ?」
玉座に腰を下ろしたメフィラスは、ゼットン星人の顔をチラリと睨んだ。
「嫌味ヲ言ウナ、ゼットン星人ヨ...貴官カラ申請ノアッタ増援兵力ハ、既ニ総司令部ニ要請済ミダ。間モ無ク返答ガ届クダロウ」
「ハハァ、例ノ地球攻撃ノ件デスカナ?マグマ星人ノ女傭兵ニ任セテテイルトカ...」
方面軍の指揮官ともなれば、入手できる情報は多い。内心ゼットン星人は、隣接する星系に展開した自分の正規軍を使わず、傭兵を使ったメフィラスに侮蔑の念を抱いていた。
「傭兵ノ件デ、批判ガ在ルコトハ本官モ承知シテイル。ダガ奴等ヲ用イタ事ハ、誤リデハナカッタ。先程『エリザ姉妹』ニ関スル報告書ガ届イタ、中々興味深イ内容ダゾ。後デ貴官モ目ヲ通シテ置クト良イ...」
メフィラスはゼットン星人の心底を見透かしたように言った。
「間モ無ク奴等ハ、地球ヲ防衛スル光ノ戦士『エリザ』ヲ捕獲スル。貴官ハ護送部隊ヲ派遣シ、会合地点デ『エリザ』ノ身柄ヲ受ケ取レ。ソシテ『エリザ』ノ身柄ヲ、帝国首都マデ連行スルノダ」
「捕獲?...ソンナ面倒ナ事ヲセズトモ、ソノ場デ抹殺スレバ良イデハアリマセンカ。当星域ノ我軍ハ、今デモ兵力不足ナノデスゾ...」
メフィラスは片手を挙げて、ゼットン星人の言葉を遮った。
「貴官ハモット広イ視野ヲ持ツ必要ガ有ルナ。『エリザ』ハ単ナル一戦士デハ無イ。光ノ星ノ奴等ガ、他ノ種族ヲ連邦側ニ取リ込ム為ノ手段、言ワバ『連邦ノ象徴』ナノダ」
「成程...『エリザ』ヲ餌ニシテ、連邦ノ結束ヲ動揺サセルトイウ訳デスナ...」
「メフィラスノ奴メ、苦労ハ全部俺ニ押シ付ケテ置イテ、手柄ダケ独リ占メスル気ダ...」
ゼットン星人指揮官は腹立たしさを隠さず、石造りの廊下を大股に歩いた。
「声ガ大キ過ギマスゾ、司令...」
主任参謀のチブル星人が小声で上官をたしなめた。専横なメフィラス星人のやり方を快く思っていないのは、このチブル星人も同じだった。
「必要ナ援軍モ寄越サズ、代ワリニ護衛部隊ヲ差シ出セダト!奴ノ事ダ、『エリザ』ヲ捕獲シタ暁ニハ、自分ノ手柄トシテ皇帝ニ売リ込ミ、帝国首都ニ凱旋スルツモリダロウ...」
「ソノ為ニ正規軍デハ無ク、私兵トシテ使エル傭兵ヲ使用シタノデショウ...シカシ、マダ実際ニ『エリザ』ヲ捕獲シタ訳デハアリマセン」
上官をなだめるチブル星人の言葉にも、ゼットン星人は苛立たしそうに首を振った。
「マグマ傭兵共ガ送ッテ来タ作戦計画書ヲ見タガ、正直良ク出来テイル。勝算ハ高イダロウ...メフィラス星人ハ不遜ナ奴ダガ、決シテ馬鹿デハナイ...」
だがチブル星人は自信たっぷりに腕を左右に振ってみせた。
「我々ノ障害トナル『エリザ』ハ、イズレハ排除スベキ存在デス。シカシソレガ、メフィラス上級司令ノ手柄ニナル事ダケハ避ケルベキデス...」
足を止めたゼットン星人は、背後のチブル星人を振り返った。
「メフィラスノ奴ノ足ヲ引ッ張ル、何カ良イ策ヲ思イ付イタ様ダナ?...ダガ注意シロ。作戦妨害ノ嫌疑デ、軍法会議ニ掛ケラレルノハ御免ダゾ」
「心配ハ御無用。マダ我々ニ抵抗シテイル、コノ星ノ地下組織ヲ使ウノデス。意図的ニ情報ヲ漏洩シテ...」
「ん?...」
浅い眠りのなかで、亜里沙の意識の中に何かの音が響いた。
「姉貴?...帰ったの?」
亜里沙は目をこすりながら、ベッドから降りた。
廊下に出た亜里沙の目に、床に横たわっている黒い影が映った。一瞬ドキッとした亜里沙は、じっとその影を注視した。よく見れば、それは全裸でうつ伏せに倒れている絵里だった。
「姉貴!」
亜里沙は慌てて絵里に駆け寄った。
「どうしたの、姉貴!」
抱き起こした絵里の身体は熱病に冒されたように、熱く火照っていた。うっすらと目を開いた絵里の口から、かすかに言葉が漏れる。
「マグマ..星人..黒..蜘蛛...」
「黒蜘蛛?...あの殺し屋姉妹のこと?...しっかりして、姉貴!」
亜里沙は絵里の身体を強く揺すったが、絵里の気力もそこまでだった。再び瞼を閉じた絵里の腕が、力無く床に落ちた。
「姉貴!」
すっかり生気を失った絵里の表情に、亜里沙は言い知れぬ恐怖を感じた...。
時刻はまだ薄暗い明け方の4時。防衛軍極東基地の第2休憩ラウンジに人影は無く、ひっそりとしていた。
「何ですと...絵里隊員が異星人に?...」
カタギリは亜里沙に聞こえないように、慌てて声を絞った。
「間違いありません。絵里隊員の膣内の液体を調査したところ、地球には存在しない分子構造を持った物質でした」
ささやくような声で告げるキサラギの顔も歪んでいた。
「判りました...ですが、妹さんには...」
「私から言いましょう。女の私が告げた方が、ショックは少ないかも知れません」
カタギリはキサラギの顔を見つめて頷いた。
「お願いします、博士。私は作戦室に戻ります...」
「姉貴が宇宙人にレイプ?...そんな、まさか!」
悲鳴に近い亜里沙の声が、誰もいないラウンジに響いた。キサラギは動揺する亜里沙をそっと手で制した。
「気持ちは分かるわ。でも落ち着いて。他に外傷は無いし、ウィルス等の感染も認められない」
「..妊娠...して無いよね?...」
亜里沙は下を向きながら、そっと消え入りそうな小声で尋ねた。
「大丈夫、その心配は無いわ。熱も下がったし、意識もしっかりしてる。後で病室に行ってあげて。許可は取っておくから...」
キサラギは亜里沙に近付くと、震えているその頬をそっと撫でた。
病室の照明は薄暗かったが、以前に来たことのある亜里沙は戸惑わなかった。
「...亜里沙?」
物音にうっすらと瞼を開いた絵里は、かすれた声で尋ねた。
「そうだよ...ここは基地の病室だから、安心して」
亜里沙は絵里のベッドに近付くと、傍らの丸椅子に座った。
「気をつけて、亜里沙...マグマ星人達がこの星に来ているの」
「姉貴に暴行したのは、本当にあの黒蜘蛛姉妹?」
絵里は小さく頷いた。
「私をエリザと知っていて、私の身体を調べたわ...ペンダントまで返してきたからには..標的は私達...」
「こうしてはいられない...」
絵里は上半身を起こしたが、とたんにその顔が苦痛に歪んだ。
「まだ起きちゃダメだって!しばらく安静が必要って、キサラギさんが言ってたよ」
だが構わず絵里は、苦痛に歪む顔を亜里沙に向けた。
「聞いて、亜里沙...奴等は私の『戦士の誓い』を破ったの...」
「え!...」
亜里沙は驚きの余り、言葉を失った。
「今、私の心の中で2つの意識が争っている..戦士としての私と、女としての私が...」
俯いた絵里の瞳は、深い悲しみに満ちていた。
「姉さん...」
亜里沙の慰めの言葉は、途中で途切れた。亜里沙もかつて同じように誓いを立て、女としての自我を封じた。だが、まだ大人の世界に入りかけたばかりの亜里沙には、姉の本当の苦しみが理解できなかった...。
「隊長...コーヒーでもいかがですか?」
突然の声に、カタギリ肩越しに振り返った。
「ああ、ミズキか...ありがとう、頂戴するよ」
「絵里隊員のことで、考え込んでいらっしゃったんですね?」
コーヒーカップを手渡しながら、ミズキはカタギリの目を覗き込んだ。
「絵里の言っていたマグマ星人について調べてみましたが、これまで数回に渡り地球に侵略行為を行っています。でも彼等は何故、絵里を解放したのでしょうか?」
ミズキは心を読んだかのように、カタギリが思い巡らしてきた疑問を口にした。
「以前にも侵略者が地球人を捕虜にして調査したことはある。防衛軍基地の破壊を目的に、隊員をサイボーグ化して操ったこともな。だが絵里の身体には、そういった装置が埋め込まれた痕跡は無い」
そう言うとカタギリは手にしたマグカップを揺らし、コーヒーの波紋を見つめた。
「精神的なコントロールでしょうか? 過去には人間を精神波で操った異星人もいました」
「今の所、絵里の脳波パターンに異常は無かった。もっとも引き続き監視する必要はあるが...」
「何だか嫌な予感がします。大変な事が起こるような気がして...」
ミズキは小さく肩をすぼめた。
「俺もだ...9時になったら、司令に警戒レベルを1つ上げるように申請するつもりだ」
椅子から腰をあげたカタギリは、一口コーヒーをすすった。
Act5
招かれし者
地面からの熱放射で、天文台の駐車場は蒸し風呂のようだった。
「今度もガセネタじゃないの?今時、宇宙人ネタなんて子供番組でも流行らないわよ。いいこと、私達はバラエティじゃなくてニュース担当なんですからね!」
明菜は真夏の日差に目を細めながら、番組プロデューサーの松木を横目で睨んだ。明菜は会社の上層部のコネだけで上司になったこの傲慢な同僚に、いい加減うんざりしていた。
「現実に宇宙人は地球に来てるじゃないか...もしかしたら、アタリって言う事も在り得るだろが?」
松木も暑さにいらついているのか、きつい口調で言い返した。
「前回の密輸組織ルポの時、『確信犯的捏造番組』ってさんざん叩かれたの、もう忘れたの?今度やったら、それこそTV業界から放り出されるわよ、チーフ...」
「何か世間をアッと言わせるようなスクープでもやらない限り、会社で俺達の居場所はもう無いんだ。君だって地方局に飛ばされて、片田舎の老人ホーム取材はしたくないだろ?」
コンクリートの階段は、夏の日差しにたっぷりと焼かれていた。松木達はハンカチで吹き出る汗をぬぐいながら、重い足取りで階段を登って行く。
「ん?...」
展望台が見えてくると、大きなパラボラ・アンテナの下に人影が見えた。
待っていた人物は金髪の女だった。一見パンク風のその格好に、松木は内心失望した。だが気を取り直して近付くと、営業用の声で語りかけた。
「私は『チャンネルTVー468TEN』の松木と申します。こちらはレポーターの宮坂。で、あなたが連絡頂いた、宇宙人の仲介者?」
女は軽く鼻を鳴らした。
「仲介者ではない。私がマグマ星人だ。固体名称はネフェル...」
「冗談はよせよ。あんた、どう見ても地球人じゃないか。こっちは数時間かけてわざわざネオシティから来たんだぞ。一体どうしてくれるんだ!」
照りつける日差しの下、それまで抑えていた遺伝の火病が一挙に噴出した松木は、いきなり大声で女を怒鳴りつけた。
「ソウ吠エルナ、地球人。私ハ嘘ヲ言ッイルノデハナイ。落チ着イテ、話ヲ聞ケ...」
あからさまに侮蔑の表情を浮かべる女に、松木はますます逆上した。
「無駄足を踏ませた事を謝罪しろ!それに償いとして、我々が無駄にした時間分の経費も払え!」
「ドウヤラ御前ハ、脳ニ欠陥ガ有ルヨウダナ。此処ニ来タノハ御前自身ノ意志ダロウガ...シカシ御前ガ望ムナラバ、我々ガ別ノ脳ト取替エテヤッテモ良イゾ...」
明菜は慌てて、激高する松木の腕を押さえた。
「ちょっと待って。松木の失礼はお詫びします。ですが私から見ても、あなたが宇宙人とは思えません。もしそうなら、何かの証拠を見せて頂けませんでしょうか?」
「フム...御前ハ、マトモナ知性ヲ持ッテイルヨウダ...良イダロウ、コレデ納得スルカ?」
明菜に顔を向けた女は、ゆっくりと胸の前で両腕を十字に組んだ。
「あ!」
ネフェルと名乗った女の身体が青白い光を放ち、黒光した肌を持つ異星人の姿に変わった。
「約束通リ、コレカラ『エリザ姉妹』ガ敗北スル様ヲ見セテヤロウ。御前達ハ『エリザ姉妹』ノ惨メナ姿ヲ、全地球人ニ伝エルノダ...」
ネフェルは松木達に背を向け、宙を指差した。すると空中から巨大な光球が出現し、やがてそれは禍々しい怪獣に姿を変えた。
「おお!すごいぞ!...これで世紀の大スクープは俺のものだ!」
出現した巨大な怪獣に興奮した松木は、背後にいたカメラマンに叫んだ。
「カメラの準備だ、岸川! 絶対、録り損ねるんじゃないぞ。明菜ちゃん、早くメイク直して!」
オペレーションルームに、けたたましく警報が鳴り響いた。通信員のサヤカはパネルの表示を確認すると、後に振り返った。
「隊長!セクタ32のグリッド13に怪獣が出現!既に付近の防衛空軍基地から、戦闘機がスクランブルしました」
「こちらも空中哨戒中のタカハラを急行させろ...地上パトロール班のカトウはどこだ?」
「現在位置は...セクタ32のグリッド9です」
「近いな。良し、カトウ達も至急現場に向かわせるんだ...」
退屈で居眠りを仕掛かっていたタカハラのインターコムに、基地からの通信が飛び込んで来た。
「怪獣警報! ファルコン1は直ちにポイント32−13へ向かえ。繰り返す...」
「こちらファルコン1、指示を了解。直ちにポイント32−13に急行する」
タカハラは自動操縦を切ると、操縦幹を倒して機種を北東に向けた...。
「こちらポインター3、指示を了解。直ちにグリッド13に向かいます」
車載コンピュータの表示を確認したカトウは、ミズキに右折を指示した。
ミズキがアクセルを思い切り踏み込むと、ポインターはタイヤを軋ませながら、交差点を鋭く曲がった。
夏のこの季節、国道から電波天文台へと続く自然公園の道は、普段なら格好のハイキングコースである。だが今それは、人々が叫び声をあげて逃げ惑う、地獄の道となっていた。
「フッ...」
混乱して走り去る人々を見ながら、ネゲブは微笑みを浮かべた。まもなくこの星の全土がこのようになる。そして支配者としてこの星に君臨するのは、ネゲブ達マグマ星人なのだ。そう考えただけで、ネゲブは自然と湧き上がる笑みを抑えることができなかった...。
突然、絵里の円形をしたペンダントが、眩い光を放ち出した。
「あ!」
見れば亜里沙自身のペンダントも、青く輝き出している。
「行かなきゃ...」
ベッドを降りようとする絵里の肩を、慌てて亜里沙が押さえた。
「ダメだよ、姉貴!まだ休んでなくちゃ...」
「判ってる..でも...」
「少しは妹を信頼しなさいって...今回は私に任せて!」
亜里沙はウィンクすると、笑顔を絵里に向けた。
「また後でね。すぐ戻るよ!」
そう言うと亜里沙は、病室の扉に向けて駆け出した。
「亜里沙...気をつけて...」
間仕切の陰に去った妹の背に、絵里はそっと呟いた。
非常階段の扉をハネ開けると、夏の日光が亜里沙を出迎えた。熱せられた足下のコンクリートから、陽炎が立ち昇っている。
亜里沙は足を止めると、天空に向かって両手を広げた。
「アリサ・チェンジ!」
掛け声と共に、眩い光の渦が瞬時に亜里沙の身体を包んだ...。
「各編隊、パターン3にて攻撃に掛かれ。アタック!」
そう叫ぶとタカハラは、HUD上に重なる怪獣目掛けて発射トリガーを引いた。
後続の防衛軍攻撃機もファルコンに続き、瞬時に怪獣の身体は爆発の炎に包まれる。怪獣は怒りに燃えて、ムチのようなその両腕を振り回した。
「くそっ...」
幾つものミサイルが怪獣を直撃したが、怪獣に怯んだ様子は見受けられなかった。タカハラはファルコンを緩く旋回させると、インターコムに向かって怒鳴った。
「こちらファルコン1。通常のミサイルでは全く効果が無い。すぐに対怪獣用D兵装を積んだ攻撃機を寄越してくれ!」
ミズキがきつくブレーキを踏むと、4輪駆動モードのポインターが前のめりに停止した。丘の稜線の向こうに、近付いて来る怪獣の姿が見える。
カトウは素早く外に飛び出すと、ポインターの後部トランクを開いた。
「ミズキ、弾薬を持て。接近して攻撃するぞ!」
対怪獣携帯ロケットランチャー、AMRLを肩に担いだカトウは、緊張した表情のミズキに声を掛けた。
突然、接近警戒警報がヘッドフォンに流れた。タカハラが素早く周囲を見回すと、低高度で高速接近する物体を視認した。
「南西より未確認飛行物体接近中!...あれは...アリサだ!」
アリサが目の前の地面に降り立つと、怪獣はピタリとその歩みを止めた。
「さあ、来なさい!」
両方の拳を構えたアリサは、自分を奮い立たせるように叫んだ。
「妹ノ方カ...マア良イ。少シ痛メツ付ケテヤレバ、姉モ現レルダロウ...」
そう言うとネフェルは、さっと右手を横に払った。
「『ネゲブ』ハ、ソノママ待機セヨ...『ネルヴァ』、ソノ小娘ヲ可愛ガッテオヤリ!」
Act6
炎天下の闘い
怪獣はアリサよりも遥かに背が高く、その両手は太い鞭状になっていた。アリサを威嚇するかのように、怪獣は左右の鞭を振るいながらじりじりと接近してくる。鋭く風を切る音が、アリサに恐怖の感情を抱かせた。
「行くわよ!」
湧き上がった恐怖を押え付けて、アリサは怪獣目掛けて突進した。
鞭をかわして相手の内懐に飛び込んだアリサは、その腹に左右の連続パンチを叩き込んだ。だが怪獣の皮膚は厚いゴムのように、悉く拳の衝撃を吸収してしまう。
「ていっ!」
パンチではダメージを与えられないと感じたアリサは、身体を捻って怪獣の腹に得意のキックを叩き込んだ。
強烈なキックが怪獣の腹にめり込んだが、しかしそれだけであった。アリサが顔を上げると、怪獣の不気味な眼がこちらを見下ろしていた。
「ちっ..効いてないか...」
アリサはじりっと奥歯を噛み締めた。
次の瞬間、怪獣の右手が動いたかと思うと、太い鞭が横殴りにアリサを襲った。ビシッという大きな音がして、鞭はアリサの左脇腹を叩いた。
「うっ!」
電撃に打たれたような痛みが全身に走り、アリサは思わずのけぞった。
怪獣の左右の腕は、中に鉛が仕込まれた重い鞭のようだった。その衝撃は皮膚だけでなく、アリサの筋肉や骨にまで達した。全身を駆ける激しい苦痛に、アリサの顔はひどく歪んだ。
「バシッ」
鈍い音と共に次の一撃が、動きの止まったアリサの側頭部を捉える。
「あうっ!」
その激しい衝撃に、アリサの身体は半回転して後方に吹き飛んだ。
「うう...」
頭部に受けた衝撃で、アリサは脳震盪を起こしていた。必死に起き上がろうとするが、目の焦点が定まらず、アリサは何度も頭を左右に振った。
「...これは合成した画像ではありません。私の背後に繰り広げられている戦いは、紛れも無い事実なのです」
背後から聞こえてくる怪獣の雄叫びに、明菜は緊張を隠せなかった。
「いいぞ。これで俺は一躍TV界の売れっ子だ...」
松木は心の中で何度もマンセーを叫んだ。
「つ...」
何とか立ち上がろうとするアリサだったが、怪獣は容赦なく攻撃を加えてきた。左右の鞭がうなりながら、交互にアリサ目掛けて振り下ろされる。間一髪、アリサは横転でこれを回避した。
なんとか怪獣との距離を空けたアリサは、ようやく片膝で立つことができた。
「あの鞭を何とかしなきゃ...」
その時、耳障りな空電音がして、アリサの背後に光の塊が出現した。見れば光の輝きは次第に弱まり、それはヒューマノイドの姿に変わった。
「え?」
空電音に振り向いたアリサの背後に、黒い肌をした宇宙人が立っていた。
「御前は...マグマ星人!」
「ソノ通リ、私ノ名ハ『ネルヴァ』。『黒蜘蛛姉妹』ノ末娘サ...互イニ末娘同士ト言ウ訳ダ」
ネルヴァはニヤリと笑うと、ゆっくりとアリサに近付いた。
「姉さんを騙まし討ちしたのは御前達か...借りは返させてもうらうよ!」
絵里のやつれた表情がアリサの脳裏に浮かび、アリサの心に憤怒の激情が沸き起こった。
「望ム所サ!」
そう言い放つとネルヴァは、アリサに襲い掛かった。
突然出現した宇宙人の姿に、カトウは慌てて足を止めた。
「カトウよりアルファ1へ! 新たに宇宙人が現れた。映像を転送する」
「まずいわ...」
アリサを見つめるミズキの顔が険しくなった。
キサラギが急ぎ足で作戦室に入ると、隊長のカタギリが忙しげに作戦指揮をしているところだった。
「こちらで怪獣を識別した。そいつはグドンだ...すぐに増援を向かわせる。君達はできるだけ、アリサを援護してくれ」
そう言ってからカタギリは通信士のサヤカに向き直った。
「サヤカ、地上部隊の到着予定時間は?」
「ETAは約2時間後です」
「それでは間に合わん...空軍に攻撃機の増援を依頼しろ、通常の対地装備でも構わんと言え」
「ああ、博士...たった今、現場の映像が入って来た所です」
カタギリはキサラギをスクリーンの前に誘った。
「怪獣の他に、宇宙人も現れたのですね?」
「例の数的優位を確保する戦術ですな...」
映像を見つめるカタギリの顔に、不安と緊張が見て取れた。
攻撃を連続でかわされたネルヴァは、更に踏み込んでアリサと組み合った。アリサの自由を奪い、背後のグドンに攻撃させる狙いなのだ。だがアリサもこの戦法は予測していた。
「させるか!」
アリサは腰を思い切り捻ると、接近するグドンの腹に後ろ蹴りを見舞った。不意打ちを喰らった怪獣は、慌てて1、2歩後退した。
アリサの予期せぬ反撃に動揺したのか、一瞬組み合っているネルヴァの腕の力が緩んだ。
「ていっ!」
素早くネルヴァの手首を掴んだアリサは、自分の腰を相手に密着させて身体を回転させた。バランスを崩されたネルヴァの身体は、弧を描いて宙に飛んだ。
「グッ!」
地面に叩きつけられたネルヴァが短く呻いた。
「よしっ!」
会心の投げが決まったアリサは、思わず快哉を叫んだ。だがその時アリサは、自分が重大な判断ミスを犯していたことに気が付いていなかった。
背後の足音に、アリサは急いで振り返った。
「あ!」
先程のキック攻撃で間合いが空いたと思っていたアリサは、怪獣がすぐ間近にいるのを見て驚いた。
振り返る間も無く、グドンの鞭が横殴りに飛来する。鞭は音を立ててアリサの首を捕らえると、勢い良く巻き付いた。
「ぐっ!」
鞭は強烈な力で、グイグイとアリサの喉を圧迫した。
「ううっ...」
自分の首を締め上げる鞭を解こうと、アリサは必死になった。だがアリサがもがけばもがくほど、鞭はその輪を縮めて行く。
「アレヲ使ウカ...」
ネルヴァが右腕を上に向けると、それは青白い光に包まれた。やがてそれは光沢を放つ、鋭い棘を持った星球武器へと変化した。
アリサの必死の抵抗にも関わらず、首を絞める鞭は増々その力を強めていった。
「ぐっ...」
開いたアリサの口からは、しばしば苦痛の喘ぎ声が漏れる。苦悶に喘ぐアリサの背後に、武器を構えたネルヴァがそっと忍び寄った。
ネルヴァは星球武器を、勢い良くアリサの後頭部へ叩き付けた。ドスッという鈍い音と共に、金属の棘がアリサの頭蓋にめりこむ。
「あうっ!」
思わず悲鳴を上げたアリサの意識は、一瞬にして遠くなった。
首に巻きついていた鞭が解かれると、アリサは膝から地面に崩れ落ちた。
「チッ..歯応エガ無サ過ギル...武器デハ殺シテシマウナ...」
ネルヴァは舌打ちしながら、実体化させていた右腕の武器を解除した。
「戦士ト聞イテイタガ、全クノ期待外レダナ。所詮ハ、逃亡奴隷ノ小娘カ...」
「ダガ御前ノ役目ハ、マダ在ル...」
ネルヴァはアリサの腕を取ると、無理矢理立ち上がらせた。痛みに歪んだアリサの視界に、両腕を広げて待つ怪獣の姿が写る。
「受ケ取レ、グドン!」
ネルヴァはハンマー投げのように、アリサの身体を勢い良く前方に投げ出した。
アリサは半回転して怪獣に激しく衝突した。周囲にズシンという鈍い音が響く。だがグドンはその程度の衝撃では、微動だにしなかった。怪獣はアリサの両脇に腕を挿し入れると、1万トンもあるその身体を軽々と宙に吊り上げた。
頭部に受けたダメージで、アリサの平衡感覚は失われたままだった。空中に吊り下げられたアリサは全く身動きできず、力なく垂れ下がった両足が微かに揺れている。
「サテト...始メルトスルカ...」
ネルヴァはゆっくりと、怯えるアリサに近付いた。
Act7
笞刑
「こちらファルコン1、アリサが捕まった!」
タカハラは歯軋りしながら、コンピュータを対地攻撃モードに切り替えた。
「もう対空用ミサイルしか残ってないが、できるだけやってみる」
ファルコンは緩横転に入ると、高度を更に下げて行った。
「こちらアルファ1、カタギリだ。そのまま増援を待て。無茶は止めろ、タカハラ!」
インターコムに流れる緊張した声に、思わず通信士のサヤカが振り向いた。
「...」
緊迫した状況を目の当たりにして、キサラギは無意識のうちに両手を握り締めていた。
「攻撃!」
タカハラはマグマ星人の背中をHUDの照準に捕らえると、指でトリガーを2回絞った。近距離の為に誘導時間は数秒も無かったが、ミサイルは上手く命中した。
「チッ!地球人共メ...姉貴、始末ハ任セタ...」
対空用ミサイルでは、ネルヴァに傷ひとつ付けることはできなかった。しかもこの攻撃でタカハラは、別な脅威に狙われることになった。
妹の戦い振りを見つめていたネゲブは、右手のサーベルを実体化させた。
「防衛軍ノ蝿メ。今、叩キ落シテヤル...」
低空を通過するファルコンは格好の標的だった。ネゲブの放った光線が空を貫き、ファルコンの右翼に命中した。片翼を失ったファルコンは右側に傾くと、そのまま地上に落下して行った。
黒煙を引いたファルコンが頭上を通過すると、カトウ達は思わず頭を下げた。一瞬の後、背後で凄まじい爆発音が響いた。
「あれを!」
ミズキの声にカトウが振り返ると、地上に向かって降下するパラシュートが見えた。カトウはインターコムの通話ボタンを押した。
「こちらカトウ、ファルコン1が撃墜された。タカハラは機外に脱出...」
風に揺られて降下するパラシュートをみながら、カトウはそっと呟いた。
「無事でいろよ、タカハラ...」
「邪魔者ハ居無クナッタ。サテ、ドウ料理シテヤルカ...」
アリサの怯えた表情に、ネルヴァは薄笑いを浮かべた。
「マダ小娘ノ癖ニ、身体ハ立派ナ大人ダナ...苦痛ニドコマデ耐エラレルカ、試シテミヨウジャナイカ...」
ネルヴァは狙いを定めると、右拳を鋭く突き出した。それはアリサの左乳房に、深々と突き刺った。
「うっ!」
針に刺されたような鋭い痛みが乳房に走り、反射的にアリサは天を仰いだ。
「く...」
乳房の痛みに、アリサは顔を歪めた。
「御前達ノ弱点ハ、当ノ昔ニ同盟軍ニ判明シテイル。御前ト姉ノ『エリザ』ニハ、全ク勝チ目ハ無イノサ...」
アリサの顎を指で撫でながら、ネルヴァは嬉しそうに笑った。
「モウ少シ、苦痛ヲ味ワッテ貰オウ...御前達ガ一番、苦痛ヲ感ジル部位デナ」
ネルヴァの拳がアリサの下腹部を鋭くえぐる。下腹部深くめり込んだ拳は、アリサの子宮を直撃した。
「あうっ!」
全身に稲妻に打たれたような衝撃が走り、アリサの身体が大きく仰け反った。
突然、針で刺されたような痛みが、絵里の左胸に走った。
「もしや...」
不安に襲われた絵里は、何とかベッドから這い出る。だが床に立った瞬間、今度は下腹部を猛烈な痛みが襲った。苦痛に悶えるアリサの意識が、思念波として絵里に伝わったのだ。
「亜里沙...」
まだ半ば麻痺している足を引きずりながら、絵里は裸足のまま病室の扉に向かった。
診療施設のあるD棟には、屋上に直接通じるエレベーターは無い。絵里は廊下の重いドアを開けると、よろめきながら非常階段に出た。
「はぁ...はぁ...」
まだ熱が下がっていない身体が、鉛のように重く感じられる。それでも絵里は手摺に掴まりながら、一歩一歩階段を登っていった...。
「ぐふっ!」
4発目のパンチが子宮を貫き、天を仰いだアリサの口から鮮血の飛沫が舞った。
「中々シブトイナ...ダガ、コレデドウダ!」
ネルヴァは腰を捻ると、渾身の突きをアリサの子宮に叩き込んだ。
アリサの子宮は激しく内出血を起こし、既に大量の血がヴァギナへと流入していた。血液が充満していたヴァギナは、加えられた最後の衝撃に耐え切れず、股間から血の噴水を噴き出した。
「あっ!」
アリサの股間から血飛沫が噴出した時、明菜は思わず口に手を当てた。
「うひょ〜、こりゃあナイスだ。おいカメラ、股間をズームアップしろ!これで視聴率30%は固いぞ!」
青褪める明菜の脇で、松木が嬉々として叫んだ。
股間から滴り落ちる鮮血で、アリサの足下に血溜りが出来ていた。
「ううっ...」
全身を駆け巡る苦痛に、アリサの身体は小刻みに震える。その時胸のクリスタルが黄色に輝き出し、ゆっくりとした警告音が周囲の丘に木霊し始めた。
「御前ノ血液ハ『光子エネルギー』ヲ体中ノ筋肉ニ伝達スル媒体ダ。出血ト共ニ御前ノ『光子エネルギー』ハ、失ワレテ行クノサ...」
ネルヴァは震えるアリサを見下ろしながら、満足そうに微笑んだ。
這うようにして屋上に出た絵里は、震える足を止め、大きく肩で深呼吸をした。
「あうっ...」
その時、再び絵里の下腹部に激痛が走る。それは先程よりもずっと激しかった。思わず絵里は、前のめりに両膝を付いた。
「亜里沙が..危ない...」
絵里は腕に力を込め、歯を喰いしばりながら、何とか上半身を起こした。
「待ってて、亜里沙...」
天を仰いだ絵里は、右手を高く掲げる。
「エリザ・チェンジ!」
掛け声と共に淡い光の渦が現れ、ゆっくりと絵里を包み込んだ。やがて光の渦は輝度を増すと、空高く舞い上がった...。
グドンが両腕を下ろすと、アリサは音を立てて地面に崩れ落ちた。幾度も子宮を突かれたアリサの身体は、ピクピクと小刻みに痙攣している。
「脆イナ...御前ガ戦士トハ、聞イテ呆レル...」
侮蔑の表情を浮かべたネルヴァは、ゆっくりとアリサに近付いた。
片膝を付いたネルヴァは手で怪獣に合図した。
「グドン、前方ニ廻レ...」
命令を受けた怪獣は、ゆっくりと移動し始める。その脇でネルヴァは、抵抗できないアリサを無理矢理立ち上がらせた。
「本番ハコレカラダ。タップリト苦痛ヲ味ワッテ貰ウヨ...」
両手首を掴んだネルヴァは、アリサの上半身を思い切り反り返させた。
「あ...」
顔を上げたアリサの先に、巨大な怪獣の姿があった。その赤い眼には凶悪な光が宿っている。
「グドン、ヤッテオシマイ!」
ネルヴァの声に、怪獣は腕の鞭を大きく振り上げた...。
太い鞭が風を切って唸り、強烈な一撃がアリサの側頭部を捉える。
「ぐっ!」
アリサの頭が激しく揺れ動き、回復しかけていた意識が再び遠のいた。
激しく鞭打たれ、苦痛に喘ぐアリサの姿に、キサラギはカタギリに振り返った。
「もしや、これも罠では...」
カタギリはキサラギの目を見た。
「私も救援に向かいます、博士にも同行を。ただし生命の保証はできませんが」
キサラギは深く頷いた。
「構いませんわ。さ、早く!」
カタギリは素早くヘルメットを掴むと、サヤカに怒鳴った。
「ジャイロの緊急発進準備。カトウ達には、増援の到着まで時間を稼げと言え!」
「了解!伝えます」
弧を描いて飛んでくる鞭は、身動きできないアリサを容赦なく捕らえ続けた。
「あうっ......」
鞭の打撃音とアリサの苦痛の喘ぎ声、そして胸のクリスタルから発せられる警告音の三重奏が、高原の丘陵に木霊した。やがてネルヴァは、抑えているアリサの腕から、振り解こうとする力が無くなったのを感じた。
「限界ダナ...グドン、胸ニ攻撃ヲ集中シロ。乳房ヲ狙エ...」
無防備に曝け出されたアリサの乳房に、次々と怪獣の太い鞭が打ち込まれる。叩かれる度にアリサの豊満な乳房が歪み、上下左右に激しく揺れ動いた。
「うっ...うう...」
アリサの口から漏れる悲鳴は、もはや言葉にならなかった...。
「装填急げ、アリサがやられちまうぞ!」
立ったまま笞刑を受けているアリサの姿に、カトウは思わずミズキに怒鳴った。
「はい!」
ミズキも必死になって、重い弾薬をロケット発射機に押し込んだ。
Act8
閉じられた罠
十数回に及ぶ殴打の後、ようやく地獄の笞刑は終わった。ネルヴァが掴んでいた手を放すと、支えを失ったアリサはがっくりと地面に膝を付いた。
「起コセ...」
地面に倒れかけたアリサの首に、怪獣の鞭が音を立てて巻きついた。
怪獣は片腕で、強引にアリサの身体を持ち上げた。半ば失神状態のアリサには、怪獣の力に抵抗する術も無かった。
「サテト...コノ薬ノ出番ダナ...」
ネルヴァの右手には、赤桃色に輝く紡錘形の物体が握られていた。
ネルヴァは片膝を付くと、背後からアリサの股間に右手を差し入れた。物体の尖った先端がアリサの恥丘を探り廻り、やがて深い裂け目に行き当たった。
「此処ダナ...」
物体の先端が陰唇の間に潜り込むと、ネルヴァはそれを奥へとグイグイ押し込んだ。反射的に膣口が収縮を起こして異物の侵入に抵抗したが、血に濡れた膣壁ではこれを阻止できなかった。
股間に触れているネルヴァの指に、薬に反応し始めた膣壁の振動が伝わってくる。はずみで薬が吐き出されないように、ネルヴァは2本の指で陰唇を左右からきつく抑えた。やがて薬が融解し始めると、膣はみずから薬を奥へと吸い込んで行った...。
その時、怪獣の背に閃光が走り、くぐもった爆発音が響いた。ネルヴァはアリサの背後に身を潜めながら、素早く前方を覗った。一瞬戸惑ったネルヴァだったが、目を凝らすと丘の稜線に小さな人影が見えた。
「チッ、小癪ナ地球人共メ...」
「命中だ。次弾装填急げ!」
狙いを定めながらカトウが叫んだ。
「はい!」
ロケット弾を押し込んだミズキは、カトウのヘルメットを軽く叩いて合図する。
ネルヴァは怪獣に邪魔者の始末を命令した。
「グドン、奴等ヲ踏ミ潰シテシマエ!」
その一方で抜け目の無いネルヴァは、背後から乳房を掴み、アリサの身体を拘束してしまった。
「クソッ、こんな火器じゃ歯が立たん!」
カトウは続けざまにロケット弾を命中させたが、怪獣に怯んだ様子は見られない。それどころか怪獣は、咆哮しながらカトウ達の方に猛然と突進して来た。
拘束されたアリサの胸で、クリスタルが赤色に輝き始めた。クリスタルが発する警告音も、よりピッチが速くなった。
「御願い、怪獣を止めて...地球の人達を殺さないで...」
身動きできないアリサは、必死にネルヴァに嘆願した。それを聞いたネルヴァは、愉快そうに笑った。
「自分デ止メタラドウダ?モットモ、今ノ御前デハ、動ク事スラ不可能ダロウガ...」
ヴァギナから挿入された薬はアリサの子宮を刺激し、性ホルモン物質を含む大量の体液を分泌させていた。その体液がヴァギナに溢れ出し、更には陰唇から一筋の水流となって足下に滴り落ちた。
アリサの子宮は身体へのエネルギー供給を止め、その光子エネルギーを性ホルモン物質の生成に向けている。ネルヴァはアリサの乳房を刺激し続けることで、その分泌を更に促進させていた。
「あ...ああっ...」
次第に高まっていく性的な興奮が、アリサの意識を悦びで満たして行く。それはアリサが経験したことのない、甘美で刺激的なものだった。意識の底に微かに残っていた、カトウ達を助けられない自分への嫌悪感は、めくるめく陶酔の噴流に押し流されて消えた。
だが快楽の頂に登る一方で、エネルギーの供給を絶たれたアリサの肉体は、驚くほど急速に衰弱して行った...。
数分と経たない内に、カトウとミズキは携行してきたロケット弾の半数以上を打ちまくった。だが必死の奮戦も虚しく、怪獣はすぐ間近まで迫って来た。見上げると遥か頭上から、禍々しい光を放つ怪獣の眼がカトウ達を見下ろしている。
「逃げろ、ミズキ!」
2人が逃げ出しに掛かった瞬間、頭上から電柱の太さ程もある巨大な触腕が降って来た。先端の鞭が地面を叩いた瞬間、その衝撃でカトウとミズキは数メートルも吹き飛ばされた。
頭を打ったミズキは、軽い眩暈を感じていた。顔を上げると、うつ伏せに倒れているカトウの姿が目に入った。
「副長!...」
だがミズキの声が届かないのか、カトウはピクリとも動かない。そしてその向こうには、なおも迫る巨大な怪獣の姿があった。
「これまで..か...」
ミズキは静かに瞼を閉じ、最期の一撃を待った。その脳裏には、故郷の父と母の笑顔が浮かんだ...。
だがその時、突如天空から舞い降りた影が怪獣と交差した。不意を突かれた怪獣は半回転して後方に倒れ、周囲の丘に物凄い音が響いた。
突然の大きな音に、ミズキは目を開けて上を見上げた。そこには銀色の肌をした、巨大な女性の姿があった。
「エリザ!来てくれたのね...」
一度は死を覚悟したミズキの心に、再び希望の光が差し込んだ。
背後を振り返ったエリザの目に、乳房を拘束されているアリサの姿が写った。その足下の地面には、赤桃色の池が広がっている。その毒々しい色合いはエリザに、絵里が受けた残酷な仕打ちを思い起こさせた。
「アリサを放しなさい!」
ネルヴァに投げつけた言葉に、エリザの抑えがたい怒りが現れていた。
ネルヴァが握っていたアリサの乳房を放すと、アリサの身体はゆっくりと前のめりに倒れた。
「地球の守護女神、『エリザ』様ノ御登場ト...マア、コッチノ雌豚デハ役者不足ダカラ仕方無イ...」
倒れているアリサを手で示しながら、ネルヴァはゆっくりとエリザの方に近付いた。
「何ですって...もう許さない!」
自分をかばって戦った妹をひどく貶され、エリザは怒り心頭に達した。
「ヨウヤク標的ノ『エリザ』ガ現レタ。コレカラ御前達ガ好ム情景ヲ、タップリト見セテヤロウ...」
明菜達を振り返ったネフェルは、不気味な笑いを浮かべた。
「あの『エリザ』が辱められるのか?こりゃ凄いぞ。頼むから盛大にやってくれ!」
喜色満面の松木だったが、横に居た明菜と川岸はそっと眉をひそめた。
「ヤット現レタカ...」
エリザの姿を認めたネゲブは、両腕を胸の前で交差させた。腕の皮膚下に埋め込んだ装置から、短い電磁波が飛ぶ。それは隠してあった宇宙母船への通信であった。
エリザ達の場所を中心に、突如エネルギー・フィールドが出現した。淡く光るフィールドの壁は、徐々に透明化して行くと、やがて見えなくなった。
「あれは...フォース・シールド?」
地球人より可視波長域が広いエリザには、半球状に上空を覆うエネルギー壁が見て取れた。
「コレカラ始マル楽シイ劇場ヲ、邪魔サレルテハ困ルカラナ」
ネルヴァは大袈裟に肩をすくませて見せた。だがその視線は、エリザの背後に迫る怪獣に向けられていた。
「ソシテ同時ニ、御前ガ逃亡スルノヲ防グ為デモアル...」
針葉樹の幹が踏み倒される音で、エリザは背後の怪獣に気付いた。振り向く間もなく、頭上から鞭状の太い触腕が襲ってくる。だが一瞬早く察知していたエリザは、咄嗟に身体を捻ってこれをかわした。
「エイッ!」
エリザのカウンターキックが怪獣の胴にめり込むと、たまらず怪獣は後方に後ずさりした。
「チッ...」
怪獣による奇襲攻撃に失敗したネルヴァは、舌打ちするとエリザ目掛けて突進した。
走り込んだ勢いそのままに、ネルヴァは大振りのパンチをエリザに見舞った。エリザが腕を曲げてこれを逸らすと、前のめりになったネルヴァの体勢が崩れた。
その一瞬の隙を、エリザは見逃さなかった。素早く腰を相手に寄せ、軸足を払って相手の体を掬い投げた。
エリザよりも体重の軽いネルヴァは、大きく弧を描いて宙を飛んだ。意識して狙ったのではないが、ネルヴァの飛んだ方向と怪獣の進路が交差した。
ネルヴァと怪獣が激しく激突し、互いに絡み合って地面に崩れ落ちた。
「やったわ...」
一瞬肩の力を抜いたエリザだったが、その時背後から聞こえて来る、クリスタルの警告音に気が付いた。
「アリサ!」
エリザは慌てて振り向くと、アリサの所へ疾走した。
地面に突っ伏しているアリサを見て、エリザはひどく動揺した。ピクピクと小刻みに震える腰の下には、あの忌まわしい液体が池のように広がっている。
「なんて酷いことを...」
エリザは跪くと、そっと妹の身体を抱き起こした。
胸のクリスタルは赤く染まり、その警告音は早鐘のように激しく鳴り響いている。もはやアリサに残された時間は、殆ど無いことは明らかだった。
「罠よ...早く..逃げ..て...」
苦しい息の下、アリサの口から漏れたのは姉を気遣う言葉だった。
「しっかりして、アリサ!」
エリザはアリサを地面に横たえると、胸のクリスタルに変身解除信号を送った。光子エネルギーを分け与えることもできたが、例の薬に子宮を犯されてしまった以上、アリサがもはや戦えない状態にあることをエリザは知っていた。
「ゆっくり休むのよ...」
この先に、恐ろしい出来事が自分を待っていることを、エリザは予感していた。そして妹のアリサには、決してそれを味合わせまいと思った...。


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