秘 密 結 社 驚 愕 団
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- GALLARY / EPISODE 7B
- 悪の華 -


Act9
孤立無援
アリサの身体に分子変換が始まると、その姿は眩しい光へと変わる。その時、エリザの背後で聞き慣れぬ空電音が聞こえた。
「?」
肩越しに振り返ると、少し離れた場所にもうひとつの光の集団が出現した。そしてそれは瞬く間に、人の形へと変化していった。
「ドウセ来ルナラ、モット早ク来テ欲シイネ。ネゲブ姉貴モ性格悪イヤ...」
ネルヴァはゆっくり腰を上げると、応援に来た姉に悪態をついた。
「来たわね...」
新たな敵が出現したことに、エリザは驚かなかった。自分とアリサの2人を罠に掛ける以上、敵はそれ以上の頭数で待ち伏せている筈だった。
しかしエリザには、同時に3体もの敵を相手に戦った経験は無い。2体相手の戦闘ですら、エリザは過去に幾度となく敗北の憂き目に会っていた。
カタギリが操縦するジャイロの後部座席には、キサラギ博士が搭乗していた。既にジャイロが出し得る最高速で飛んでいたが、それでもカタギリの不安は消えない。
「こちらドーヴ1、カタギリだ。現在目標座標に接近中。カトウ、ミズキ、状況を報告しろ...」
「こちらミズキ、カトウ副長が負傷しました。外傷は無いものの、ひどく頭を打っています...」
「カタギリ了解、御前達はすぐに後退しろ。戦況の方はどうなっている?」
「アリサの退却後に、新たな宇宙人が現れました。現在エリザは3匹の敵に包囲されています!」
次第に悪化していく戦況に、カタギリは奥歯を噛み締めた。とその時、ヘッドフォンに男の声が割り込んだ。
「こちら第16飛行大隊第1中隊。対地レーダーに目標を捕捉した。これより散開、攻撃を開始する...」
カタギリが首を廻すと、地上攻撃機の編隊がこちらを追い越して行くのが見えた。
低空から接近する攻撃機の爆音に、ミズキはハッとして上空を見上げた。
「攻撃は待って下さい!さっき、何か光る物体が...」
だがミズキの制止は間に合わなかった。
見えないエネルギー壁に激突した攻撃機編隊は、瞬時にして爆発、飛散した。爆発の熱を受けたエネルギー壁は一瞬だけその姿を現し、そして再び消えて行った。
「あ...」
爆発の閃光に、エリザは動揺した。自分を助けようとした地球人達が、すぐ目の前で散って行ったのだ。
「フフフ...御前ノ為ニ命ヲ捨テルトハ、馬鹿ナ地球人共ダ...」
ネゲブは低く笑いながら、エリザの方へにじり寄った。
だが最初の攻撃は、背後にいた怪獣グドンが放った。鞭状の触腕が唸りをあげてエリザに振り下ろされる。
「う!」
間一髪、エリザはこれをかわしたが、この攻撃を合図にマグマ姉妹は一斉に飛び掛って来た。
エリザは素早く怪獣に、強烈な後回し蹴りを見舞う。思わぬ反撃にグドンは、後方にのけぞった。
「間合いを取らなければ...」
数的劣勢での戦いでは、近距離から同時攻撃を受ける事が一番危険である。エリザは訓練センターで教わった、教官の言葉を思い出した...。
「左前方に強いエネルギー反応!危険です、距離をとってください!」
モニターに示されたその値に、キサラギは驚いた。
「これは...大型反応炉の数百基分の出力ですって?」
カタギリは速度を失速寸前まで落とすと、モニターを見ながら大きな円を描くようにジャイロを旋回させた。
「クソッ...手も足も出んのか...」
「エイッ!」
襲ってきたネゲブの顎に、エリザのカウンターが命中した。だが今度は背後から、ネルヴァが突進して来る。エリザには息をつく余裕も無かった。
だがエリザもこれまでに、幾度もの闘いを経験している。鋭い後廻し蹴りがネルヴァの胸を捕らえ、ネルヴァの身体は半回転しながら吹き飛んだ。
気が付くと亜里沙は、苔に覆われた地面に倒れていた。咄嗟に起き上がろうしたとたん、身体中の筋肉が悲鳴をあげる。それでも亜里沙は腕を使って、ようやくのことで上半身を起こした。
一旦は道路のある南へと向かったミズキ達だったが、やはり行く手はエネルギー壁に遮られていた。仕方無しに2人は、今度は西へと足を向ける。足を引き摺りながら低い稜線を超えると、ミズキはその先に倒れている人影を見つけた。
「あれは?...確か絵里の妹さんだわ!」
「怪我はない?...でも、どうしてあなたが此処に?」
ミズキは怪訝な表情をしながら、亜里沙の顔を覗き込んだ。
「ええ..私は大丈夫。でも、姉..いえ、エリザが危ないんです...」
エリザは周囲から繰出される攻撃を回避しつつ、時折短い反撃を試みた。だがこのような闘い方は身体に負担を強いるだけでなく、なにより大量のエネルギーを消耗する。息があがり始めたエリザの胸で、クリスタルが黄色く点灯した。
「もうエネルギーが...」
このまま消耗戦を続ければ、敵を倒す前に自分のエネルギーが尽きてしまう。闘いに勝つには、少しでも敵の数を減らさなくてはならない。
「ドウヤラ、勝負ハ付イタナ。スペシウム光線ガ使エナイ御前ニ、到底勝チ目ハ無イ...」
ネゲブの言葉に、エリザは敵が最初からそれを目論んでいたことを知った。
「馬鹿な事を言わないで、勝負はこれからよ!」
エリザは気丈に言い放つと、右手を天高く掲げた。
「スライサー!」
だがエリザはエネルギーの減少に気を取られ、背後に迫る怪獣のことを忘れていた。振り下ろされたグドンの触腕が、勢い良くエリザの腕に絡みついた。
「あっ!」
巻きついた触腕は物凄い力で、ギリギリとエリザの腕を絞り上げる。
「う...」
右腕に走った痛みに、エリザが思わず顔を歪める。すると怪獣のもう一本の触腕が、エリザの左腕を捉えた。
「しまった!」
エリザは必死に身体を捻り、何とか2本の触腕を外そうとした。だがエリザの力よりも、怪獣の力の方が遥かに勝っていた。
「無駄ナ足掻キハ止セバ?..ドウセ逃ゲラレハシナイヨ...」
ネルヴァは笑いながら、ゆっくりとエリザに近付いた。
「雌豚メ...手間ヲ掛ケサセヤガッテ!」
ネルヴァは素早い動きで腰を屈めると、エリザの子宮に拳を叩き込んだ。
「あうっ!」
下半身に電流のような痛みが走り、エリザの全身が硬直した。
そして更にもう一撃が、エリザの子宮を深々とえぐった。
「ぐっ!」
反射的にエリザの顔が天を仰ぎ、その口からは赤い血飛沫が吹き上がった。
エリザの頭が下に落ちたのを見て、ネゲブは怪獣に合図した。グドンが触腕を緩めると、エリザはがっくりと地面に膝を突いた。
そしてエリザの身体は、重力に引かれるようにして、ゆっくりと地面に突っ伏した。
「フン、モウ倒レチマッタ。コレジャ弱過ギテ、練習相手ニモナラナイヨ」
地面に伏したエリザに、ネルヴァは侮蔑の視線を向けた。
「奴隷兵士ナド、所詮我々ノ敵デハ無イサ。サテ、ソロソロ姉貴モ来ル頃ダ。コレカラ楽シクナルゾ...」
ひとつ頷くと、ネゲブはゆっくりとエリザに歩み寄った...。
「あ...」
エリザの苦痛が思念波によって伝わり、ズキズキする痛みが亜里沙の下半身に感じ取れた。
「や、やばいよ、ミズキさん。何とかエリザを助けてあげて!」
エリザを助けたいのはミズキも同じだった。しかしミズキ達には、もはや宇宙人達を阻止する術が無い。ミズキは顔を歪めながら、奥歯を噛み締めた...。
Act10
悦楽の陥穽
ネゲブはエリザの乳房を掴み、強引に引き摺り上げた。子宮の痛みで半ば麻痺しているエリザには、抵抗するふりさえできなかった。
「ホラ、ネフェル姉貴ノ御出座シダ...」
ネルヴァが顔を向けた先に、光の渦が出現した。それは人の姿を取り始め、やがてネフェルの姿に変わった。
「あ、あそこに!」
目の前から突然消えたネフェルが、今度は谷に巨大化した姿を現した。
「おい、カメラ。これからのシーンは絶対に撮り逃すんじゃないぞ。もしミスったら、今日でクビにしてやるからな!」
更にテンションの上がった松木は、拳を握り締めて叫んだ。
ネフェルは怪獣に歩み寄ると、右手の掌を向けた。
「此処デノ御前ノ役目ハ完了ダ。次ハ防衛軍基地ノ襲撃ニ、活躍シテモラウゾ...」
ネフェルが放った光線は、グドンの巨体を光の粒子へと変えた。それらは高原の風に乗り、空気中に拡散して消えて行った。
「サテ、終幕ヘ向ケテ派手ナ『フィナーレ』ト行クカ...」
振り返ったネフェルは、おもむろに妹達に合図した。
「ネゲブ、『エリザ』ノ両脚ヲ開カセロ。ネルヴァ、例ノ薬ハ出来テイルナ?」
「準備ハ万端。今度ノ薬ハ、高濃縮ノ特別製サ。『アリサ』ニ使ッタ奴ノ100倍ノ効果ダカラネ...」
凄みのある笑みを浮かべながら、ネルヴァは上機嫌で答えた。
「コノ薬ハトッテモ良ク効クンダ。天国ヘ登ル想イガ味ワエルヨ...」
ネルヴァは紡錘形の薬を、エリザの陰唇の間に押し込んだ。膣内の高い体温に触れた薬は、瞬時に溶け出し、細胞壁に浸透して行く。
「うっ...」
高濃度の薬が子宮を犯し始めると、エリザの身体は細かく震え出した。
「あれは何?...」
エリザの股間に挿入された物体を見て、ミズキは少し頬を赤らめた。
「媚薬の一種だと思う。しかも信じられないくらい、強力なんだ...」
効果の弱い薬とは言え、アリサも同じものを身体に入れられている。その影響で、亜里沙に戻っても身体が高熱を発していた。
「何て卑怯なの!媚薬を使って辱めるなんて!」
ミズキも気が動転しているのか、亜里沙の発言をいぶかしむ様子は無かった。
薬の刺激を受けたエリザの子宮は、性フェロモンを含む体液を大量に分泌し始めた。次第にその影響は、脳を始めとする身体全体に及んで行く。
「姉貴、コレ見テヨ。凄イ効果ダヨ!」
喘ぐようにゆっくりと開閉を繰り返すエリザの陰唇を指し、ネルヴァが嬉しそうに叫んだ。
「良イ出来ダ、ネルヴァ...今回、報酬ノ半分ハ御前ニヤロウ...」
ネフェルは満足そうに頷いた。
「デモ少シ反応ガ良スギルネ...コノ雌豚、元カラ相当ナ淫乱ダヨ...」
陰唇から勢い良く溢れ出た液体に、ネルヴァが呆れたような声を出した。
「『シャンドラ星人』ノ女ハ特ニ多産ダカラナ。性的ナ刺激ニ対シテ、奴等ハ全ク抵抗デキナイノサ...」
細かく震えるエリザの身体を見ながら、ネフェルは冷酷に微笑んだ。
「サテ、ソロソロ次ノ演目ニ行コウ...ネゲブ、次ハ御前ノ番ダ」
ネフェルは手を振って、悶えるエリザの姿を楽しむ妹達を促した。
「コイツノエネルギーガ尽キテシマッテハ、折角ノ『フィナーレ』ガ台無シニナルカラナ」
「カメラ!あのドバッと吹いた瞬間を撮ったか?ずっと股間にフォーカスしておけ!うはは、こりゃ凄いぞ...」
能天気にはしゃぐ松木とは対照的に、明菜の表情は凍りついていた。
「酷い..酷過ぎる...」
ネフェルが両腕を下げると、エリザは音を立てて地面に倒れ込んだ。
「サテ、次ハ私ノ番カ...」
両手をポンと叩いたネゲブは、エリザの方に顎をしゃくった。
「ネルヴァ、ソイツノ尻ヲ持チ上ゲナ...」
ネゲブの右手が光ったかと思うと、そこには緑色に光る物体が握られていた。
「コレハ特製ノ『ヴァイブレータ』デネ。亀頭ノ稼動範囲ヲ拡大シテ、内臓スル媚薬ノ量ヲ倍ニシテアル...マダカ、ネルヴァ?」
「コノ雌豚、尻ガ大キクテ重インダヨ!」
ネルヴァはエリザの腰に手を廻すと、何とか引っ張り上げようと苦心していた。
「御前ハ、マダ身体ガ小サイカラナ...私ガ代ワロウ」
ネフェルは倒れているエリザに歩み寄ると、屈みこんでエリザの両手首を握った。
ネフェルは腕を引っ張るとエリザの上半身を持ち上げ、自分の両脚でエリザの頭を挟み込む。
「始メロ、ネゲブ...」
ネゲブは手にしたヴァイブレータを起動させると、先端をエリザの陰唇に潜り込ませた。両腕と頭部を拘束されたエリザは、全く抵抗できなかった。
「あ?」
エリザのヴァギナは異物の侵入を感じ取り、即座に信号を脳に伝えた。しかしすでに興奮状態にあるエリザの脳からは、何の指令も来なかった。
「コレデ処女ハ卒業ダナ...」
ネゲブは膣口の抵抗が全く無いのを知ると、ヴァイブレータを一気に奥へ押し込んだ。体液で濡れたエリザの膣壁では、この凶器を押し止めることは不可能だった。
「あうっ!」
ヴァイブレータは膣内深く侵入し、その亀頭が子宮口付近の肉壁にめり込んだ。その刺激が瞬時に脳に達し、津波のような激しい性衝動がエリザを襲った。
「ちくしょう!」
亜里沙は突然大声で叫ぶと、顔を横に向けた。見ればその頬には、一筋の涙がつたっている。
「亜里沙ちゃん...」
ミズキは亜里沙の気持ちが痛い程理解できた。だが、かと言って亜里沙に掛ける慰めの言葉も、すぐには思いつかなかった。
ピクピクと痙攣するエリザの尻を、ネルヴァは珍しそうに撫でた。
「ネゲブ姉貴ノ作ッタ『ヴァイブレータ』ハ凄イ効果ダヨ...デモ薬ガ強力過ギタノカナ?色ガ少シ赤イネ」
ネルヴァは小首を傾げながら、ヴァイブレータをつたって落ちる、エリザの体液を指差した。
「処女膜ヲ破ッタカラ、血ガ混ジッテイルノサ...」
まだ幼さの残る妹に、ネゲブはニヤリと微笑んだ。
エリザの胸に光るクリスタルを見つめながら、ネフェルは残り時間を確認した。
「間モ無ク『エリザ』ノエネルギーガ底ヲ突キ始メル頃ダ...ネゲブ、ソイツヲ立タセロ」
エリザの乳房に手を掛けたネゲブは、その指先に何か固い突起物のようなものを感じた。
「コイツ..乳首ガ勃起シテルゾ...」
「ヘェ〜、コンナ面白イ反応スルンダ。ネゲブ姉貴、モット興奮サセテ見テヨ...」
新しい玩具を見つけた子供のように、ネルヴァは眼を輝かせた。
大柄なネゲブはエリザの身体を易々と引き上げた。エリザの陰唇から滲み出たフェロモン液が、ヴァイブレータをつたって勢い良く地面に滴り落ちる。
「マダ絶頂ニハ遠イカ...ネゲブ、モット乳房ヲ刺激シテヤレ」
「絶頂ッテ何?」
ネルヴァの質問に、ネフェルは笑った。
「大抵ノ種族デハ、雌ハ性的興奮ガ極度ニ高マルト、一種ノ精神的トランス状態ニ陥ルノサ...我々ニハ無縁ノモノダガ...」
「残念だが、博士の予感が的中したようですな」
辱めを受けるエリザを眼下に捉えながら、カタギリは重苦しく呟いた。
「ええ...見てるこちらが、辛いですわ。何か助ける手段でもあれば...」
ヘッドフォンを通して聞こえるキサラギの声は、明らかに意気消沈していた。
ネゲブはエリザの乳房をリズミカルに上下左右に揺すった。それと同時に指を前後に動かしながら、挿んでいる乳首を捏ねる。
「あっ...ああっ...」
エリザが時折発する喘ぎ声が、胸のクリスタルの警告音に調和して、高原の空に響く。
「フン、ドウモ興奮ノ上昇度合ガ緩イナ。コレデハ、エネルギー切レデ『フィナーレ』迎エル事ニナルゾ...」
悶えるエリザの顔を見ながら、ネフェルは不満を漏らした。
「動力源ノ残リガ厳シイケド、ヤッテミルカ。ネルヴァ、『ヴァイブレータ』ノ出力ヲ最大限ニ上ゲテ頂戴」
「ドウスレバ?」
「根元ガ回転式ノ出力調整器ダ。ソレヲ左ニ廻シテ」
「解ッタ、コレダネ...」
ネルヴァは、これ以上廻らない所まで、調整器を目一杯に廻した。そのとたん、ヴァイブレータは唸りを上げて振動し始めた。
「あうっ!」
膣壁をいきなり激しく突かれたエリザは、思わず悲鳴を上げて仰け反った。
モーターの回転するくぐもった音が、エリザの股間から響いて来る。ヴァイブレータは旋回と伸縮を交互に織り交ぜ、エリザの膣内を勢い良く掻き回した。
「ま..負けちゃ...だめ...」
エリザは歯を喰いしばって、頭を左右に振った。急激に高まる官能の悦びに負けまいと、エリザの理性は必死に抵抗を試みた。だがその時、エリザを嘲笑うかのように、胸のクリスタルに赤い光が灯った。
「マダダ...コノ特別製『ヴァイブレータ』ノ性能ハ、コノ程度ジャナイヨ...」
次第に硬さを増してくるエリザの乳首を捏ねながら、ネゲブは自信たっぷりに微笑んだ。
「お願い、アリサ...もう一度変身させて...」
亜里沙は瞼を閉じると、心の中のアリサに訴えた。
「貴女ノ気持ハ判ルワ。デモ、エネルギーガ全ク足リナイノ...」
「1分、いや30秒でも良いからさ、御願い!」
「貴女ニモ分カッテイル筈ヨ...モシ変身デキタトシテモ、アノ3人ガ相手デハ、姉ト同ジ目ニ会ワサレルダケ...」
もどかしさと悲しみが、亜里沙の心を激しく掻き乱した。それを感じてか、心の中のアリサが優しく語りかけた。
「辛イノハ私モ同ジヨ。御願イ、亜里沙。今ハ耐エテ...」
ネゲブの言葉通り、ヴァイブレータは次第にその凶悪性を発揮し始めた。この機械には鋭敏なセンサーが備えられ、膣壁を突いた後の胎内変化を逐一記憶するようにプログラムされていた。
「狙イガ絞レテ来タナ...」
快感に敏感に反応するエリザの乳房から、ネルヴァは膣内でのヴァイブレータの動きを感じ取ることができた。最も反応が高い部位を探し当てたヴァイブレータは、そこを集中して攻め始める。
「あっ..あう...ああっ...」
膣内で最も快感を感じる部位を、不規則な間隔で刺激されるエリザは、思わず大きな喘ぎ声をあげた。怒涛のような性的興奮の噴流が、最後まで抵抗していた理性の破片を一気に押し流した。
「姉貴、コイツ目ノ色ガ変化シタヨ...ソレニ何時ノ間ニカ、乳首ガ赤クナッテル」
「モウスグ絶頂ニ達スルノサ...身体ガ大人ノ女ニ変化シ始メテイル...」
炎天下の高原に、クリスタルの発する激しい警告音が鳴り響いた。それはエリザのエネルギーが、もう僅かしか残されていないことを意味する。子宮がエネルギーの供給を絶ってしまった為に、その到来はいつもよりかなり早かった。
「うっ..ああっ...」
だが悦びの声を上げ、快楽の極みへと階段を登り続けるエリザには、一切の思考が停止している。このままエネルギーが切れて敗北を迎えれば、いずれ死がエリザを待ち受けていることは間違いない。しかしエリザには、今肉体が感じている至高の悦びに比べれば、死すら矮小なものに思えた。今のエリザを支配し突き動かしているのは、脳ではなく激情に燃えあがる子宮であった。
「サテ時間ダ、華々シク『フィナーレ』ト行クゾ。ネルヴァ、ネゲブヲ手伝ッテヤレ...」
勝利を確信したネフェルは、満足そうに妹達へ声を掛けた...。
Act11
恥辱の果て
ネゲブとネルヴァは、エリザの両腕を自分の首に廻し、その両脚の間に腕を差し込んだ。
「結構重イゾ。私ヨリ背ガ低イクセニ、随分デカイ尻ダナ...」
「コノ巨尻デ、雄ヲ魅了スルノ?...雄ノ思考ッテ、解ラナイヨネ...」
戯言を言い合う妹達に、ネフェルは声を掛けた。
「サア、最後ノ場面ダヨ...」
「全地球人ニ告グ。私ノ名ハ『ネフェル』、マグマ星人ダ。暗黒星団カラ、コノ星ノ新シイ支配者トナル為ニヤッテ来タ...」
展望台から見守っている明菜達に向かって、ネフェルは芝居気たっぷりに語りだした。
「後ノ惨メナ奴ハ、御前達モ良ク知ッテイル『エリザ』ダ。コレマデ奴ト妹ノ『アリサ』ハ、御前達地球人ヲ騙シ、コノ星ノ守護女神ヲ詐称シテ来タ」
マグマ星人の振る舞いに、突然プロデューサーの松木が怒り出した。
「カットだ、ここの所はカット!今時こんな演出じゃ視聴率は取れねえぞ。折角の当り素材が台無しじゃねえか、あのクソ宇宙人め...」
横で憤慨している上司を見て、明菜は強い怒りを覚えた。入社以来ずっと抑えてきた感情ではあったが、今それは限界まで達しようとしていた。
「...ダガ奴等ノ本当ノ姿ハ、守護女神ナドデハ無イ。肉欲ニ溺レタ薄汚イ雌豚ナノダ!」
ネフェルは背後のエリザに顔を向けた。
「コノ雌豚ハ、戦オウトモセズ、自発的ニ両脚ヲ開イタ。己ノ快楽ヲ得ル為ニ...」
ネフェルが言葉を切ると、次第に高まるエリザの喘ぎ声が、高原全体に響いた。
「嘘だ、嘘つくな!全部、御前達がやったんじゃないか!」
亜里沙は子供のように、地団駄を踏んで悔しがった。
「仕組まれたな...」
「完全にね..奴等は最初から、エリザを辱めることが目的だったんだわ。私達地球人に見せつける為に...」
ミズキとカトウの表情は、2人とも苦渋に歪んでいた。
「御前達ノ女神『エリザ』ハ、御前達ヲ護ル事ヨリモ、己自身ノ快楽ヲ選択シタ...ツマリハ、御前達ハ『エリザ』ニ見捨テラレタノダ」
ここで肩をすぼめて見せたネフェルは、一呼吸おいて後を続けた。
「ダガ御前達地球人ガ悪イノデハナイ。善良ナ御前達ハ騙サレテイタノダ、『エリザ』ト、ソノ妹『アリサ』ニ...」
「今度は我々に同情して見せるか...中々手の込んだ演説ですな」
ヘッドフォンを通じて流れてくる声に、カタギリは苦々しく吐き捨てた。
「下手な政治家より、大衆煽動に長けてますわね。相当時間を掛けて、地球の事を調査したのでしょう」
後部操縦席モニターのボタン盤を操作しながら、キサラギは不機嫌な声で答えた。
「地球人達ヨ。御前達ノ女神ノ、真ノ姿ヲ見ルノダ!アノ喜悦ノ表情ヲ、歓喜ニ満チタ喘ギ声ヲ...」
ネフェルの煽りも、いまや最高潮に達しようとしていた。
「今マサニ、『エリザ』ノエネルギーハ尽キヨウトシテイル。ニモ拘ラズ、アノ雌豚ハ脚ヲ広ゲタママ、抵抗シヨウトモシナイ。ソレハ何故カ?」
言葉の効果を聞き手の意識に浸透させる為、ネフェルはわざと間を取った。
「理由ハ簡単ダ。コノ雌豚ニハ、肉体ノ悦ビノ方ガ重要ナノダ。御前達地球人ナド、取ルニ足ラナイ存在ト言ウ訳ダ。賢明ナ地球人達ヨ、今コソ悟ル時ダ。御前達ノ守護女神ト名乗ル者ガ、如何ニ淫乱デ、下劣ナ存在デアルカヲ...」
「ああっ...あっ...ああ...」
悦びの頂点に近付いたエリザは、いっそう甲高い喘ぎを発し始める。それに呼応するかのように、胸のクリスタルが激しく点滅を始め、変身解除を促す最終通告音が鳴り響いた。
「...はぁ...はぁっ...ああっ...」
明らかにエリザの喘ぐ間隔が短くなり、胸の乳房が大きく上下し始めた。だがエリザ自身は身体全体を包む、心地よい興奮に身を委ね、既にその意識は眩しい光の世界を漂っていた。自分を辱め、貶めるマグマ星人の言葉も、もはやエリザにとって、遥か遠い世界での悪夢に過ぎなかった...。
エリザの乳房を弄んでいたネゲブは、その身体に起こっている異変に気が付いた。
「ネフェル姉貴、近イヨ。モウ直グダ...」
声を掛けられたネフェルはエリザに歩み寄ると、股間に刺さっているヴァイブレータを握った。
「フィニッシュ、行クヨ...御前達ハ乳首ヲヤリナ...」
ネフェルは手に力を込めながら、序々にヴァイブレータを深く刺し入れた。敏感な部位に深く沈み込んだ亀頭は、薬液を噴出しながら膣壁を激しく掻き乱した。
「はうっ...はっ..はうっ...」
エリザの喘ぎ声が、短い嗚咽のような音に変わる。長い興奮の末にようやく辿り着いた、至高の悦びの頂上が、エリザのすぐ間近に迫っていた。
「もう耐えられない!ミズキさん、銃を貸して!」
亜里沙はミズキに近付くと、腰の銃に手を掛けた。
「何するの!止めなさい!」
驚いたミズキは、咄嗟に亜里沙の腕を押さえた。
「お願い、放して!エリザを助けるんだよ!」
「亜里沙ちゃん、止めて!行っても、殺されるだけよ!」
「そんなこと、かまうもんか!」
亜里沙は掴まれた腕を振りほどこうと、手負いの猛獣のように暴れた。
「馬鹿っ!」
突然ミズキは、亜里沙の頬を強く叩いた。普段は温厚なミズキの豹変に、亜里沙は驚いて地面に膝を突いた。
「よく考えて、亜里沙ちゃん。罠と知りつつ、エリザが此処へ来たのは、一体何故?」
ミズキは落ちた銃を拾いながら、亜里沙に語りかけた。
「恐らくエリザは、こうなる事を知っていたと思うの。でもエリザは敢えて、その運命を受け入れたのよ。私達を守るために...」
「ミズキさん...」
伏せていた顔を上げた亜里沙の頬に、2筋の光る涙が流れ落ちた...。
そしてエリザは、遂にその刻を迎えた。子宮にとっては至高への到達であり、理性にとっては悲嘆の瞬間が。
「あっ...ああ〜っ......」
エリザの一際高い喘ぎ声が高原の空を貫き、その瞬間、胸のクリスタルから光が消滅した。僅かに残っていたエネルギーまでもが、絶頂へと登り詰める為に使い尽くされたのだ。全てが終わったことを示すかのように、エリザの両眼と額のクリスタルからも光が消え去った。
「心臓ノ鼓動ガ止マッタ。エネルギーヲ消耗シ尽クシタナ...」
「見テ、乳首ガ蒼褪メテ行ク。ソレニ次第ニ硬クナッテ行クミタイダヨ」
肩の荷を降ろしたように、ネゲブとネルヴァは喋り出した。
「昇天ト同時ニエネルギー切レトハ、良イ逝キ方ダナ...チッ、陰唇ガ収縮シテ、咥エ込ンダカ...」
ネフェルはヴァイブレータをこじりながら、半ば強引にヴァギナから引抜いた。
それまで栓をされていた膣口が開放され、エリザの陰唇から膣内のフェロモン液が噴出した。その噴流は小さな滝となって足下に流れ落ち、既にかなりの面積に広がった赤桃色の池に、大きな波紋を描いた。
「チョット、コレ凄過ギナイ?コッチノ足首マデ浸カリソウダヨ」
エリザの股間から流出する液体の量に、ネルヴァが驚愕の声をあげる。
「コレダケノ量ヲ生成スルトハ、『シャンドラ女』ノ子宮、正ニ恐ルベシダナ...」
ネゲブも内心驚いたのか、妹の発言に素直に同意した。
「畜生......」
哀れなエリザの姿を正視できずに、亜里沙は顔を覆ってすすり泣いた。
「この借り、必ず返してやるわ...」
怒りを押し殺しながら、ミズキはきつく奥歯を噛み締めた。
「倍にしてな...」
呟いたカトウの表情にも、強い憤りが感じられた。
「もう十分だわ!撮るのは止めて!」
いたたまれなくなった明菜は、ビデオカメラのレンズを手で押さえた。
「こんなヒドイもの、TVで流せる訳ないわ!」
「オイッ!明菜!」
血相を変えた松木は、慌てて明菜の肩を掴んだ。
地面が激しく揺れたかと思うと、谷から巨大な宇宙船が姿を現した。宇宙船は低い高度でゆっくりと、ネフェル達の方へ接近して来る。
「ネゲブ。済マナイガ、コノ雌豚ヲ引渡シニ行ッテクレ...会合スル座標ハ分カッテイルナ?」
宇宙船を誘導しながら、ネゲブは頷いた。
「勿論ダヨ、姉貴。既ニ航行装置ニ入力済ダ...」
宇宙船は倒れているエリザの真上に飛来すると、ゆっくりと停止した。くぐもった機械音が響き、拘束具付きの鎖が降りて来る。
「確カニ『地球人ニ、恐怖ノ印象ヲ与エル物』トハ言ッタガ、コンナ原始的ナ装置デ大丈夫ナノカ?」
鎖を指で弾きながら、ネフェルは小首をかしげた。
「我々ノ母星カラ持参シタ、特殊金属ヲ使ッテアル。ソレニ宇宙船ノ遮蔽シールドデ覆ウカラ、全ク心配ハ無イサ」
拘束具をエリザの足首に嵌めながら、ネゲブは微笑んだ。
エリザを吊り下げた宇宙船は、ゆっくりと上空へ舞い上がった。
「コレデ報酬ハ頂キダネ」
次第に遠ざかるエリザの姿に、ネルヴァは嬉々としてはしゃいだ。
「マダ終ワッテハイナイゾ、ネルヴァ。コノ星ノ統制ハ、マダコレカラダ...」
末の妹をたしなめると、ネフェルは電波天文台の方向を振り返った...。
「つけあがるんじゃねえ、この馬鹿女!」
怒り狂った松木は、思い切り明菜の頬を叩いた。その衝撃で明菜の体は鉄柵にぶつかり、ズルズルとコンクリートの床に崩れ落ちた。
「だいたい同胞でも無い御前が、TVレポーターになれたのは誰のおかげだと思ってんだ。一発レイプしてやらねえと分からねえのかよ!」
ついに感情を抑えきれなくなった明菜は、顔を伏せて泣き始めた。
「折角俺が民進党の仙石先生に頼み込んで、手を廻して貰ったんじゃねえか。そのを恩を仇で返しやがって。てめぇ程度の顔の女なら、他にも吐いて捨てる程いるんだよ!」
「ちょっとボス、抑えて下さいよ。明菜ちゃんだって別に悪気があった訳じゃ...」
岸川は慌ててカメラを置くと、松木の腕を掴んだ。だが火病に火が付いた松木はおさまらず、制止に入った岸川の胸を思い切り突き飛ばした。
「放せ馬鹿野郎!だいたいてめぇも同罪なんだよ、撮影でドジばかり踏みやがって。うちの赤字の大半はおめぇのせいだって分かってんのか?」
猛り狂った松木はその本性を曝け出し、岸川の目の前に中指を突き出した。
「この国のマスコミはな、俺達の同胞が占めてんだよ、この糞イルボンが!何ならこの業界で飯喰えなくしてやるか?どこぞのニュース解説者みたいに?」
「地球人同士デ仲間割レカ?...中々面白イ見世物ジャナイカ...」
突然の声に、全員が振り向く。いつの間にか、背後にマグマ星人が立っていた。
「ソコノ眼鏡ノ男、此方ヘ来イ。御前ハ少シハ見所ガ有ルヨウダ...」
ネフェルは気味悪い笑みを浮かべながら、松木を手招きした。
「モシ御前ガ我々ニ協力スルナラ、特別ニ御前ヲ、地球統制官代理ニ任命シテヤッテモ良イガ...」
ネフェルは値踏するように、松木の顔をじっと見つめた。
「コレカラ我々ハ、コノ星ノ統治ヲ始メル。ダガ最初ノ内ハ、不満分子ノ抵抗モ激シイダロウ。ソコデ聞クガ、御前ナラドウスル?」
思いがけないネフェルの言葉に、松木の心は瞬時に舞い上がった。
「そんな事はわけないですよ、ネフェルさん。昔から、反乱分子は炭鉱での強制労働って、相場は決まってる。そういう輩は片っ端から逮捕して、炭鉱送りにするべきですよ、ええ」
「ホゥ...鉱山デ強制労働サセロト...成程ナ...」
ネフェルはチラリと舌を出しながら、不気味に笑った。
「ソノ意見、早速採用ダ。手始メニ御前ノ家族ト同胞トヤラヲ、火星デノ資源採掘ニ送リ込ムトシヨウ...」
この時松木は、自分に対するネフェルの態度にようやく気が付いた。
「人をおちょくりやがって!ふざけんな!」
瞬時に頭が沸騰した松木は、我を忘れてネフェルに掴みかかった。
「げほっ!」
突然血を吐いた松木は、呆然として自分の腹に突き刺さったものを見下ろした。しかし受けた衝撃で眼鏡がずれ、ぼんやりとした赤いものが見えただけだった。
「きゃあっ!」
あまりの出来事に、明菜は思わず顔を覆う。
「奴隷ノ分際デ主人ニ手ヲ上ゲレバ、当然ソノ報イヲ受ケル。セメテ死ヌ前ニ、己ノ愚カサニ気ガ付クト良イガナ」
顔を歪めてもがき苦しむ松木の顔を、ネフェルは哀れむように覗き込んだ。
「御前ノヨウナ愚カナ種族ハ奴隷ニ適シテイルガ、ソレモ度ガ過ギレバ害ニナル。餌ヲ与エテクレル主人ニ噛ミ付キ、罰トシテ餓死サセラルノガ関ノ山ダ...」
「な..なん..で...」
言葉を続けようとした松木は、口から再び血を吐いた。
「御前ノ家族ト同胞達ハ、約束通リ火星ノ鉱山ニ送ッテヤロウ。御前ノ遺言ダト言ッテ置イテヤル。安心シテ死ヌガ良イ...」
ネフェルの微笑は、まさに悪魔のそれだった。
「あ、哀..号...」
断末魔の言葉が途切れると、松木の身体はぐったりと吊り下がった。
ネフェルは松木の死体を脇に放り出すと、岸川の方に歩み寄り、足下のカメラからテープを取り出した。
「小五月蝿イ馬鹿ハ消エタ...御前達ハ防衛軍ニ行キ、自分達ガ見タ事ヲ話シテヤルガイイ」
明菜と岸川は恐怖に青褪めたまま、黙って頷いた。
「心配スルナ、コノ映像ハ我々ノ手デ放映シテヤル。ソレモ地球ダケデナク、全宇宙ニ向ケテナ...」
そう言い残すとネフェルの姿は光の粒に変わり、消えて行った...。
Act12
暗黒の海
地球の大気圏外に出た大型の宇宙船は、暗黒の空間の一点を目指して更に速度を増して行った。
その時、宇宙船に追いすがる2つの小さな光点が現れた。防衛宇宙軍のステーションから発進した迎撃機である。
「こちらナイト編隊リーダー、地球離脱中の宇宙円盤を捕捉した。現在は太陽系脱出速度だが、物凄い速度で加速中...」
「クソッ、相手ガ速過ギテ追尾デキナイ!」
迎撃機からの報告は、即座に発進基地であるステーションV1に届いた。非常警戒態勢下にあるこのステーションは、緊張した空気に包まれていた。
「サクマ、亜空間ニ逃ゲ込マレル前ニ、何トカ捕捉デキナイカ?」
ステーションV1の指揮官、ベルツ中佐は隣にいたサクマに尋ねた。
「難しいでしょうね。向こうには防御シールドがあるし、我々のスペースホークとは速度が桁違いですから...」
サクマは顔をしかめると、小さく頭を横に振った。
突然、宇宙船の周囲に淡い光の球が発生した。
「奴メ、亜空間ニ入ルゾ!」
光の球が激しく揺らいだように見えた次の瞬間、光の球はかき消すように消えた。ホークは球の消滅した空間を捜索したが、レーダーの反応も無くなっていた。
「通信士、迎撃隊ヲ帰還サセロ...」
深い溜息を付くと、ベルツは指揮官席から立ち上がった。
「今回モ、我々ノ恩人ヲ助ケラレナカッタナ...」
「残念です...」
サクマも肩を落とし、残念そうに俯くほかは無かった。
ドアが開いた音にワタヌキが振り返ると、首相官邸から戻ったクロキ司令が入ってくる所だった。
「お疲れ様でした、司令。で、首相の御決断はいかがでしたか?周囲では市民デモがあったと聞きますが...」
返事は無くともクロキの疲れ切った背中を見れば、それは明らかであった。
「官邸に入る時に、例の尾澤の奴と入れ違いになった。我々防衛軍よりも、奴の方が頼りになるらしいな。それに市民と言っても、掠め取った金をバラまいて集めた『プロ市民』と、奴の息が掛かったマスコミ連中だよ。奴の御供には、特亜代表と自称する奴と宗教団体の代表までいたからな」
「宗教団体が何故?奴の息が掛かっていると言うと、統合教会か..それとも総華学団の方ですかな?」
「基をただせば、どちらも根っこは同じだろうが。奴等、我が国だけでも防衛軍から離脱して、それを交渉材料に宇宙人と講和を結べと首相に迫ったそうだ。いつもは日和見の首相も、流石に頭を抱えていたがね...」
「自分で自分の首に縄を掛けるようなもんですぞ、保護特権にしがみ付くだけの寄生虫共めが。それに気付かんとは、愚かにもほどがある!」
憤るワタヌキの表情が苦悶に歪んだ。
「例えが少し違うな、ワタヌキ君。言うなら『癌細胞』だ。寄生虫には宿主と共存共栄を図る良性の物もいる。だが『癌細胞』は違う...」
椅子に腰を下ろしたクロキは、苦々しげに言った。
「宿主が死ぬまで貪り尽し、宿主が死ぬと同時に自分達も滅びる。そこには理性など存在しない。『癌細胞』が宿主に取って代わることはないのは自明の理だが、『癌細胞』にはそんなことは解らん。生物進化の過程に生じた自滅的な機構だからな」
「奴等にとっては、自分達を養ってくれる愛すべき宿主が、宇宙人に変わるだけなのでしょうな。全く、度し難い奴隷根性だ...」
ワタヌキの言葉に頷いたクロキは、煙草を手に取り、おもむろに火を付けた。
「奴隷には肉体的奴隷と、精神的奴隷の2つがあるのを知っているかね、ワタヌキ君?」
「は...」
「肉体的奴隷は、支配者が消え去れば自立への道を取り戻せる、時間は掛かってもな。だが精神的な奴隷はそうはいかんのだ」
煙草の紫煙を吐き出したクロキの表情は、深い苦渋に満ちていた。
「精神的な奴隷は、支配者に対する憎悪の一念によってのみ、己れの自我を保てる。恨むべき対象が無くなると、精神的に崩壊してしまうのだ」
「恨み、憎しみの一方で、支配を受け入れざるを得ないとは、哀れですな。それでは人間の姿をした獣に過ぎますまい。だがもし我々が宇宙人の支配を受け入れ、それが数百年も経てば、人類全てが同じように...」
「古来、人々はそれを『地獄』と呼んできたのだよ、ワタヌキ君。だが絶対にそうさせてはならん、子供達の未来の為にな。それこそが今の我々の義務だ」
指定された座標は、地球人達が銀河系と呼ぶ星域の末端に位置していた。赤色恒星を中心に公転する惑星の軌道上に、エリザを拉致した宇宙船と同盟軍駆逐艦数隻が停泊している。
同盟軍の派遣艦隊指揮官は、ザールク星人と名乗った。ネゲブが初めて目にする種族で、最近になって同盟側に加わったもののようだった。
「引渡目録ノ全項目ヲ確認シタ。誤魔化シテハイナイヨウダナ、マグマ星人ヨ...」
その高慢な態度は、弱小種族にありがちな虚勢であることをネゲブは知っていた。
「コレデ引渡ハ完了ダ。我々マグマ星人ハ、同盟軍トノ契約ヲ履行シタ。スグニ残リ半分ノ報酬ヲ、我々ノ母星ニ届ケテ貰オウ...」
巨大宇宙船の上部構造が開き、小型の円盤が宇宙空間に姿を現した。円盤はゆっくりとした速度で、巨大宇宙船から離れていく。
「地球ニ戻ッタラ早速、妹ノ方ヲ始末スルカ...コレカラガ忙シクナルナ」
地球への帰路を航法装置に入力し終えると、ネゲブはモニタにエリザの姿を写し出した。
「二度ト、目ニスル事モアルマイ...」
幼少期、代々傭兵の一族に生まれたネゲブ達姉妹は、同族の者達からも蔑まれていた。幼かったネゲブ達姉妹はそうした者達を妬み、呪ったものだった。いつの日か、恵まれた者達への羨望は憎しみに変わり、自分達に過酷な運命を与えた神を恨むようになった。
「帝国ノ腐レ貴族共ガ、御前ノ身体ガ到着スルノヲ待ッテイルゾ。性奴隷トシテ、タップリト可愛ガッテ貰ウガ良イ...」
ネゲブはエリザ姉妹が憎かった。かつて自分達が渇望し、成り得なかった、他者から愛される存在。地球人に慕われるエリザ姉妹を、ネゲブは心の底から憎悪していた...。
防衛軍極東基地の第3会議室で、カタギリは明菜と岸川の話を聞いていた。
「私、途中で撮影をやめさせようとしたんですが、松木が聞き入れませんでした。あの時止めていれば、彼も死なずに済んだかも...」
俯いた明菜の声は、今にも消え入りそうだった。
「奴が死んだのは、自業自得だぜ。火病丸出しで宇宙人に殴りかかれば、そりゃ殺されもするさ」
そう言いながら岸川は、少し肩をすくめた。
「...事情は分かりました。我々防衛軍からは、これ以上お尋ねすることは無いでしょう。ご苦労様でした」
カタギリは記録装置を停止させると、椅子から立ち上がった。
「私達、軍法会議に掛けられるのでしょうか?」
心配そうに問いかけた明菜を、カタギリは肩越しに振り返った。
「軍属ならともかく、貴方達は民間人だ。その可能性は無いでしょうな」
「あの..エリザは今何処にいるんでしょうか?もし知っていたら、教えて頂きたいのですが...」
カタギリは片方の眉を吊り上げながら、明菜の顔を見た。
「時が来たら、記者会見の場で御伝えしますよ。それとも...?」
「いえ、仕事としてお尋ねしたのではありません」
「ほう...」
一瞬、カタギリとミズキは互いに視線を合わせた。
「私達は自分の利益の為に、懸命に戦ってくれたエリザを貶めたのです。本当に恥知らずな人間ですわ」
明菜は伏せた顔を両手で覆った。
「もしできることなら、エリザに謝りたい...たとえ許して貰えなくてもいいから」
後悔の涙を流す明菜の姿に、カタギリ達は皆、視線を床に落とした...。
エリザを運ぶ宇宙船は、小さな惑星の軌道上に留まっている。目には見えないが、その星域には無数の通信電波が飛び交っていた。
ザールク星人は、マグマ星人の作った拘束器を物珍しそうに眺めていた。
「指揮官、司令部カラ暗号通信ガ入リマシタ。直チニ帝国都ニ向ケ発進セヨ、トノ事デス」
背後の声に振り返ると、アンドロイド兵の班長であった。
「ウム。ワームホールノ入口マデ、一気ニ亜空間移動ダ。ソコカラ帝国領ニ入ル...」
その時、宇宙船の背後で突然爆発が起こり、駆逐艦の一隻が吹き飛んだ。
「奇襲攻撃ヲ受ケマシタ。第3象限ヨリ、敵ガ急速ニ接近中...」
感情の無いアンドロイド兵の声は冷静だったが、ザールク星人は感情を剥き出しにして叫んだ。
「反撃シロ!至急、ガンマ基地ニ救援要請ヲ!」
だがその命令も、宇宙船を救うには遅過ぎた。
暗黒の宇宙空間を切り裂き、眩い光の矢が飛来する。その光は宇宙船を捉え、動力区画を吹き飛ばした。宇宙船を襲った激しい衝撃で、エリザを拘束していた鎖が千切れ飛んだ。
弾き飛ばされたエリザの背後で、宇宙船が巨大な火の玉となって爆発し飛散した。爆発で生じたエネルギー波が、エリザを眼下の惑星へと押しやった。
惑星の引力に捉えられたエリザの身体は、ゆっくりと回転しながら、次第に惑星の地表へと落ちて行った...。
Act13
一条の光
落下するエリザを追うように、2つの光球が地表へと降下した。エリザが地表に激突するかと思われた瞬間、2つの光球から放たれた重力場がその身体を包んだ。
光球は次第にその形を変えながら、やがて銀色に光る肌をした女戦士となった。
「間一髪ダッタナ...」
エリザを腕に抱きかかえた女戦士は、その身体をそっと地面に下ろした。その背後では、もうひとつの光球が、本来の姿に変わろうとしていた。
「可哀想ナ娘...ジョアンヌ、ソノ娘ノ戒メヲ解イテアゲナサイ」
「ハイ、母上様...」
ジョアンヌと呼ばれた女戦士は、エリザの手足を拘束していた輪を外しにかかった。
母上と呼ばれた存在は、その手からエリザのクリスタルに青い光を投じた。いくらも経たない内に、エリザの目に光が戻り、額のクリスタルが青く灯った。
意識を取り戻したエリザは、筋肉の痛みを堪えながら上半身を起こした。顔を上げてみると、目の前にいる存在に驚いた。
「教官...ジョアンヌ教官!何故ここに...」
ジョアンヌは、かつて戦士訓練センターでエリザが教えを受けた教官であった。だがその背後に立っている存在に、エリザは更に大きな衝撃を受けた。
「おお、こんなことって...貴女は..マザー!」
幼い頃通った教会の礼拝堂に、その肖像画が掲げられていたのをエリザは思い出した。自由と博愛を教義とする銀十時軍に憧れ、その一員となった時、少女だったエリザは無上の喜びを感じた。銀十時軍の者であれば誰しもが憧れ、慕う指導者。それがマザーであった...。
ウルトリア製の医療装置は短時間の内に、戦闘で痛んだ亜里沙の身体を苦痛から開放してくれた。だが身体の傷は直せても、心の傷は癒されない。亜里沙は自分の心に、ポッカリと穴が開いたような気がしていた。
「私ノ事ヲ心配シテクレテイルノデスネ...」
心の中で、アリサが優しく語りかけてきた。
「うん...あの薬のせいで貴女、女になったんでしょう?」
「女ハ何時ノ日ニカ必ズ、少女カラ大人ノ女ニ変ワル時ヲ迎エマス。私ノ場合、ソレガ今回ノ出来事ダッタノデス」
「そういうもの?私もその時が来たら、アリサのように冷静でいられるかなぁ...」
ほんの短い瞬間ではあったが、あの時体験した肉体の悦びが、亜里沙の記憶のなかで鮮明に蘇った。
「私達『シャンドラー星』ノ女ハ幼少ノ頃カラ、ソノ事ヲ母親カラ教エラレマス。ア、御免ナサイ。御母様ノ事、思イ出サセテ...」
「ううん、子供の時に母を亡くしたのは、アリサも同じだもの。でも母親かぁ..いい響きだよね...」
その時亜里沙の、正確にはアリサの心にメッセージが届いた。
「姉貴!生きてたんだ!」
2人の心を歓喜が満たし、亜里沙のペンダントは眩い輝きを放った。
「姉貴達、何処にいるの?」
「ソレハ判リマセン。私達ノ思念波ハ感情ヲ伝エルダケデ、思考ハ送ル事ガデキナイノ...」
「そっか、でもいいや。生きてるって判っただけでも、嬉しいもん」
ホッとして肩の力を抜いた亜里沙の瞳には、うっすらと涙が滲んでいた...。
作戦室に入ってきたサクマを見て、カタギリが声を掛けた。
「ご苦労、1ヶ月ぶりだな。例の計画の進捗はどうだ?」
「順調です。あと3ヶ月で全ての宇宙ステーションに、例の装置が付けられます。ははぁ、これが例のマグマ放送ですか?」
スクリーンに映し出されているアリサの痴態に、サクマは一瞬顔をしかめた。
「一般市民を狙った謀略放送は、昔からある手段だ。今更驚く程のものじゃない、内容はかなり刺激的だがな...」
「ですね。で、お決まりの要求は?」
「我々地球防衛軍の解散を要求している。とどのつまり奴等にも、地球の防衛力を圧倒するだけの戦力が無いのだ」
「しかし隊長...エリザ姉妹の支援無しには、我々も奴等を叩くことができませんが」
「そこで君に来てもらったのさ。すぐにキサラギ博士の研究室へ行ってくれ。マグマ星人を倒すまで、博士に協力するんだ...」
「マザー...お願いです、私を銀十字から破門して下さい。私は銀十字の教えを穢してしまいました」
俯くエリザに、マザーは優しく答えた。
「貴女ハ今デモ、銀十字ノ教エヲ忠実ニ守ッテイマス。例エソノ身ヲ穢サレタトシテモ、心マデ穢レテハイナイ」
「でも、私は悪魔の誘惑に負けました。肉体の悦びを受け入れてしまったのです...」
「ソレハ女ト生マレシ全テノ者ガ、背負ワネバナラナイ運命デス。我ガ娘エリザ、ソノ事デ自分ヲ責メテハナリマセン」
「私ニハ貴女ノ心ガ見エマス。貴女ハ妹ヲ守ル為ニ、自分ノ身体ヲ悪魔ノ前ニ投ゲ出シタノデスネ...」
「マザー...私..私は...」
それまで堪えていた感情が、エリザの心の内で爆発した。エリザはマザーにしがみ付くと、怯えた子供のように泣き出した。
「私ガ受ケ止メテアゲマス。サア、御泣キナサイ。我ガ娘ヨ...」
マザーは慈しみを込めて、泣いているエリザの髪を撫でた。エリザが顔を触れているマザーの子宮からは、穏やかで温かい波が感じ取れる。慈愛に満ちたその波は、嵐のように乱れているエリザの心を、ゆっくりと静めて行った。
「サア、涙ヲ拭イテ御立チナサイ、我ガ娘ヨ。地球ノ人々ガ、貴女ノ帰還ヲ待チ侘ビテイマス...」
エリザの心が静まったことを感じたマザーは、そっとエリザの手を取った。
「地球ヲ守ル貴女達姉妹ニト、宇宙警備隊カラ贈リ物ヲ預カッテ来マシタ。ジョアンヌ、渡シテオアゲナサイ」
ジョアンヌは両手の掌を上にむけながら、エリザに歩み寄った。
贈り物とは、宝石の付いた黄金の腕輪2組であった。宝石には青と赤の種類があった。ジョアンヌはそれぞれをエリザの両手首に嵌めた。
「これは...?」
「ウルトリア戦士ノ武器『ブレスレット』。纏ウ者ノ意志ヲ受ケ、様々ナ武器ニ変化スル。戦闘ニ置イテ、強力ナ助ケト成ルダロウ」
「そんな大切なものを、シャンドラー星人の私に?」
エリザは驚いた。それは戦士でも限られた一部の者だけが、使用を許される武器だったからだ。
「コレハ『シャンドラー星人』ノ思念波デモ操レルヨウニ改良シテアル。青イ方ハ貴女ノ思念波ニ、赤イ方ハ妹ノ『アリサ』用ニ調整済ダ」
「なんと御礼を申し上げたら良いのか...ありがとうございます...」
再びこぼれ落ちた涙を、エリザは手の指で拭った。
「私達ノ精神波ト異ナリ、貴女達ノ思念波デハ制御ガ難シイ。貴女ノ情緒ガ不安定ナ時ハ、コノ武器ハ使用デキナイ。忘レナイデ置クコトネ」
最後にジョアンヌは、エリザの耳元でささやいた。
「感謝ハ母上ニスルガ良イ。コノ『ブレスレット』ハ、母上御自身ガ、警備隊長ニ御願イシテ下サッタノダ...」
「マザーが......」
地球に向けて飛び立ったエリザを、マザーは特別な想いで見送っていた。
「アノ娘ヲ如何思イマス、ジョアンヌ?」
「心ノ清廉サナラバ、アノ娘ハ誰ニモ劣リマセン。デモ、戦士トシテハ...」
かつてエリザの訓練教官だったジョアンヌは、エリザの心の優しさを知っていた。そしてそれが、戦士として致命的な欠点であることも。
「アノ娘ニハ、更ナル試練ガ待ッテイル事デショウ。願ワクバ、アノ娘ニ神ノ御慈悲ト祝福ノ有ラン事ヲ...」
「大型の超音波発生装置を3基と指向装置ですか...まあそれなら、大して時間も資材も要らないでしょうが...」
そう言ったサクマの顔は懐疑的だった。
「必要な電力が膨大ですから固定式は仕方ないにしても、果たして敵がこちらの思惑通りの場所に来てくれますかね?」
「その点は、隊長と話しました。隊長は敵が、この基地を襲って来ると確信しているようですわ」
「まあ、その可能性は高いでしょう。しかし問題がもうひとつありますよ、博士」
「現時点では、マグマ星人に対する超音波の効果は不明です。事前検証無しの一発勝負ですから、これは賭けですよ」
「分かっていますわ、私の思い違いという事も有り得ます。それにエリザとアリサに対して、超音波が悪影響を及ぼす可能性も否定できません」
キサラギは小さく溜息をついた。
「私は勘だけで申し上げているのではありません。全ての生物は、その生存環境に適応する形で進化します。そしてその適応は、生物の身体的特徴となって現れるのです」
サクマは肩をすくめた。
「ここは博士を信じる他はないです。現時点で我々は、宇宙人に対する有効な武器を持っていませんからね。賭けてみましょう、博士に...」
キサラギは椅子から立ち上がると、まっすぐにサクマの顔を見つめた。
「ありがとう、サクマさん。今、私達ができることを、精一杯やりましょう。これまで私達を助けてくれた恩人のために...」
そう言ってキサラギは、小さく頷いた。
「御苦労ダッタナ、ネゲブ...先程母星ノ管財局カラ連絡ガアッタ。報酬ノ鉱石ガ全部届イタソウダ」
ネフェルは、そう言って妹の帰還を労った。
「コノ地球ヲ手ニ入レレバ、アノ程度ノ報酬ナンカ、塵ミタイナ物サ」
「気ガ早イヨ、ネルヴァ。マダコノ星ヲ支配シタ訳デハナイ。マダ『アリサ』モ残ッテイルシナ...」
その時、背後の亜空間通信装置が稼動し始めた。
「緊急回線ダナ...」
突然の通信に、ネフェルは胸騒ぎを覚えた。
「メフィラス司令、我々ハ契約ヲ履行シタ筈ダ。ソチラガ約束シタ怪獣3匹、マダ当方ニ届カナイガ、何故ダ?」
返ってきたメフィラスの声には、明らかに不機嫌な響きがあった。
「此方ノ星域デ、連邦ノ反攻ガ始マッテイル。御前達ガ捉エタ『エリザ』モ、奴等ニ奪還サレタ...」
「ソチラノ不始末ダロウ。我々ニハ関係ナイ...ソレヨリモ怪獣ガ届カナケレバ、我々ノ地球侵攻計画ニ支障ガ出ルノダ」
舌打ちしたネフェルは、冷たく言い放った。
「分カッテイル。増援ガ到着次第、至急怪獣ヲ搬送サセル。ダガ注意スル事ダ、『エリザ』ハ地球ニ舞イ戻ッタラシイゾ。デハ、改メテ連絡スル...」
映像の消えた通信装置を見つめる姉妹に、重い沈黙が流れた。
「今聞イタ様ニ、暫クハ増援ガ望メナイ。ト言ッテ、増援ガ来ルマデ待テバ、『エリザ』ガ戻ッテ来テシマウ」
ネフェルは言葉を切ると、妹達の顔を見つめた。
「デハ、一人ヅツ各個撃破スルンダネ?」
「ソウダ。今度ハ絶対ニ『アリサ』ヲ逃ガスナ。確実ニ殺レ」
「アノ雌豚、モウ一度現レルカナ?姉ガ戻ッテ来ルマデ、何処カニ隠レテイルカモヨ?」
「ソウハサセナイサ。次ハ地球防衛軍ノ極東基地ヲ襲ウ。『アリサ』ハ必ズ現レル筈ダ。予メ言ッテ置クガ、次ハ強襲ニナル。奴等モ警戒シテイルダロウ。油断ハ禁物ダゾ...」
Act14
白昼の強襲
「班長!第3航空標識塔の指向アンテナが、こちらの表示値とコンマ6ずれてるぞ。至急直させてくれ」
暑い日差しの下、サクマのヘルメットから一筋の汗が滴り落ちる。だが敵襲が近いという緊張感が、サクマを初め、防衛軍設営隊員達の士気を高めていた。
「第4及び第5監視所から報告。異常な地下振動が接近しつつあり、とのことです」
普段は冷静なサヤカも、その声に緊張が感じられた。
「来たか...。ミキ、第1級警戒警報を発令。全警備隊、火器使用自由!」
カタギリはヘッドセットのスイッチを入れた。
「こちらカタギリ。サクマ、作業を急がせろ。北から敵が接近中だ」
「今、最終調整しています。あと10分下さい。それとキサラギ博士に、同調装置のプログラム確認をお願いします!」
基地全体に鳴り響くサイレンの音に、負けじとサクマは怒鳴った。
激しい地鳴りがして地面が盛り上がると、地下から怪獣が姿を現した。そしてその両脇には、巨大な光の渦が2つ...。
亜里沙の胸でペンダントが、突然青く輝き出した。
「アリサ、お願い。私を行かせて!姉貴に代わって私がいかなきゃ」
心の声は、しごく穏やかだった。
「判ッテイマス。デモ今度ハ、貴女ト私、共ニ死ヌカモ知レマセン...」
「覚悟はしてる。それが選んだ道だもの...」
亜里沙は玄関へと駆け出した。二度とこの家に帰って来ないかも知れない、ドアを開けながら亜里沙は、ふとそう思った...。
怪獣の周囲には猛烈な勢いで、着弾による爆発が生じた。上空から攻撃機がひっきりなしに舞い降り、対地ロケット弾を発射して行く。
「クッ...流石ニ防備ガ固イ!」
顔に吹き付ける爆風を避けながら、ネルヴァが弱音を吐く。
「怪獣ヲ盾ニシナ!コノ防衛線ヲ突破スレバ、抵抗ハ弱クナル!」
乱射して来る戦車群を掃射しながら、ネゲブは妹を励ました。
「急いで!良い場面を逃すわよ!」
明菜は重いカメラを持った岸川を急かせた。背後では戦車が轟音を立てながら、明菜達を追い越して行く。
「いくらボーナスが出ても、死ぬのはゴメンだぜ!大体さっき自分で、この仕事やめると言ってたじゃないか...」
岸川は喘ぎながら毒付いた。
「ええ、やめるわよ。こんな腐った業界、もううんざり。でもね、このままじゃ止めれない。最後に納得する仕事をしたいの...」
「博士?」
たまらず、カタギリは制御卓に向かうキサラギに声を掛けた。
「まもなく敵が外郭防衛線を突破します...」
「判っています、慌てないで。あと5分程です...」
キサラギは冷静に答えながら、プログラムを修正して行った。
「ヤッタ、突破シタ!」
勢い良く防壁内に突入したネルヴァは、思わず歓声を上げた。だがその瞬間、眩い光の球がグドンの胴体に命中し、怪獣の体は轟音と共に四散した。
「御前カ..ドウヤラ、死ニ来タヨウダナ...」
アリサの姿に、ネゲブは奥歯を噛み締めた。
「コノ雌豚!地球人ノ目ノ前デ、八ツ裂キニシテヤル!」
ネルヴァは怒りの言葉をアリサにぶつけた。
ネゲブはアリサの胸で、黄色く光るクリスタルを見つめた。
「奴ハ2発目ノ『フラッシュ』ハ打テナイ。胸ノクリスタルヲ見ロ、エネルギーガ既ニ半減シテイル...」
「コノ生意気ナ雌豚、ドウ始末シヨウカネェ...」
ネルヴァは舌なめずりをしながら、じりじりとアリサに接近した。
最初の一撃はネゲブが放った。アリサは腕でブロックしながら、その拳を上に跳ね上げた。
「エイッ!」
アリサは腰を捻って、パンチを相手の顔に叩き込む。
「グッ!」
カウンターをまともに顔面に受けたネゲブは、よろけながら後に倒れこんだ。
続いてアリサは、側面から突っ込んで来たネルヴァに蹴りを見舞った。
「ガハッ!」
軽量のネルヴァは、勢い良く後方に吹き飛んだ。
外郭陣地での損害を確認していたミズキは、撃破された戦車の陰に2つの人影を認めた。小走りに近付くと、それは先程のTVクルーであった。
「さっきのTVの人達じゃないの!早く後方に避難して。此処にいたら死ぬわよ!」
「いいえ、絶対逃げないわ!」
明菜は真顔で叫んでいた。
「私達の戦いは、事実の報道よ。デスクにへばりつきながら捏造するなんて、私は絶対しない!」
その時アリサの背後で空電音が響いた。それは以前、アリサが敗北した際、耳にした不吉な音であった。
「くっ...」
アリサが振り向くと、丁度ネフェルが姿を現した所であった。
「御前達、ダラシガ無イヨ!コンナ小娘一人ニ、醜態ヲ曝シテ。『黒蜘蛛姉妹』ノ名折レジャナイカ...」
怒りを帯びた口調で、ネフェルは妹達を叱咤した。
「サッサト立チナ。一挙ニ片ヲ付ケルヨ!」
「3対1か...まずいな。かと言って砲撃を再開すれば、アリサに命中しちまう...」
ジープを止めたサクマは、インターコムのスイッチを入れた。
「こちらサクマ。3人目の敵が現れました。超音波装置の調整はまだですか?」
「カタギリだ...あと3分だ。開始指示はサクマ、御前が直接出せ」
キサラギが出したサインを見て、カタギリが答えた。
「他の者は、それまで何としても時間を稼げ!」
Act15
誘惑との戦い
「コレデモ喰ラエッ!」
ネルヴァは廻蹴りでアリサの頭部を狙ったが、アリサは両腕を畳んでこれを防いだ。
「ウヌッ」
これを見たネゲブは、アリサの背後から突進する。
背後を振り返る暇は無かったが、アリサは気配で攻撃を感じ取り、間一髪でネゲブのパンチをかわした。
だがさすがのアリサも、3発目はかわし切れなかった。至近距離から突き出されたネフェルの拳が、鋭くアリサの頬をえぐった。
「ぐっ!」
その衝撃にアリサの身体は、大きく後ろに仰け反った。
「あ!」
大きくバランスを崩したアリサの身体を、背後からネルヴァが羽交い絞めにした。
「ネゲブ、遊ンデヤリナ...」
「了解ダ、姉貴」
ネゲブは大きく頷くと、必死にもがいているアリサに歩み寄った。
「サテ..ドウシテヤルカ...」
ネゲブは軽く手首を廻すと、アリサの前で片膝を突いた。
「地球人共ニモ、楽シンデ貰オウカ」
そう言い放つと、ネゲブは鋭く拳を突き出した。ズシッという音と共に、拳がアリサの下腹部にめり込んだ。
「あっ!」
明菜は思わず声を上げた。昨日散々見せつけられた忌まわしい記憶が、明菜の脳裏に鮮明に蘇った。
「いけない、またやられてしまう...」
ミズキも顔を歪めて、奥歯を噛み締めた。
左、右と続けてネゲブの拳がアリサの子宮を突いた。
「ぐふっ!」
たまらず天を仰いだアリサの口から、真っ赤な鮮血がほとばしった。
「みんな撃って..撃って頂戴...」
全身に走る激痛に喘ぎながら、アリサは懇願した。
「地球人ハ優シイ生物ダナ、アリサ?御前ニ当テルノハ、忍ビナイトサ」
ネルヴァはアリサの乳房を弄びながら、アリサの耳元で囁いた。
「ダガ今回ハ直グニ殺シテヤルヨ、時間ガ惜シイカラネ...」
そう言ってネゲブはおもむろに立ち上がった。
低い空電音がして、ネゲブの放電剣が実体化した。
「一撃デハ殺サナイ...初メニ、両方ノ乳房ヲ切リ取ッテヤル」
残忍な本性をむき出しにしたネゲブは、チラリと舌を出して唇をなめた。
「こちらサクマ、アリサが危険です!装置の調整はまだですか?」
レーザー銃を握り締めたサクマは、インターコムに怒鳴った。
「お願いです。砲撃してください!このままではアリサが殺されます!」
「ダメだ。砲撃を開始すれば、音波装置にも影響が出る」
カタギリは厳しい顔付きで頭を左右に振った。
「あと1分だ、どんな手段ででも時間を稼げ!」
「止めなさい!」
突然の声に、ネゲブは驚いた。見ればエリザが空中から舞い降りて来るところだった。
「シブトイ奴ダ...」
ネフェルを舌打ちすると、右手の放電鉤を実体化させた。
「エリザよ!エリザが来てくれたわ!」
明菜は嬉しさのあまり、小躍りして叫んだ。
「生きていたのね...」
肩で大きく息をしたミズキは、一瞬だけ表情を和らげた。
「ネゲブ、先ニ『エリザ』ヲ殺ルヨ!」
「了解、姉貴!」
ネフェルとネゲブは手にした武器を構えると、エリザ目掛けて突進した。
「死ネ!」
ネフェルの鋭い手鉤が、風切音を立ててエリザに襲い掛かる。エリザは咄嗟に身体を捻り、これをかわした。
「エイッ!」
前のめりになったネフェルの顔を、エリザのストレートが打ち抜いた。
「アウッ!」
思わず横を向いたネフェルは、後方に尻餅を付いて転がった。
「コノ雌豚ガ!」
横合いから突っ込んで来たネゲブを、エリザのキックが迎え撃った。
「グハッ!」
猛烈なカウンターに、ネゲブの身体が弾け飛ぶ。
「チッ...」
舌打ちしたネルヴァは左手を伸ばすと、アリサの股間を弄った。指先に陰唇の裂け目を感じ取ったネルヴァは、中指を素早くその割れ目に潜り込ませる。
「あっ..」
突然の刺激に、アリサは反射的に悦びの喘ぎを漏らす。それを聞いたネルヴァは、中指を回転させながらアリサの陰唇の縁を刺激した。
「うっ..あっ...ああ...」
アリサの脳はヴァギナへの刺激を、快楽の悦びとして受け取った。脳から指令を受けたアリサの子宮は、即座にフェロモン液の生成を始める...。
アリサの喘ぎ声が、高らかに基地の空に響いた。その子宮の歓声に呼応して、エリザの子宮が痙攣した。
「アリサ!」
振り返るとアリサは、天を仰いで喘いでいる。エリザの心は瞬時に凍りついた。
動揺したエリザは数秒の間、アリサに気を取られていた。だがネフェルはこの隙を見逃さなかった。素早く起き上がったネフェルはエリザの背後に廻ると、その股間に左手を刺し入れた。
「あ!」
呆気に取られたエリザの動きが止まった瞬間、ネフェルの指が素早くエリザの陰唇に侵入した。
「ああっ...」
激しく陰口を掻き乱されたエリザは、思わず股間を押さえた。しかしネフェルは右手の鉤をエリザの首に引っ掛け、エリザの身動きを封じてしまった。
「あう...はうっ...」
天を仰いだエリザの口から、悦びの喘ぎが漏れる。その左手はネフェルの手を抑えてはいたが、膣を弄るその手を引き剥がそうとはしない。それどころか、更なる悦びを求めるかのように、自分の指でネフェルの指をより深く押し込んだ...。
天を仰いで悶える姉妹に、たまらずサクマはインターコムに怒鳴った。
「エリザも掴まりました!博士、完了次第すぐに発射して下さい!」
Act16
運命を超えて
ネフェルは中指に加えて人差し指も陰唇に潜らせ、2本の指で激しくエリザの陰口を掻き回した。
「あうっ..あっ...ああ...」
エリザの喘ぎ声が一段と高くなり、周囲の山々に木霊した。
「ネゲブ!コノ淫ラナ女ノ目前デ、妹ヲ切リ刻ンデオヤリ」
ネゲブは頷くと、ゆっくりとアリサの方に歩き出した。
「悦ビニ浸リナガラ、妹ノ死ヌ様ヲ見ルガ良イ...」
「あっ..うっ..ああっ...」
喘ぎ声こそエリザより小さいものの、アリサも陰口を弄られる度に細かく身体を震わせた。
「フン、コッチモ肉欲ノ虜ダネ...姉妹揃ッテ淫乱ナ雌豚カ...」
放電剣を構えたネゲブは、悦びに満ちたアリサの表情に苦笑した。
「折角女ニナッタノニ、男ヲ知ラナイデ死ヌノハ哀レダネ」
これで最後とばかりにネルヴァは、アリサの陰口を指の爪で引っ掻いた。
「ああっ...」
強烈な電流のような刺激が子宮を貫き、アリサの口から感謝の喘ぎが漏れた...。
高まる興奮に薄れかけたエリザの視野に、武器を構えてアリサに近付くネゲブの姿が映った。
「ア..リサ...逃げ...て」
必死に言葉を絞り出そうとするエリザを、ネフェルは鼻で笑った。
「御前ノ妹モ、天国ニ登ッテイル所サ。姉妹一緒ニ天国デ再開スルンダナ...」
「天国カラ地獄トハ、コノ事ダナ」
そう言ってネゲブは剣を構えた。
「何処カラ切リ取ッテヤルカ...ネルヴァ、御前ノ御勧メハ?」
「左ノ乳房ガ良イネ。左右ノ乳房ガ終ワッタラ、最後ニ子宮ヲ抉リ出シテヨ。ソレデコノ雌豚ハ、唯ノ豚ニナル」
アリサの乳房を弄びながら、ネルヴァは嬉しそうに答えた。
「だめっ!」
アリサのに向けられた剣を見て、明菜は思わず顔を覆った。
「くっ、これまでか...」
いつもは気丈なミズキも、思わず顔を横に向けた。
「完了しました。50KHzから10GHzの範囲でスペクトラル発信が可能です」
静まりかえった作戦室に、突然キサラギの声が響いた。
「直ぐに発信を、出力最大で!」
身を乗り出したカタギリは、思い切り椅子の背もたれを掴んだ。
甘美な恍惚の世界を彷徨っていたアリサの意識に、突如として不快な音がなだれ込んだ。
「こ..これは?...」
軽い眩暈を覚えたアリサは、思わず自分の頭を押さえた。その時アリサは、これまで自分を拘束していた両手が存在しなくなっている事に気付いた。
「アゥ..アア...」
見れば膝を突いたネゲブが、同じく頭を抱えて呻いている。だがその表情は、地獄の苦悶に激しく歪んでいた。
いきなり襲ってきた激しい頭痛に、エリザは現実の世界へと強引に引き戻された。
「アアッ..アウッ...」
エリザの背後では、ネフェルが頭を抱えて悶えてい
「ク..クソッ...コンナ物ニ..負ケラレルカ...」
ネゲブは頭を左右に激しく振ると、何とか片膝で立ち上がった。
「黒蜘蛛..姉妹ヲ...舐メルナ!」
エネルギーは十分残っていたが、エリザには咄嗟に使用できる武器が無かった。スライサーやエリザ・フラッシュでは、放つまでに時間が掛かり過ぎる。
「マザー、貴女を信じます!」
エリザは左腕のブレスレットに手を当てた。思念波を受けたブレスレットは、瞬時に青い輝きを放った。
それは妬みと憎しみを根源とした、ネゲブの執念であった。震える脚に力を込め、ネゲブは渾身の力でアリサの胸目掛けて剣を突き出した。
「アウッ!」
だが剣はアリサではなく、背後で立ち上がりかけたネルヴァの胸板を貫いた。アリサはエネルギー不足で足がもつれ、倒れたことが逆に幸いした。
「ネルヴァ!オオ..何テ事ヲ...」
妹を刺してしまった衝撃で、ネゲブはひどく狼狽した。見ればネルヴァの胸からは、青い血が泡となって噴き出している。
「姉..貴...」
ネルヴァの断末魔の言葉は、姉を呼ぶ言葉であった。持ち上げかけた左手が地面に落ちると、ネルヴァの頭がガックリと後方に落ちた。
エリザは手にした武器を高く振り上げた。ブレスレットが変形したその武器は、柔らかい輝きを放っている。それはエリザの故郷、シャンドラー星の古代武器に似ていた。
「エイッ!」
掛け声と共にエリザは、武器をネゲブ目掛けて力一杯投じた。
ドスッという鈍い音に、アリサはハッとして頭上を見上げた。
「ソンナ...馬鹿..ナ...」
ネゲブは両膝を突くと、そのまま地面に崩れ落ちた。
「よしっ!」
サクマは思わず拳を握り締めた。
「こちらサクマ、宇宙人2人を倒しました!残る1人は完全に戦意喪失したようです」
「やった!やったわ!」
明菜は嬉しさの余り、小躍りして喜んだ。
「ふぅ...いつものことだけど、心臓に悪いわ...」
頭を小さく振りながら、ミズキはそっと微笑んだ。
「ネルヴァ...ネゲブ...」
よろよろとした足取りで、ネフェルは倒れた妹達の方へ歩み寄った。先程までの禍々しい邪気は、その表情から全て消え失せていた。
妹達の亡骸の前に、ネフェルは崩れるように両膝を突いた。
「何故私ダケヲ残シ、御前達ガ逝ク...神ハ何故、ソレ程マデニ我々ヲ憎ムノダ...」
ネフェルは声を震わせながら、身をよじった。
ネゲブの亡骸に歩み寄ったエリザは、そっとブレスレットを腕に戻した。
「エリザ...私ヲ殺セ。ソレガ勝者ノ権利ダ」
「できないわ。無抵抗の者を殺すことは、私にはできない」
エリザは小さく首を横に振った。
「デハ、アリサ。御前ニ頼モウ...」
「やだよ、絶対するもんか!」
「私ノ生キル希望ハ、全テ無クナッタ」
ネフェルは交互に、妹達の死に顔を見やった。
「地獄ノ様ナ所デ、虐ゲラレテ育ッタ我々姉妹ガ、他者ノ様ニ豊カニ暮ラス夢モ...」
「恨みや妬みは、自分の心を縛る鎖だわ。自らその鎖を外さなければ、いつしかその重みで身動きできなくなる」
「私ニ説教スルノカ...ダガナ、コレハ我々一族ニ科セラレタ、神ノ呪イダ。ドンナニ足掻コウト、運命カラ逃レル事ハデキヌ」
「私の星では、運命の道は神が導き、自分の足で歩いて行くもの。立ち止まっている者に、神は微笑んではくれないわ」
「立チ止マッテイル者、カ...」
ネフェルは黙って立ち上がると、妹達の亡骸を光の粒子に分解した。
「私ハ故郷ニ戻ル。妹達ヲ弔ウ為ニ...」
そう言ってネフェルは、エリザを指差した。
「ダガ私ヲ逃ガセバ、何時ノ日カ、私ハ復讐シニ戻ッテ来ル。ソノ時ハ必ズ、御前ヲ殺スダロウ。ソレデ良イノカ?」
エリザは小さく頷いた。
「それが神の御意志で、私の運命だと言うのなら、私は受け入れるでしょう...」
「ソウカ...ナラバ、コレ以上ハ言ウマイ。再ビ会ウソノ時マデ、絶対ニ死ヌナヨ...」
ネフェルの姿は光の渦へと変わり、やがて掻き消すように消えた...。
Act17
そして明日へ
「...こうして地球防衛軍並びにエリザ姉妹の奮闘によって、マグマ星人の地球侵略は撃退されたのです」
明菜はここで一呼吸置くと、最後の締めに入った。
「しかし私達は、自分自身に問い直さねばなりません。今回の事件で私達は、防衛軍とエリザ姉妹を信頼していたか?そして彼等の献身的な犠牲に値するだけの価値が、我々にあったのかどうかを...」
「どうでした?」
最後の仕事を終えた明菜は、笑顔でミズキに問い掛けた。
「論評できる立場じゃないけど、最後のセリフは良かったと思うわ...」
ミズキはにっこりと微笑んだ。
「でも、TVレポーターを辞めるって本当?」
「本当です。おかげさまで初めて、自分の納得の行く仕事ができました。もう心残りはありません」
「今回は、本当にお世話になりました。とても感謝していたと、隊長さんに御伝え下さい...」
そう言って明菜は、ミズキとサクマに深々とお辞儀をした。
「必ず伝えるわ。新しい仕事でも頑張ってね、明菜さん」
微笑んだミズキは、小さく頷いた。
眩しい日差しの下、絵里と亜里沙はジープの後部座席に座っていた。
「でもさ、何で姉貴はネフェルを逃がしてやったの?あんなひどい目に会わされたのに...」
亜里沙は日差しに目を細めながら、大きく伸びをした。
「それはあなたも同じでしょ。亜里沙はどうしてなの?」
絵里は微笑みながら、妹の横顔を見た。
「極悪な奴だったけど、死んだ妹達の傍で嘆く姿が、何だか姉貴と被っちゃってさ」
「優しいのね、亜里沙は...」
「そんなこと無いよ...だけどネフェルの奴、今度のことで改心するかな」
「人が変わるのは難しいことよ。でも、私は信じてるわ...」
「あ、ミズキさんとサクマさんだ!」
亜里沙は立ち上がって二人に手を振った。
「早くビュッフェで冷たい物食べようよ!」
ミズキも手を挙げながら詫びた。
「暑い中、待たせてごめんなさい。お詫びにサクマさんが奢ってくれるって」
「マジ?それじゃあ、チョコレートパフェにフルーツパフェ、あとクリームソーダ!」
「そんなに食べるのかい?」
思わずエンジンキーを廻しかけたサクマの手が止まった。
「フルーツパフェとソーダには、私も乗るわ」
ミズキも横で2本の指を立てた。
「で..でもさ、物には限度って...」
「男ならグダグダ言わないの。さ、日焼けしないうちに早く行きましょ!」
暑さの残る晩夏の空の下、ジープは笑い声と共に動き出した...。
制作後記

この「最弱姉妹シリーズ」も、いよいよ7話目突入です。全13話を目標にスタートしたので、マラソンに例えれば丁度折り返し点を通過したことになります(パチパチ←勝手に盛り上げ)正直あとどれだけ続けられるか判りませんが、この見習いの体力・気力が続く限りガンバロウと思います。さて、今年の夏は暑かったですね。夏と言えば思い起こされるのは、プールサイドに群れるビキニでしょう(こういう妄想は男だけかな?)そこで今回は「女だらけの水泳大会」、もとい「女だらけの責め大会」をテーマに作成してみました(爆)以前も書きましたが「最弱姉妹」シリーズは、進行の過程で姉妹の弱点を順次明らかにして行く、という展開を考えておりました。当然姉妹は、自分達の弱点を克服して行かなければなりませんから、そこに見習的「萌え」要素が表現されていく訳です。この見習的「萌え」要素とは、スポ根・エロ・ファンタジーの混合体でして、ストーリーの主題によってこの比率が変化します。今回は季節が夏と言うこともあり、エロ要素のツユ濁特盛り(笑)数多い姉妹の弱点の中でも、おそらく最大の弱点となるであろう所を描いております。まあ主人公としてヒロインを選択した以上、ある意味これは当然の帰結と言えるでしょうか(笑)

前置きはこれぐらいにして、(やっと)本題に入ります。今回はなんと最初のプロット作成の時点からつまずきました。と言うのも、今回の話が「まずフィギュアありき」でスタートしたからです。マグマ星人3姉妹を設定し、姉妹対決を目論んだまでは良いのですが、そこから先がプツリと思考停止。だいたいストーリー物にもかかわらず、「ブツ(フィギュア)ありき」では、良いプロット、面白いストーリーに繋がらないのも当然ですよね。そこでストーリーのヒドさを誤魔化す為、各所にグロい要素(笑)を織り込んであります。まあ、本来エロとグロはセットみたいなものですからね(←ホントかよ。笑)砂糖の甘みを引き出す為に意図的に塩を混ぜる、そんな風に(強引に)捉えて頂ければと思います。この所ヒロインの責め手がすっかりマンネリ化し、製作意欲も減退気味でした。今回「エロ責め」という手法を解禁したことで、錆付いてしまった鬼畜魂をもう一度研磨していきたい思います(笑)

さて使用フィギュアの方ですが、猫耳マグマ姉妹はAiko3で、頭部マスク及びテクスチャは以前どこぞで公開されていたものです(どこで公開されていたか記憶が無いのです、すみません)マグマ男はチンピラのイメージしか沸きませんが、今回はフィギュアがA3ということもあって、腰廻りなど中々そそるものがありますね(V3やV4は外人体型なので、同じテクスチャを使ったとしても、萌えを感じることはできないかも)次に怪獣の方ですが、両手のムチが個人的に嬉しいグドンです。「僕の好きな怪獣ランキング」ではいつも上位に食い込む実力派ですね。体型の美しさ、顔のまがまがしさ、男の夢であるムチ攻撃(笑)と怪獣界のNo.1イケメンと言っても過言ではないでしょう(←誰が言うとるんだ?)しかしグドンと言えば何と言っても帰マンの時のイメージが強く、本音言えばツインテール(オサゲではなくて、怪獣ね)も欲しかった所です(前後からのダブル・ムチ攻撃、やりたかったなあ)フィギュアはお馴染みウルフェ製でして、相変わらずのグッドな出来。いつも思うのですが、この方は怪獣の雰囲気を掴むのが上手です、ホント感心しますね。これに両腕のムチをCANDYさん(だったと思う)がERC化したものです。このERCという機能、弧を描いたり巻きついたりの表現を1つのパラメータで調整できる優れモノで、ムチや触手系には必須といっても良いでしょう。ただこのフィギュアの場合、ムチを構成する元々のパーツ数が不足気味で、とぐろ巻きをさせるにはチョット苦しいですかね(作品では強引に首絞めをやってますが、胴体ぐらいの太さなら問題ないかも)

今回は2人の客演キャラが登場していますので、簡単に触れておきます。ウル母は有名ですから説明は不要として、もう一人の女戦士は見習が勝手にでっちあげたキャラです(笑)本来ならユリアンか、ベスを出したかった所なのですが、実はこの見習が、あの大仏顔にどうにも耐えられず、今回は見送りとさせて頂きました(笑)客演キャラのフィギュアですが、ウル母はウルフェ製のものを使っています。何人かの方がウル母フィギュアを製作されていますが、ウルフェ製が一番日本人女性の体型に近かったので、見習の趣味で選択させて頂きました(笑)女戦士の方は、CANDYさん製作のUltraWomanシリーズからチョイスしました。CANDYさんは、日本Poserヒロピン界の黎明期から活躍されている方で、この見習もよくCANDYさんのフィギュアを使わせて貰ったものです。フィギュアの出来は、どちらもPoser4時代のフィギュアをベースにしている事を考えれば、非常に良い造形と言えるでしょう。テクスチャを3000ドット四方程度の大きいものに作り変えれば、かなりのアップにも耐えられる高水準です(作品中は添付されている標準テクスチャを使用)どちらもデータサイズが小さい為、4GBまでしかメモリを搭載できない32ビット環境でも、ストレスなく使えるのは大きな魅力です。その反面ポリゴン数が少ないので、極端なポーズが苦手。あまり大胆な開脚ポーズは避けてくださいね(笑)

ストーリーとしてはダメダメの今回ですが、後半に向けて2つの新要素を取り入れてみました。
1つ目は姉妹の新兵器「ブレスレット」(CANDYさんの作品です)いやあ、遂に出ました禁断の武器(笑)帰マンよりも強いと評判の武器ですから、本来なら渡したくは無かった(←鬼畜)ですがシリーズ後半には強敵が目白押しなので、これ以上姉妹が負けても助ける手段が無いのです(でもやっぱり負けるけど)怪獣やっつけ隊のちゃちな武器も、これ以上はアイデアが出てきませんしね(意地でもネオ・マキシマ砲は渡さない。笑)でもまあ、作者自身が鬼畜なので、ブレスレットを無敵のチート武器にはしないつもりですが。2つ目は客演キャラに見られるように、作品の世界観を少し広げたことです。舞台が地球周辺だけでは連続ストーリー物としても苦しいですし、侵略者側も少し描いておけば、アイデアも広がっていくのではないかと勝手に期待しています(苦笑)

最後に、今回シリーズ目標の半分に到達したということで、今後の見通しについて少し書いておきます。これまでは見習の健康問題が一番のネックでしたが、最近は製作ペースが遅すぎて、画像作成環境が時代遅れになりつつある事が問題になっています(購入してまだ1年経ってないのに。泣)現在見習はPoserPRO+Vue8という環境で紙芝居を作っていますが、これのアップデート絡みで困った事態が起こりました。具体的に言うとVue8を最新版にアップデートすると、特定フィギュアのPoserProからの取り込み時にバグが出てしまうのです。詳しく調べた訳ではありませんが、どうやらPoserProのDLLに問題がありそうです(以前の32ビット版でも同様のバグがありました)PoserPro2010というのが最新版らしいので、これに変えれば問題が解消されるかも知れませんが、必ず直るという保障は無いです(バグを次の別製品で改修するという、悪辣な手口ですな)問題が発生しているフィギュアは、ヒロイン姉妹と女子隊員に履かせているサードパーティ製のV3用ブーツ(デンダロに売っていたイタリアン・ブーツ)なので、今更他に代替品がありません。もしPoserPRO2010に変更しても現象が変わらない場合、見習のPC環境では今後Vue8をアップデートできないことになってしまいます(現時点でさえ、3世代も古い状態です。泣)正直、これは辛いです。バグが有ると知りつつこれから長い間使い続けるのは、精神的にもかなり辛いものがありますしかしよく考えてみると、サードパーティ製の(しかも古い)フィギュアを使い続けていること自体、問題なのかも知れません。特にPoserは発売当初から既に長い時間が経過しており、特定バージョン環境下で作成されたサードパーティ製フィギュアが、新版のプログラムで確実に動作する保障などありません。今回の7話まで到達するのに2年以上費やしている訳ですから、全13話終わるまでには単純計算でもう2年必要になります。そう考えると、途中でV3フィギュア自体が(製作環境的に)使用できなくなる可能性も否定し切れませんしね。う〜ん、困りました(泣)もし製作環境的に改善されなかった場合、本「Supreme Sisters」を10話程度で完結させるかも知れません(途中でメインフィギュア変更するぐらいなら、いっそのこと新シリーズにした方が都合が良いので)今後どうなるかは分かりませんが、方針が決まりましたら改めて報告したいと思います。

♪女の子なら、明るく強く〜(暑さで頭が逝ってる見習でした)

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